社会保障制度改革で有識者も交えた超党派の国民会議を設置
高市首相は24日の所信表明演説で、「人口減少・少子高齢化を乗り切るためには、社会保障制度における給付と負担の在り方について、国民的議論が必要です。超党派かつ有識者も交えた国民会議を設置し、給付付き税額控除の制度設計を含めた税と社会保障の一体改革について議論してまいります」と述べ、各党との協議を重ね、社会保障の一体改革を進める決意を表明した。
連立を組む日本維新の会との連立合意書では、医療費削減の手段としてOTC類似薬を含む薬剤の自己負担の見直しが明記された。所信表明演説でも高市首相はこのOTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しに言及し、さらに電子カルテを含む医療機関の電子化、データヘルスなどを通じた効率的で質の高い医療の実現を目指す考えを示した。
さらに高市首相は、外来・在宅医療や介護との連携を含む新しい地域医療構想の策定、医師の偏在是正に向けた総合的な対策、新たな地域医療構想に向けた病床の適正化を掲げ、そうした社会保障制度改革を進めていく中で、日本維新の会が求める現役世代の保険料負担の抑制を進める考えを示している。
他方で、医療費の増額につながる施策も高市首相は示しており、「赤字に苦しむ医療機関や介護施設への対応は待ったなし」とし、次期診療報酬改定については、「賃上げ・物価高を適切に反映させていく」と述べ、「改定時期を待たず、経営改善および従業者の処遇改善につながる補助金を措置する」と、施策の前倒し実施の意向を示した。今臨時国会の会期中に補正予算案を提出する考えだ。
日本維新の会が掲げる、高齢者の保険料原則3割負担の主張をどのように扱うかは、高市首相が頭を悩ませる点だろう。高齢者の一律の負担増加は、世論の賛同を得ることは簡単ではないだろう。
連立を組む日本維新の会との連立合意書では、医療費削減の手段としてOTC類似薬を含む薬剤の自己負担の見直しが明記された。所信表明演説でも高市首相はこのOTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しに言及し、さらに電子カルテを含む医療機関の電子化、データヘルスなどを通じた効率的で質の高い医療の実現を目指す考えを示した。
さらに高市首相は、外来・在宅医療や介護との連携を含む新しい地域医療構想の策定、医師の偏在是正に向けた総合的な対策、新たな地域医療構想に向けた病床の適正化を掲げ、そうした社会保障制度改革を進めていく中で、日本維新の会が求める現役世代の保険料負担の抑制を進める考えを示している。
他方で、医療費の増額につながる施策も高市首相は示しており、「赤字に苦しむ医療機関や介護施設への対応は待ったなし」とし、次期診療報酬改定については、「賃上げ・物価高を適切に反映させていく」と述べ、「改定時期を待たず、経営改善および従業者の処遇改善につながる補助金を措置する」と、施策の前倒し実施の意向を示した。今臨時国会の会期中に補正予算案を提出する考えだ。
日本維新の会が掲げる、高齢者の保険料原則3割負担の主張をどのように扱うかは、高市首相が頭を悩ませる点だろう。高齢者の一律の負担増加は、世論の賛同を得ることは簡単ではないだろう。
給付付き税額控除に財源確保の課題
社会保障制度改革の中で、高市首相が自民党総裁選の際に主張し、日本維新の会との連立合意にも含まれたのが、給付付き税額控除だ(コラム「自民党総裁選(9):給付付き税額控除と日本版ユニバーサル・クレジット」、2025年9月24日)。
給付付き税額控除制度を作ることを、最も積極的に打ち出してきたのは立憲民主党である。立憲民主党は、消費税の負担が低所得層ほど大きくなる「逆進性」を緩和することを狙って、給付付き税額控除を掲げている。最終的に、消費税は維持しつつ、低所得者層への負担軽減を給付と控除で行うというのが、立憲民主党の構想だ。高市首相の考えもそれに近いと推測される(図表)。
給付付き税額控除を導入することのメリットとしては、消費税の逆進性を緩和すること以外にも、物価上昇による生活への影響を受けやすい中低所得層の所得を増やし、生活の安定を図ること、所得再分配機能を強化し、格差是正や少子化対策に資することなどが期待される。
他方で大きな課題としては、税額控除と給付の財源確保がある。立憲民主党は、将来世代に負担をかけないという観点から、赤字国債には頼らずに、税制全体の見直しで財源を確保する方針だ。大企業への優遇措置を是正し、応分の負担を求める「法人税制の見直し」、株式の配当や売却益などに対する課税を、給与所得との公平性を図る形で強化する「金融所得課税の強化」、高額所得層に対する所得税の最高税率引き上げなど「富裕層への課税強化」などを検討している。
高市首相が給付付き税額の財源について、どのような考えを持っているのかは明らかではない。制度設計においては、給付及び税額控除の金額について適切な水準の決定、所得制限を設ける際の所得水準の決定、個人の所得水準の正確な把握、給付及び税額控除に資産水準をどのように反映させるかなど、今後検討が必要な点は多い。
給付付き税額控除制度を作ることを、最も積極的に打ち出してきたのは立憲民主党である。立憲民主党は、消費税の負担が低所得層ほど大きくなる「逆進性」を緩和することを狙って、給付付き税額控除を掲げている。最終的に、消費税は維持しつつ、低所得者層への負担軽減を給付と控除で行うというのが、立憲民主党の構想だ。高市首相の考えもそれに近いと推測される(図表)。
給付付き税額控除を導入することのメリットとしては、消費税の逆進性を緩和すること以外にも、物価上昇による生活への影響を受けやすい中低所得層の所得を増やし、生活の安定を図ること、所得再分配機能を強化し、格差是正や少子化対策に資することなどが期待される。
他方で大きな課題としては、税額控除と給付の財源確保がある。立憲民主党は、将来世代に負担をかけないという観点から、赤字国債には頼らずに、税制全体の見直しで財源を確保する方針だ。大企業への優遇措置を是正し、応分の負担を求める「法人税制の見直し」、株式の配当や売却益などに対する課税を、給与所得との公平性を図る形で強化する「金融所得課税の強化」、高額所得層に対する所得税の最高税率引き上げなど「富裕層への課税強化」などを検討している。
高市首相が給付付き税額の財源について、どのような考えを持っているのかは明らかではない。制度設計においては、給付及び税額控除の金額について適切な水準の決定、所得制限を設ける際の所得水準の決定、個人の所得水準の正確な把握、給付及び税額控除に資産水準をどのように反映させるかなど、今後検討が必要な点は多い。
図表 給付付き税額控除に関する各党の姿勢


プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。