市場の警鐘を受け止めず予算規模は拡大
26日に閣議決定が予定されている2026年度の政府予算案で、一般会計の総額は122兆3,000億円程度で決着する方向にある。2025年度の当初予算での115兆1,978億円を7兆円程度上回り過去最大規模となる。新規国債発行額も29兆6,000億円程度と2025年度を上回る。
高市政権は「責任ある積極財政」を掲げているが、予算案の編成からは、「責任ある」がどこに体現されているのかは分からない。また、金融市場では、積極財政が警戒され円安・債券安(長期金利の上昇)が進んでいるが、そうした金融市場の警鐘を真摯に受け止めているようには見えない。
前年比で大きく増加する歳出項目の一つが国債費であり、2兆円程度増加する可能性がある。財務省は国債利払い費の前提となる積算金利を8月の概算要求段階の2.6%から3.0%と29年ぶりの水準にまで大きく引き上げることを検討している。積算金利の引き上げは、高市政権の積極財政姿勢などを受けた足元での長期金利の上昇を反映したものだが、その分、国債費の予算は増加することになる。
高市政権は「責任ある積極財政」を掲げているが、予算案の編成からは、「責任ある」がどこに体現されているのかは分からない。また、金融市場では、積極財政が警戒され円安・債券安(長期金利の上昇)が進んでいるが、そうした金融市場の警鐘を真摯に受け止めているようには見えない。
前年比で大きく増加する歳出項目の一つが国債費であり、2兆円程度増加する可能性がある。財務省は国債利払い費の前提となる積算金利を8月の概算要求段階の2.6%から3.0%と29年ぶりの水準にまで大きく引き上げることを検討している。積算金利の引き上げは、高市政権の積極財政姿勢などを受けた足元での長期金利の上昇を反映したものだが、その分、国債費の予算は増加することになる。
一般会計総額の自然増は5.5兆円程度と推定
このように、前年度から7兆円程度膨らむ2026年度予算案は高市政権の積極財政姿勢が基本的には変わっていないことを示している。ただし、筆者が懸念していたほどには予算規模は大きくはならなかった、とも言える。筆者は積極財政色が強い高市政権のもとでは、125兆円程度までの一般会計総額の拡大を覚悟していた。
筆者の試算では、高齢化の進展、税収増、物価高、金利上昇といった外部環境の変化によって、2025年度当初予算と比べて2026年度の一般会計総額は5.5兆円程度増加する。これがいわば自然増であり、それを上回る2兆円程度が、高市政権の積極財政姿勢を反映する、高市カラーが発揮された部分と考えられる(コラム「金融市場が注視する2026年度予算案の規模」、2025年12月23日)。
筆者の試算では、高齢化の進展、税収増、物価高、金利上昇といった外部環境の変化によって、2025年度当初予算と比べて2026年度の一般会計総額は5.5兆円程度増加する。これがいわば自然増であり、それを上回る2兆円程度が、高市政権の積極財政姿勢を反映する、高市カラーが発揮された部分と考えられる(コラム「金融市場が注視する2026年度予算案の規模」、2025年12月23日)。
積極財政姿勢に修正の兆しもあるがまだ明確ではない
経済産業省の予算は前年度比1兆円程度増加すると見込まれるが、これは高市政権の目玉政策である「危機管理投資」の増加を主に反映していよう。
これに高市政権が進める防衛費増額分が加わると、一般会計総額は122兆円程度では収まらない計算となる。防衛費の増額分を抑えた、あるいは他の歳出削減を進めたことが考えられる。仮にそうであるならば、高市政権は積極財政の旗は降ろさないものの、金融市場の警鐘にも一定程度の配慮を示し、若干の軌道修正を始めた可能性も考えられない訳ではない。
ただし、防衛費の本格的な増額は、防衛三文書の改定後に行われ、今回の予算案にはまだ反映されていないだけなのかもしれない。
高市政権が積極財政姿勢を軌道修正し始めたかどうかについては、まだ不明確だ。それは、来年の通常国会での予算審議、財政健全化目標の議論、来春の骨太の方針に示される中期財政方針、来年秋の補正予算編成など一連のイベントを注意深く見ないと明らかにはならない。そうした軌道修正の可能性も踏まえ、高市政権の財政政策を注視し、敏感に反応する金融市場の姿勢は今後も続くだろう。
これに高市政権が進める防衛費増額分が加わると、一般会計総額は122兆円程度では収まらない計算となる。防衛費の増額分を抑えた、あるいは他の歳出削減を進めたことが考えられる。仮にそうであるならば、高市政権は積極財政の旗は降ろさないものの、金融市場の警鐘にも一定程度の配慮を示し、若干の軌道修正を始めた可能性も考えられない訳ではない。
ただし、防衛費の本格的な増額は、防衛三文書の改定後に行われ、今回の予算案にはまだ反映されていないだけなのかもしれない。
高市政権が積極財政姿勢を軌道修正し始めたかどうかについては、まだ不明確だ。それは、来年の通常国会での予算審議、財政健全化目標の議論、来春の骨太の方針に示される中期財政方針、来年秋の補正予算編成など一連のイベントを注意深く見ないと明らかにはならない。そうした軌道修正の可能性も踏まえ、高市政権の財政政策を注視し、敏感に反応する金融市場の姿勢は今後も続くだろう。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。