&N 未来創発ラボ

野村総合研究所と
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日本が休場の10月13日のアジア市場では、先週末に発表された公明党の連立離脱とトランプ政権による中国への100%関税のニュースが重なり、金融市場は動揺した。高市総裁誕生を受けて先週進んだ円安・ドル高が大きく巻き戻されている。ただし、トランプ大統領がその後に中国との関係に楽観的な発言をしたことで、先週末の海外市場で4万5000円程度まで下落した日経平均先物は4万6000円台まで戻した。さらに、14日の日経平均株価は4万7000円程度で寄り付き、前週末の4万8000台からの下落幅は1000円未満にとなった。
 
当面の株価の落ち着きどころは、今後の新政権の姿によって変わってくる。仮に高市政権が成立しても、公明党の連立離脱によって高市政権の脆弱性は金融市場に強く認識されている。そのため、高市総裁誕生後に想定されていた日経平均株価のレンジの上限である4万9000円の達成はもはや難しく、また、先週に達した4万8000円超も簡単ではないのではないか(コラム「自民党総裁選(15):候補者の財政・金融政策スタンスと選挙後の金融市場の見通し」、2025年10月2日)。
 
高市政権成立で最も株価に追い風となるのは、野党との連立により、安定多数の議席を確保した与党政権となるケースだ。この際には、株価の上限は4万8000円と予想する。複数あるいは多くの議席を持つ立憲民主党を連立に取り込むことで、高市カラーは十分に発揮されなくなるとみる。
 
自民党単独政権となる場合には、それ以上に高市カラーの発揮は難しく、公明党が連立を離脱した分、自民党の政権運営はより困難さを増す。その場合、株価は高市総裁誕生前の4万4000円まで下落する可能性がある。野党との連立政権が成立しても、少数与党の状況が変わらないケースでは、株価の落ち着きどころはこの2つのケースの中間となり、レンジは4万5000円~4万7000円とみたい。
 
最後に現在の野党による連立政権するケースでは、高市政権への期待は完全に消滅することから、株価は高市総裁誕生前の4万4000円、そして石破首相が辞任を表明し、高市トレードが始まる前の4万2000円が下値のめどとなる。ただし、現在の野党による連立政権の成立で、減税などが実施される期待や、政権交代による一般的な期待が高まる面がある。他方、政策理念が異なる政党の寄り合い所帯となるため、政治の混乱も予想される。こうした点を考慮し、このケースでは、株価のレンジは4万3000円~4万6000円と見ておきたい。
 
図表 政治情勢と金融市場の当面のシナリオ

プロフィール

  • 木内 登英のポートレート

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。