設備投資税制の検討
政府は11月21日に閣議決定した経済対策の中で、企業による大型投資を促す「大胆な設備投資税制」の検討を盛り込んだ。現時点での原案によると、法人税から投資額の8%を差し引く税額控除を5年間措置することが検討されている。減税規模は年5,000億円程度となる見込みだ。米国の関税政策の悪影響を受ける企業に対しては、控除率を15%に引き上げることも検討されている。
税額控除のほかに、設備投資にかかる費用の全額を初年度に減価償却費に計上する「即時償却」のどちらかを選択できるようにすることも検討されている。この租税優遇措置の対象は、事業規模や業種で限定されない。ただし、一定規模の投資額であることに加え、投資に対する利益率が15%を超えるような、高い付加価値を生み出す可能性が高い設備投資計画であることを適用条件とする方針である。
税額控除のほかに、設備投資にかかる費用の全額を初年度に減価償却費に計上する「即時償却」のどちらかを選択できるようにすることも検討されている。この租税優遇措置の対象は、事業規模や業種で限定されない。ただし、一定規模の投資額であることに加え、投資に対する利益率が15%を超えるような、高い付加価値を生み出す可能性が高い設備投資計画であることを適用条件とする方針である。
GDP押し上げ効果は+0.03%との計算も
経産省は今回の措置で5兆円程度の設備投資増加を見込んでいるというが、それは過大ではないか。実際、この措置によって5兆円の設備投資が新規に増えるのであれば、それは名目及び実質GDPを5年間で+0.82%押し上げることになる。
しかし実際には、この措置によって新規の投資が促されるというよりも、その適用条件を満たす投資を計画している企業が、この租税優遇措置を利用するだけに終わる面が多いのではないか。企業に新規の投資を促す要因は、減税措置ではなく国内の成長期待の上昇だろう。
上記の規模や利益率の条件を満たすのは、大手企業の設備投資が中心となる可能性がある。その場合、この租税優遇措置は今までの租税優遇措置と同様に、経済の活性化に貢献するというよりも、大手企業の収益をより増加させることに終わってしまうのではないか。
ちなみに、この措置で新規の投資が促されるのではなく、それがもたらす法人税支払いの節約分が、設備投資、雇用・賃金の増加を通じて個人消費を増加させるといった経路に注目した場合、年5,000億円規模の法人減税の名目・実質GDPの押し上げ効果は、わずか+0.03%にしかならない計算となる(内閣府の短期日本経済計量モデル(2022年度版)に基づく試算)。
しかし実際には、この措置によって新規の投資が促されるというよりも、その適用条件を満たす投資を計画している企業が、この租税優遇措置を利用するだけに終わる面が多いのではないか。企業に新規の投資を促す要因は、減税措置ではなく国内の成長期待の上昇だろう。
上記の規模や利益率の条件を満たすのは、大手企業の設備投資が中心となる可能性がある。その場合、この租税優遇措置は今までの租税優遇措置と同様に、経済の活性化に貢献するというよりも、大手企業の収益をより増加させることに終わってしまうのではないか。
ちなみに、この措置で新規の投資が促されるのではなく、それがもたらす法人税支払いの節約分が、設備投資、雇用・賃金の増加を通じて個人消費を増加させるといった経路に注目した場合、年5,000億円規模の法人減税の名目・実質GDPの押し上げ効果は、わずか+0.03%にしかならない計算となる(内閣府の短期日本経済計量モデル(2022年度版)に基づく試算)。
日本版DOGEの考えに矛盾し新たな無駄を生む租税特別措置になるリスクも
政府は日本版DOGE(政府効率化省)を創設し、補助金、基金と並んで税優遇措置の見直しに取り組む考えだ(コラム「日本版DOGEがスタート」、2025年11月25日)。しかし、今回の設備投資減税は、大企業に利益をもたらす一方、経済の活性化効果は十分に期待できない無駄な措置をさらに重ねてしまうことにならないか。そして、DOGE創設の狙いと矛盾しないか、慎重な検討が必要だろう。
日本版DOGEを通じて政府の無駄な歳出を削減することは重要であるが、実際には、そうした取り組みは、政府支出の効率化と小さな政府を望む連立相手の日本維新の会に対する配慮や、積極財政が円安を通じて物価高を促している等の批判を徐々に高めている国民に対して、財政規律に一定の配慮をしていることをアピールするための証拠作りの施策となってはならない。
(参考資料)
「設備投資:投資額8%控除検討 5年間 政府、設備投資促す」、2025年11月26日、毎日新聞
「国内設備投資に8%減税 経産省、来年度税制改正で検討 関税影響なら15%優遇」、2025年11月26日、日本経済新聞
日本版DOGEを通じて政府の無駄な歳出を削減することは重要であるが、実際には、そうした取り組みは、政府支出の効率化と小さな政府を望む連立相手の日本維新の会に対する配慮や、積極財政が円安を通じて物価高を促している等の批判を徐々に高めている国民に対して、財政規律に一定の配慮をしていることをアピールするための証拠作りの施策となってはならない。
(参考資料)
「設備投資:投資額8%控除検討 5年間 政府、設備投資促す」、2025年11月26日、毎日新聞
「国内設備投資に8%減税 経産省、来年度税制改正で検討 関税影響なら15%優遇」、2025年11月26日、日本経済新聞
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。