トランプ政権はグリーンランド取得に軍事行動も辞さない姿勢
トランプ政権は、「西半球」での米国の覇権を目指すトランプ版モンロー主義を、昨年11月に発表した「国家安全保障戦略」で打ち出した。それを実践したのが、1月3日のベネズエラに対する軍事行動だったと考えられる(コラム「米国国家安全保障戦略とトランプ版モンロー主義」、2026年1月6日)。
トランプ政権が想定する西半球には、南北米大陸に加えて、北米大陸北東側に位置するデンマーク自治領グリーンランドも含まれる。ベネズエラへの軍事行動を起こした翌日の1月4日に、トランプ大統領は「国家安全保障の観点から、我々にはグリーンランドが必要だ。防衛のために不可欠だ」と強調した。さらに6日には「グリーンランド領有に向けて米軍の活用も選択肢だ」と、軍事力行使も辞さない意向を表明した。
ボリビア、ニカラグア、キューバなどの中南米の反米国家が、ベネズエラに次ぐ攻撃対象になるとの観測が燻ぶっている。仮に米国がグリーンランドに対して軍事行動を起こす場合には、その意味合いは中南米諸国に対するものとは大きく異なってくる。
グリーンランドへの軍事行動は北大西洋条約機構(NATO)の終焉を意味する
デンマークの自治領グリーンランドへの軍事行動は、欧州地域が米国の攻撃対象となることを意味する。しかも、デンマークは1949年の北大西洋条約機構(NATO)創設当初からの加盟国であり、同じ加盟国に対して米国が軍事攻撃をしかけることになる。
北大西洋条約第5条の集団防衛の条項では、加盟国のいずれかが攻撃された場合、他の加盟国が協力して防衛にあたることが規定されている。理論的にはこの第5条が適用され、他の加盟国はデンマークを守るために同じ加盟国である米国と戦うことになってしまう。
実際には、そうした場合には、第5条の「集団防衛」の原則は機能不全に陥る可能性が高く、NATOの存在意義そのものが問われる事態になるだろう。デンマーク首相は「米国がグリーンランドを攻撃すれば、NATOの終焉を意味する」と警告している。
こうした点を踏まえても、トランプ政権が実際に軍事行動を起こしてグリーンランドを米国領とする可能性は、実際には低いだろう。
トランプ政権が想定する西半球には、南北米大陸に加えて、北米大陸北東側に位置するデンマーク自治領グリーンランドも含まれる。ベネズエラへの軍事行動を起こした翌日の1月4日に、トランプ大統領は「国家安全保障の観点から、我々にはグリーンランドが必要だ。防衛のために不可欠だ」と強調した。さらに6日には「グリーンランド領有に向けて米軍の活用も選択肢だ」と、軍事力行使も辞さない意向を表明した。
ボリビア、ニカラグア、キューバなどの中南米の反米国家が、ベネズエラに次ぐ攻撃対象になるとの観測が燻ぶっている。仮に米国がグリーンランドに対して軍事行動を起こす場合には、その意味合いは中南米諸国に対するものとは大きく異なってくる。
グリーンランドへの軍事行動は北大西洋条約機構(NATO)の終焉を意味する
デンマークの自治領グリーンランドへの軍事行動は、欧州地域が米国の攻撃対象となることを意味する。しかも、デンマークは1949年の北大西洋条約機構(NATO)創設当初からの加盟国であり、同じ加盟国に対して米国が軍事攻撃をしかけることになる。
北大西洋条約第5条の集団防衛の条項では、加盟国のいずれかが攻撃された場合、他の加盟国が協力して防衛にあたることが規定されている。理論的にはこの第5条が適用され、他の加盟国はデンマークを守るために同じ加盟国である米国と戦うことになってしまう。
実際には、そうした場合には、第5条の「集団防衛」の原則は機能不全に陥る可能性が高く、NATOの存在意義そのものが問われる事態になるだろう。デンマーク首相は「米国がグリーンランドを攻撃すれば、NATOの終焉を意味する」と警告している。
こうした点を踏まえても、トランプ政権が実際に軍事行動を起こしてグリーンランドを米国領とする可能性は、実際には低いだろう。
米国はすでにグリーンランドに軍事基地を持っている
トランプ大統領は、ロシアや中国の船舶がグリーンランド周辺に存在していることを指摘し、その領土の獲得に強い意欲を示している。グリーンランドが米国の安全保障上重要であるのは、それが米国の国土に近いうえ、地球温暖化によって北極海の航路が拡大し、ロシアや中国の船舶がグリーンランド周辺にアクセスしやすくなっていることがある。
しかし米国は、グリーンランドにすでに軍事基地を持っている。特に有名なのがグリーンランド北西部の北極点から約1,500kmしか離れていない、チューレ空軍基地(Thule Air Base)だ。この基地は北極圏における米国の戦略的拠点であり、弾道ミサイル防衛システムや早期警戒レーダーの重要な役割を担っている。
グリーンランドでの米軍の駐留は、米国とデンマークとの防衛協定に基づいており、基地の拡張や追加設置はこの協定の枠内で行われている。デンマーク政府は防衛面で米国との協力を維持しつつ、グリーンランドの自治政府の意向も尊重する姿勢を維持してきた。
しかし米国は、グリーンランドにすでに軍事基地を持っている。特に有名なのがグリーンランド北西部の北極点から約1,500kmしか離れていない、チューレ空軍基地(Thule Air Base)だ。この基地は北極圏における米国の戦略的拠点であり、弾道ミサイル防衛システムや早期警戒レーダーの重要な役割を担っている。
グリーンランドでの米軍の駐留は、米国とデンマークとの防衛協定に基づいており、基地の拡張や追加設置はこの協定の枠内で行われている。デンマーク政府は防衛面で米国との協力を維持しつつ、グリーンランドの自治政府の意向も尊重する姿勢を維持してきた。
購入せずにグリーンランドでの米国の軍事的プレゼンスをさらに高める選択肢も
グリーンランドの米国への売却は、デンマーク政府が強く拒否しており、また、グリーンランドの住民の多くもそれを望んでいない。デンマークは、米国がグリーンランドを購入しなくても、現在の枠組みの延長線上で、グリーンランドおよびデンマークの協力のもと、グリーンランドでの軍事的プレゼンスをさらに高めることは可能であると主張している。
さらに、住民投票を経てグリーンランドがデンマークから完全に独立すれば、米国がグリーンランドと「自由連合協定」を締結することが可能となる。その協定のもとでは、自由貿易、保護、基本的サービスの提供と引き換えに、米国に当該地域での軍事作戦に対する事実上の自由裁量権を与えることになる。これは、米政府がマーシャル諸島との間で結んでいる取り決めに似たものだ。
このように、米国がグリーンランドを購入しなくても、米国がグリーンランドでの軍事力をさらに強化することは可能である。
さらに、住民投票を経てグリーンランドがデンマークから完全に独立すれば、米国がグリーンランドと「自由連合協定」を締結することが可能となる。その協定のもとでは、自由貿易、保護、基本的サービスの提供と引き換えに、米国に当該地域での軍事作戦に対する事実上の自由裁量権を与えることになる。これは、米政府がマーシャル諸島との間で結んでいる取り決めに似たものだ。
このように、米国がグリーンランドを購入しなくても、米国がグリーンランドでの軍事力をさらに強化することは可能である。
グリーンランドの鉱物資源を手に入れる狙いも
それでも、米国がグリーンランドの購入に強くこだわる背景には、グリーンランドの鉱物資源を手に入れるという狙いがあるのではないか。
グリーンランドでは、レアアース(希土類)、ウラン、鉄鉱石・銅・亜鉛・金、石油・天然ガスなどが得られる。温暖化による氷床融解によって、こうした鉱物資源の採掘がより容易になっている面もあるだろう。
トランプ版モンロー主義では、西半球における軍事力強化を通じた米国の覇権強化と鉱物資源の確保がセットとなって目指されている。
ルビオ米国務長官は7日に、デンマーク政府からの要請を受けて、来週ワシントンでデンマークとグリーンランドの当局者が会談することを明らかにした。両国間で対話が始まることで、グリーンランドへの軍事的な脅威はとりあえず和らいできている。
それでも、グリーンランドの購入を強く望むトランプ政権と、それを拒否するデンマーク、グリーンランドとの間ですぐに解決策が見出される訳ではないだろう。
(参考資料)
“Rubio Tells Lawmakers Trump Aims to Buy Greenland, Downplays Military Action(米、グリーンランド購入目指す 軍事力行使は想定せず)”, Wall Street Journal. January 7, 2026
“Greenland Confronts the Reality That Trump Isn’t Going Away(グリーンランド、トランプ氏の野望から逃れられず)”, Wall Street Journal. January 8, 2026
グリーンランドでは、レアアース(希土類)、ウラン、鉄鉱石・銅・亜鉛・金、石油・天然ガスなどが得られる。温暖化による氷床融解によって、こうした鉱物資源の採掘がより容易になっている面もあるだろう。
トランプ版モンロー主義では、西半球における軍事力強化を通じた米国の覇権強化と鉱物資源の確保がセットとなって目指されている。
ルビオ米国務長官は7日に、デンマーク政府からの要請を受けて、来週ワシントンでデンマークとグリーンランドの当局者が会談することを明らかにした。両国間で対話が始まることで、グリーンランドへの軍事的な脅威はとりあえず和らいできている。
それでも、グリーンランドの購入を強く望むトランプ政権と、それを拒否するデンマーク、グリーンランドとの間ですぐに解決策が見出される訳ではないだろう。
(参考資料)
“Rubio Tells Lawmakers Trump Aims to Buy Greenland, Downplays Military Action(米、グリーンランド購入目指す 軍事力行使は想定せず)”, Wall Street Journal. January 7, 2026
“Greenland Confronts the Reality That Trump Isn’t Going Away(グリーンランド、トランプ氏の野望から逃れられず)”, Wall Street Journal. January 8, 2026
プロフィール
-
木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。