7月7日発表分までの新相互関税率で世界のGDPは0.60%押し下げられる
トランプ政権は米国時間7月7日に、8月1日に発効する新たな相互関税率を14か国について発表した。トランプ政権は、4月に発表した相互関税の上乗せ分の一時停止措置の期限である7月9日までの3日間で、新たな相互関税率を発表する考えを示している。
しかし、米国時間7月8日については、今のところ新たな相互関税率は発表されていない。7月9日の期限ぎりぎりまで幾つかの国と協議を続けたうえで、同日に合意に至った新相互関税率、あるいは合意できなかった場合にはトランプ政権が一方的に決めた新相互関税率がそれぞれの国について示されることになるだろう。
7月7日に示された14か国の新相互関税率では、日本とマレーシアの2か国のみ、4月に示された当初の関税率24%が25%へと引き上げられた。その他12か国については、4月と同水準、あるいは引き下げられた。
7月7日に発表された14か国の新相互関税率を反映し、それ以外の国については4月に発表された当初の関税率が適用されるとして計算すると、米国の相互関税の平均関税率は、上乗せ分一時停止期間中の17.4%から22.0%に上昇する(表)。それは、4月に発表された当初の相互関税率の23.4%(その後の中国、ベトナムとの関税協議での合意は反映されていない)からわずかに低下する程度となる。
7月9日までの相互関税上乗せ分一時停止期間と8月1日以降の新相互関税率(7月7日発表分)の世界の実質GDPへの影響を比較すると、-0.48%から-0.60%にマイナス幅が拡大する。日本のGDPへの影響については、-0.61%から-0.77%にマイナス幅が拡大する。
しかし、米国時間7月8日については、今のところ新たな相互関税率は発表されていない。7月9日の期限ぎりぎりまで幾つかの国と協議を続けたうえで、同日に合意に至った新相互関税率、あるいは合意できなかった場合にはトランプ政権が一方的に決めた新相互関税率がそれぞれの国について示されることになるだろう。
7月7日に示された14か国の新相互関税率では、日本とマレーシアの2か国のみ、4月に示された当初の関税率24%が25%へと引き上げられた。その他12か国については、4月と同水準、あるいは引き下げられた。
7月7日に発表された14か国の新相互関税率を反映し、それ以外の国については4月に発表された当初の関税率が適用されるとして計算すると、米国の相互関税の平均関税率は、上乗せ分一時停止期間中の17.4%から22.0%に上昇する(表)。それは、4月に発表された当初の相互関税率の23.4%(その後の中国、ベトナムとの関税協議での合意は反映されていない)からわずかに低下する程度となる。
7月9日までの相互関税上乗せ分一時停止期間と8月1日以降の新相互関税率(7月7日発表分)の世界の実質GDPへの影響を比較すると、-0.48%から-0.60%にマイナス幅が拡大する。日本のGDPへの影響については、-0.61%から-0.77%にマイナス幅が拡大する。
図表 相互関税の経済効果試算


関税全体の日本のGDPへの影響は-0.85%、海外要因も加えると-0.99%
25%の新相互関税率が日本のGDPに与える影響は-0.63%であり、これに、自動車・自動車部品の25%、鉄鋼・アルミニウムの50%の分野別関税の影響を加えると-0.85%となる(コラム「トランプ米政権は日本に新たな相互関税25%を通知:追加関税全体で日本のGDPを0.85%押し下げ」、2025年7月8日)。
さらに、相互関税が他国に与える影響、いわゆる海外要因も反映した影響の-0.77%(表)に相互関税以外の関税の影響も加えると、日本のGDPへの影響は-0.99%とほぼ1%のマイナスに達する計算だ。
米国時間7月9日に発表されるとみられる幾つかの国の新相互関税率の中で、最大の注目点となるのは欧州連合(EU)である。米国との間のぎりぎりの協議で合意が得られれば、EUの新相互関税率は4月に発表された20%を下回る可能性がある。他方、協議が決裂すれば、より高い関税が課せられる可能性があるだろう。このEUの新相互関税率次第で、上記の世界経済、日本経済への影響も変わってくる。
さらに、相互関税が他国に与える影響、いわゆる海外要因も反映した影響の-0.77%(表)に相互関税以外の関税の影響も加えると、日本のGDPへの影響は-0.99%とほぼ1%のマイナスに達する計算だ。
米国時間7月9日に発表されるとみられる幾つかの国の新相互関税率の中で、最大の注目点となるのは欧州連合(EU)である。米国との間のぎりぎりの協議で合意が得られれば、EUの新相互関税率は4月に発表された20%を下回る可能性がある。他方、協議が決裂すれば、より高い関税が課せられる可能性があるだろう。このEUの新相互関税率次第で、上記の世界経済、日本経済への影響も変わってくる。
銅と医薬品にも追加関税
トランプ大統領は8日に、新相互関税が発効する8月1日の期限は延長しない考えを強調した。また、分野別関税として新たに銅や医薬品に追加関税を課す考えを示している。トランプ大統領は、「銅には50%の関税を賦課するつもりだ」とした。
また、医薬品メーカーに対して、新たな関税導入までに米国内に生産拠点を移転するための猶予期間を設ける意向も表明した。「およそ1年から1年半の猶予を与える」とし、「それ以降は、医薬品を国外から米国に持ち込む場合、200%といった極めて高水準の関税を課す」と述べた。
2024年の対米銅・銅製品の輸出額は41.2億円と、対米輸出額全体の0.02%と小さい。仮に50%の関税が課せられた場合、対米輸出額は14.4億円程度減少すると試算されるが、それがGDPに占める比率は無視できるほど小さい。
他方、2024年の対米医薬品輸出額は4,114.7億円で対米輸出額全体の1.9%を占める。仮にトランプ大統領が示唆するように医薬品に200%の関税が課せられる場合には、対米医薬品輸出は大幅に減少するだろう。仮に輸出が停止するとした場合、それは年間のGDPを0.07%押し下げる計算となり、経済全体への影響も小さくない。
また、医薬品メーカーに対して、新たな関税導入までに米国内に生産拠点を移転するための猶予期間を設ける意向も表明した。「およそ1年から1年半の猶予を与える」とし、「それ以降は、医薬品を国外から米国に持ち込む場合、200%といった極めて高水準の関税を課す」と述べた。
2024年の対米銅・銅製品の輸出額は41.2億円と、対米輸出額全体の0.02%と小さい。仮に50%の関税が課せられた場合、対米輸出額は14.4億円程度減少すると試算されるが、それがGDPに占める比率は無視できるほど小さい。
他方、2024年の対米医薬品輸出額は4,114.7億円で対米輸出額全体の1.9%を占める。仮にトランプ大統領が示唆するように医薬品に200%の関税が課せられる場合には、対米医薬品輸出は大幅に減少するだろう。仮に輸出が停止するとした場合、それは年間のGDPを0.07%押し下げる計算となり、経済全体への影響も小さくない。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。