25%の鉄鋼・アルミニウム関税を例外なくすべての国に発動
ホワイトハウスは米国時間11日午後に、トランプ大統領が先に大統領令に署名した鉄鋼・アルミニウム輸入に対する25%の関税を巡り、例外や適用除外なく、カナダを含むすべての貿易相手国・地域について予定通り12日午前0時(日本時間12日午後1時)に発動すると発表し、実際に発動された。
カナダのオンタリオ州は、米国による25%の関税への報復措置として、米国向けの電力価格に25%上乗せすることを計画した。これへの報復として、トランプ政権は、カナダ産鉄鋼・アルミに対する関税率を25%から50%に引き上げるとの方針を示していた。
しかし、直前になって、カナダ・オンタリオ州のフォード首相は電力価格上乗せ計画の停止を表明し、これを受けてトランプ政権はカナダ産鉄鋼・アルミに対する関税率を50%に引き上げることをやめて、予定通りに25%とすることを決めた。
大きな脅しをかけて相手国から譲歩を引き出した後に見直すという、トランプ大統領の常とう手段である「ディール(取引)」がなされたのである。
一方、トランプ大統領は11日に、カナダが米国産乳製品などへの関税を引き下げなければ、4月2日にカナダの自動車部品に対する関税を「大幅に引き上げる」とも表明している。
米商務省によると、2024年の米国の鉄鋼の輸入額を国別にみると、カナダ(全体の22.6%)、ブラジル(15.5%)、EU(14.8%)、メキシコ(12.1%)、韓国(9.7%)、ベトナム(4.7%)、日本(4.0%)となった。
一方、2024年の米国のアルミニウムの輸入額を国別にみると、カナダ(58.0%)、UAE(6.3%)、EU(14.8%)である。いずれもカナダが一位であり、関税引き上げの影響を強く受ける。
カナダのオンタリオ州は、米国による25%の関税への報復措置として、米国向けの電力価格に25%上乗せすることを計画した。これへの報復として、トランプ政権は、カナダ産鉄鋼・アルミに対する関税率を25%から50%に引き上げるとの方針を示していた。
しかし、直前になって、カナダ・オンタリオ州のフォード首相は電力価格上乗せ計画の停止を表明し、これを受けてトランプ政権はカナダ産鉄鋼・アルミに対する関税率を50%に引き上げることをやめて、予定通りに25%とすることを決めた。
大きな脅しをかけて相手国から譲歩を引き出した後に見直すという、トランプ大統領の常とう手段である「ディール(取引)」がなされたのである。
一方、トランプ大統領は11日に、カナダが米国産乳製品などへの関税を引き下げなければ、4月2日にカナダの自動車部品に対する関税を「大幅に引き上げる」とも表明している。
米商務省によると、2024年の米国の鉄鋼の輸入額を国別にみると、カナダ(全体の22.6%)、ブラジル(15.5%)、EU(14.8%)、メキシコ(12.1%)、韓国(9.7%)、ベトナム(4.7%)、日本(4.0%)となった。
一方、2024年の米国のアルミニウムの輸入額を国別にみると、カナダ(58.0%)、UAE(6.3%)、EU(14.8%)である。いずれもカナダが一位であり、関税引き上げの影響を強く受ける。
鉄鋼に25%の関税で日本のGDP押し下げ効果は0.01%程度
武藤経産相が訪米して、ラトニック商務長官、米通商代表部(USTR)のグリア代表らに日本を関税の適用除外とするように働きかけたが、鉄鋼、アルミニウムについては、適用除外は実現しなかった(コラム「3月12日の発動が迫るトランプ政権の鉄鋼・アルミ関税:武藤経産相は日本製品の関税適用除外を要請」、2025年3月12日)。
2024年の対米輸出額で、鉄鋼は3,027億円に対して、アルミニウムは約246億円と計算される。対米輸出全体のそれぞれ1.4%、0.12%である。対米自動車輸出に25%の関税が課される場合、それは日本のGDP(名目及び実質)を0.2%程度押し下げると見込まれるが、鉄鋼への25%の関税の場合には、日本のGDPの押し下げ効果は0.01%程度にとどまる(アルミニウムを含めても同水準)と試算される。
2024年の対米輸出額で、鉄鋼は3,027億円に対して、アルミニウムは約246億円と計算される。対米輸出全体のそれぞれ1.4%、0.12%である。対米自動車輸出に25%の関税が課される場合、それは日本のGDP(名目及び実質)を0.2%程度押し下げると見込まれるが、鉄鋼への25%の関税の場合には、日本のGDPの押し下げ効果は0.01%程度にとどまる(アルミニウムを含めても同水準)と試算される。
次の注目は4月2日発動の相互関税、自動車関税
次の注目は、4月2日に発動される、相互関税、25%の自動車関税である。相互関税に関しては、気になる動きもある。ホワイトハウスの報道が11日に、「日本は輸入米に700%の関税を課している」と批判したことだ。
コメ(精米)を輸入する際に1キロ当たり341円としている関税について、農林水産省が関税率換算で778%としていた見解を、2013年に「280%」に修正した。ホワイトハウスはこの数字の算定根拠を示していないが、農林水産省の古い推計値に基づいている可能性もある。
相互関税では、コメを含む農産物への高い関税、トランプ大統領が円安誘導と批判した為替政策、自動車の安全基準、環境基準、軽自動車への補助金などの非関税障壁を理由に、自動車を含む日本からの輸入品に相互関税が課せられる可能性がある。
今回、鉄鋼、アルミニウムについて、日本が適用除外とならなかったことを受けて、相互課税、25%の自動車関税についても日本が対象となる可能性は高まってきている。
(参考資料)
「トランプ政権 鉄鋼・アルミ 25%関税 きょう発動へ 日本製にも」、2025年3月12日、NHK
コメ(精米)を輸入する際に1キロ当たり341円としている関税について、農林水産省が関税率換算で778%としていた見解を、2013年に「280%」に修正した。ホワイトハウスはこの数字の算定根拠を示していないが、農林水産省の古い推計値に基づいている可能性もある。
相互関税では、コメを含む農産物への高い関税、トランプ大統領が円安誘導と批判した為替政策、自動車の安全基準、環境基準、軽自動車への補助金などの非関税障壁を理由に、自動車を含む日本からの輸入品に相互関税が課せられる可能性がある。
今回、鉄鋼、アルミニウムについて、日本が適用除外とならなかったことを受けて、相互課税、25%の自動車関税についても日本が対象となる可能性は高まってきている。
(参考資料)
「トランプ政権 鉄鋼・アルミ 25%関税 きょう発動へ 日本製にも」、2025年3月12日、NHK
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。