所得減税の恒久化法案を下院予算委員会が否決
トランプ米大統領は2025年末に期限を迎える大規模な所得減税の恒久化を目指しているが、それに関する議会審議は難航している。16日に下院予算委員会は、所得減税の恒久化を含む関連法案を、賛成16票、反対21票の反対多数で否決した。与党共和党から5票もの反対が出たのである。
財政規律派の共和党造反議員らは、低所得者向け医療支援「メディケイド」の適用厳格化などで歳出を抑えるよう求めた。関連法案には「メディケイド」の歳出削減なども含まれているが、財政規律派の共和党造反議員らはさらなる削減を求めている。
両院の税制合同委員会によると、関連法案がこのまま成立すれば、2034年度までに約3兆8,000億ドル(約553兆円)の税収減になる。
トランプ大統領は、選挙公約である所得減税の恒久化を財政規律派の共和党議員に受け入れさせるため、連邦予算の無駄の削減に加えて、関税による収入増加をその財源に充てる、と説明してきた。所得減税の恒久化策と関税策は、この点で連動しているのである。
財政規律派の共和党造反議員らは、低所得者向け医療支援「メディケイド」の適用厳格化などで歳出を抑えるよう求めた。関連法案には「メディケイド」の歳出削減なども含まれているが、財政規律派の共和党造反議員らはさらなる削減を求めている。
両院の税制合同委員会によると、関連法案がこのまま成立すれば、2034年度までに約3兆8,000億ドル(約553兆円)の税収減になる。
トランプ大統領は、選挙公約である所得減税の恒久化を財政規律派の共和党議員に受け入れさせるため、連邦予算の無駄の削減に加えて、関税による収入増加をその財源に充てる、と説明してきた。所得減税の恒久化策と関税策は、この点で連動しているのである。
2~3週間以内に90日間停止後の各国の相互関税率を一方的に通知
ところでトランプ大統領は同じ16日に、トランプ関税を巡り約150か国から関税協議の申し出があることを明らかにした。他方、ベッセント財務長官は、現在トランプ政権が重点的に交渉しているのは18か国だと話している。
トランプ大統領は4月2日に、すべての国に対する一律10%の関税と、貿易赤字の多い約60か国への上乗せ関税を組み合わせた「相互関税」を発表した。しかし、金融市場が動揺したことなどを理由に、上乗せ分の実施を90日間停止すると決め、その間に各国と関税率の見直しを協議する方針を示していた。
一時停止される相互関税の上乗せ部分は7月上旬に期限を迎えるが、それまでにすべての国と協議を行い、合意に達することは不可能だ。そこでトランプ大統領は、今後2~3週間以内に各国の関税率を示した書簡を一斉に送る方針を明らかにした。各国との合意が得られなくても、あるいは協議が実施されなくても、トランプ政権は一方的に相互関税の上乗せ部分を通告する方針だ。
トランプ大統領は4月2日に、すべての国に対する一律10%の関税と、貿易赤字の多い約60か国への上乗せ関税を組み合わせた「相互関税」を発表した。しかし、金融市場が動揺したことなどを理由に、上乗せ分の実施を90日間停止すると決め、その間に各国と関税率の見直しを協議する方針を示していた。
一時停止される相互関税の上乗せ部分は7月上旬に期限を迎えるが、それまでにすべての国と協議を行い、合意に達することは不可能だ。そこでトランプ大統領は、今後2~3週間以内に各国の関税率を示した書簡を一斉に送る方針を明らかにした。各国との合意が得られなくても、あるいは協議が実施されなくても、トランプ政権は一方的に相互関税の上乗せ部分を通告する方針だ。
トランプ政権は秋頃までに関税策の大幅縮小を決めるか
トランプ政権が一方的に通告する相互関税に対しては、各国から不満と批判が高まることが予想される。ただし、金融市場が再び動揺することを恐れて、そうした通告は見送られ、さらに7月上旬の相互関税上乗せ部分適用の期限も延長される可能性が残されているのではないか。
トランプ関税がもたらす経済や金融市場への悪影響、それを受けた国民からの批判を受けて、トランプ政権は関税をいずれ大幅に縮小すると予想する。しかし、それは、上記の経緯を踏まえると、所得減税の恒久化を含む関連法案が議会で可決された後になるのではないか。
トランプ政権は、7月4日までに所得減税の恒久化を含む関連法案の可決を目指している。しかし実際には可決の時期は後ずれする可能性がある。同法案の可決を一つのきっかけに、トランプ政権は秋頃までに関税策の大幅縮小を決めると予想しておきたい(コラム「トランプ関税は今秋までに本格的な見直しか:注目されるトランプ減税の恒久化」、2025年5月9日)。
(参考資料)
「米国:トランプ減税恒久化法案に「造反」 米下院」、2025年5月18日、毎日新聞
「トランプ減税、共和党に内紛=債務膨張懸念、国債格下げも火種―米」、2025年5月17日、時事通信ニュース
「トランプ関税、主要国以外は「交渉せず」 一方的に関税率通知へ」、2025年5月17日、
日本経済新聞電子版
「米国:新関税率書簡で通知 2~3週間内に トランプ氏」、2025年5月18日、毎日新聞
トランプ関税がもたらす経済や金融市場への悪影響、それを受けた国民からの批判を受けて、トランプ政権は関税をいずれ大幅に縮小すると予想する。しかし、それは、上記の経緯を踏まえると、所得減税の恒久化を含む関連法案が議会で可決された後になるのではないか。
トランプ政権は、7月4日までに所得減税の恒久化を含む関連法案の可決を目指している。しかし実際には可決の時期は後ずれする可能性がある。同法案の可決を一つのきっかけに、トランプ政権は秋頃までに関税策の大幅縮小を決めると予想しておきたい(コラム「トランプ関税は今秋までに本格的な見直しか:注目されるトランプ減税の恒久化」、2025年5月9日)。
(参考資料)
「米国:トランプ減税恒久化法案に「造反」 米下院」、2025年5月18日、毎日新聞
「トランプ減税、共和党に内紛=債務膨張懸念、国債格下げも火種―米」、2025年5月17日、時事通信ニュース
「トランプ関税、主要国以外は「交渉せず」 一方的に関税率通知へ」、2025年5月17日、
日本経済新聞電子版
「米国:新関税率書簡で通知 2~3週間内に トランプ氏」、2025年5月18日、毎日新聞
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。