自動車関税率は今月中に15%へ
トランプ政権は9月4日(米国時間)に、日米関税合意に関する大統領令を発出した。日米が関税合意に達した7月22日から1か月以上を要することになった。
大統領令では、既に実施されている相互関税率15%の設定が明記された。さらに、日本政府が求めていた既存の関税の扱いについても記された。具体的には、15%未満の既存の関税率は相互関税を加えて15%とし、15%以上の既存の関税率には相互関税は上乗せされないとの規定だ。8月7日に遡って適用される。
また日本が求めていた自動車関税の27.5%から15%への引き下げも盛り込まれた。今月中に実施されるとみられる。
相互関税率15%、自動車関税27.5%のもとでは、トランプ関税全体は日本の実質GDPを1年程度で0.60%押し下げると計算されるが、自動車関税が15%になれば押し下げ効果は0.55%にやや軽減される。それでも日本経済に相応の悪影響をもたらすことは変わらない。
他方で、商務長官が日米関税合意に基づく日本の合意内容の履行を監視し、随時、それを大統領に報告するとし、日本が合意内容を履行しない場合には、必要に応じて大統領令を修正すると、再び関税率を引き上げる可能性に言及している。
大統領令では、既に実施されている相互関税率15%の設定が明記された。さらに、日本政府が求めていた既存の関税の扱いについても記された。具体的には、15%未満の既存の関税率は相互関税を加えて15%とし、15%以上の既存の関税率には相互関税は上乗せされないとの規定だ。8月7日に遡って適用される。
また日本が求めていた自動車関税の27.5%から15%への引き下げも盛り込まれた。今月中に実施されるとみられる。
相互関税率15%、自動車関税27.5%のもとでは、トランプ関税全体は日本の実質GDPを1年程度で0.60%押し下げると計算されるが、自動車関税が15%になれば押し下げ効果は0.55%にやや軽減される。それでも日本経済に相応の悪影響をもたらすことは変わらない。
他方で、商務長官が日米関税合意に基づく日本の合意内容の履行を監視し、随時、それを大統領に報告するとし、日本が合意内容を履行しない場合には、必要に応じて大統領令を修正すると、再び関税率を引き上げる可能性に言及している。
対米投資計画について日米の説明にずれが残る
最大の注目点は、日米間で大きな意見の隔たりがあった5500億ドルの対米投資計画に関する記述だ。これについては、「米国政府によって選定される」と大統領令に書かれており、日本の政府系金融機関の支援のもと日本企業が決定する、という日本側の説明と異なっている。
対米投資計画については、別途、ラトニック商務長官と赤澤大臣が覚書に署名している。その詳細については明らかではないが、対米投資は2029年1月19日までに随時行われること、米商務長官が議長を務める投資委員会が案件を推薦し、大統領が選定すること、などが盛り込まれたと報じられている。やはり、対米投資については大統領が選定することが明記されたのである。
対米投資計画についてトランプ政権は、日本が5500億ドルの資金を提供する一方、それは米国の製造業の再生と拡大のためにトランプ政権が主導して投資先を決めることができると一貫して説明してきた。今回の大統領令、覚書の内容もこれに沿ったものだ。5500億ドルを日本政府が大統領に拠出する、との説明も聞かれた。
他方日本政府は、日本企業が自らの決定に基づき対米投資をする際に、日本は政府系金融機関が出資・融資・融資保証でそれを支援する枠を5500億ドルに設定すると説明している。両国は、全く別の枠組みを説明しているかのように、非常に大きく食い違っている。
両国の認識のギャップはそれを大統領令、覚書で文書化してもなお残されたままだ。この件で、先行き、両国間で軋轢が表面化し、トランプ政権が日米関税合意を破棄して関税率が25%に引き上げられる可能性もあるのではないか(コラム「赤澤大臣が訪米へ:5500億ドルの対米投資計画の文書化に大きなリスク」、2025年9月4日)。
対米投資計画については、別途、ラトニック商務長官と赤澤大臣が覚書に署名している。その詳細については明らかではないが、対米投資は2029年1月19日までに随時行われること、米商務長官が議長を務める投資委員会が案件を推薦し、大統領が選定すること、などが盛り込まれたと報じられている。やはり、対米投資については大統領が選定することが明記されたのである。
対米投資計画についてトランプ政権は、日本が5500億ドルの資金を提供する一方、それは米国の製造業の再生と拡大のためにトランプ政権が主導して投資先を決めることができると一貫して説明してきた。今回の大統領令、覚書の内容もこれに沿ったものだ。5500億ドルを日本政府が大統領に拠出する、との説明も聞かれた。
他方日本政府は、日本企業が自らの決定に基づき対米投資をする際に、日本は政府系金融機関が出資・融資・融資保証でそれを支援する枠を5500億ドルに設定すると説明している。両国は、全く別の枠組みを説明しているかのように、非常に大きく食い違っている。
両国の認識のギャップはそれを大統領令、覚書で文書化してもなお残されたままだ。この件で、先行き、両国間で軋轢が表面化し、トランプ政権が日米関税合意を破棄して関税率が25%に引き上げられる可能性もあるのではないか(コラム「赤澤大臣が訪米へ:5500億ドルの対米投資計画の文書化に大きなリスク」、2025年9月4日)。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。