円安・債券安に配慮しない姿勢
19日午後6時から、高市首相は記者会見を開き、1月23日の通常国会冒頭での衆院解散、1月27日公示、2月8日投開票というスケジュールを示した。選挙を実施する結果、年度内の予算成立は難しくなるが、それでもできるだけ早期に予算を成立させ、国民生活に悪影響が及ばないようにする観点から、短期間での選挙日程を決めた、と高市首相は説明した。
高市首相は、補正予算で物価高対策を実施した上で、来年度予算やその他の法律では新しい政策を盛り込むため、それについて国民の信を得たい、とこの時期に解散総選挙を決めた理由を説明した。一般的には、高市首相の個人的な支持率が高い間に選挙を実施することで、長期政権化を狙っている、との指摘が多い。
高市首相は、今まで掲げてきた政策はブレない、という姿勢を明確に打ち出した点に大きな特徴がある。経済政策では、危機管理投資、成長戦略、責任ある積極財政という政策の柱を今後も維持していく考えを示した。
金融市場では積極財政策への懸念から、円安・債券安(長期金利上昇)が進んでおり、経済や国民生活の逆風になっている可能性があるが、そうした金融市場に配慮する姿勢は見せなかった。
高市首相は、補正予算で物価高対策を実施した上で、来年度予算やその他の法律では新しい政策を盛り込むため、それについて国民の信を得たい、とこの時期に解散総選挙を決めた理由を説明した。一般的には、高市首相の個人的な支持率が高い間に選挙を実施することで、長期政権化を狙っている、との指摘が多い。
高市首相は、今まで掲げてきた政策はブレない、という姿勢を明確に打ち出した点に大きな特徴がある。経済政策では、危機管理投資、成長戦略、責任ある積極財政という政策の柱を今後も維持していく考えを示した。
金融市場では積極財政策への懸念から、円安・債券安(長期金利上昇)が進んでおり、経済や国民生活の逆風になっている可能性があるが、そうした金融市場に配慮する姿勢は見せなかった。
食料品の消費税率を2年間ゼロにすることを公約に
高市首相の説明は、昨年の自民党総裁選や首相就任時の記者会見を再度聞いているかのようであり、個人の思いを熱っぽく語った一方、自民党としての選挙の戦略、考え方、そして公約については多くを語らなかった。今回の選挙は、自民党としても高市首相の個人的な人気にすがるしかない状況であるが、まさにそれを象徴しているかのような記者会見だった。
高市首相が唯一明確に掲げた自民党の公約が、食料品の消費税率を2年間ゼロにするというものだった。今回の選挙では、野党も総じて消費税減税を掲げている。新党の中道改革連合も食料品の消費税率のゼロ化を掲げており、そうした野党との対抗上、自民党も消費税減税を公約にせざるを得なかったのだろう。
ただし、高市首相は、消費税減税は実施までに時間がかかることや、自民党内で十分な支持を得ていないことから、消費税減税については今まで慎重な姿勢であった。それが一気に変わった理由については、昨年10月の日本維新の会との連立合意にそれが含まれていたこと以外に、明確な説明はなかった。
食料品の消費税率を2年間ゼロにすると、各年5兆円の税収減となる。また、仮に2年間の時限措置として始めても、2年後に税率を元に戻すことは難しく、結果として恒久減税となる可能性が否定できない。19日の債券市場では、10年国債利回りが2.28%台と26年ぶりの水準まで上昇したのは、自民党が消費税減税を公約に掲げるとの観測が高まり、財政悪化への懸念が強まったからだ。
高市首相が唯一明確に掲げた自民党の公約が、食料品の消費税率を2年間ゼロにするというものだった。今回の選挙では、野党も総じて消費税減税を掲げている。新党の中道改革連合も食料品の消費税率のゼロ化を掲げており、そうした野党との対抗上、自民党も消費税減税を公約にせざるを得なかったのだろう。
ただし、高市首相は、消費税減税は実施までに時間がかかることや、自民党内で十分な支持を得ていないことから、消費税減税については今まで慎重な姿勢であった。それが一気に変わった理由については、昨年10月の日本維新の会との連立合意にそれが含まれていたこと以外に、明確な説明はなかった。
食料品の消費税率を2年間ゼロにすると、各年5兆円の税収減となる。また、仮に2年間の時限措置として始めても、2年後に税率を元に戻すことは難しく、結果として恒久減税となる可能性が否定できない。19日の債券市場では、10年国債利回りが2.28%台と26年ぶりの水準まで上昇したのは、自民党が消費税減税を公約に掲げるとの観測が高まり、財政悪化への懸念が強まったからだ。
消費税減税の弊害は大きい
高市首相は、消費税減税の財源を確保し、赤字国債の発行に頼らないと説明した。しかし現時点でその財源については明確な説明はなく、補助金、租税優遇措置、基金の見直しなどの例を挙げたに過ぎない。財政悪化への金融市場の懸念は、高市首相の記者会見を受けてさらに強まっただろう。
食料品の消費税率を2年間ゼロという政策は、逆進性を緩和することや、短期間で限定的な経済効果をもたらすというプラス面があるが、それは、社会保障の基礎的財源を損ねてしまう、財政を悪化させる、円安・債券安を通じて経済や国民生活に悪影響を与えるという弊害と比べれば小さく、割の合わない政策だ(コラム「高市政権が食料品の消費税率ゼロを選挙公約に掲げる方針:実質GDP押上げ効果は+0.22%:形骸化が進む『責任ある積極財政』でさらなる円安・債券安のリスク」、2026年1月19日)。
食料品の消費税率を2年間ゼロという政策は、逆進性を緩和することや、短期間で限定的な経済効果をもたらすというプラス面があるが、それは、社会保障の基礎的財源を損ねてしまう、財政を悪化させる、円安・債券安を通じて経済や国民生活に悪影響を与えるという弊害と比べれば小さく、割の合わない政策だ(コラム「高市政権が食料品の消費税率ゼロを選挙公約に掲げる方針:実質GDP押上げ効果は+0.22%:形骸化が進む『責任ある積極財政』でさらなる円安・債券安のリスク」、2026年1月19日)。
消費税減税が実施されるかどうかはなお不確実
他方、高市首相は、消費税減税については、税と社会保障の一体改革を議論する「国民会議」で審議したい、と説明した。これは、物価高対策や年収の壁問題への抜本的な解決策と考えられる給付付き税額控除制度を中心に議論するとされる場である。野党や民間有識者も加わる。
ただし、食料品の消費税率を2年間ゼロという政策と給付付き税額控除制度の創設とは、実は、重複する物価高対策だ。消費税減税は決定から実施までに1年半から2年程度は時間を要する。レジのシステム更改や周知の期間が必要であるためだ。その場合、2年間の時限措置であるとしても、消費税減税は決定から2年半から3年間は少なくとも続く。それだけの時間があれば、より抜本的な物価高対策、あるいは中低所得者の支援策である給付付き税額控除を実施することが可能ではないか。
このように両者が重複する施策であることや、年間5兆円の財源の確保が難しいことから、最終的には食料品の消費税率を2年間ゼロという政策は実現しない可能性もあるのではないか。
また、円安・債券安の進行を無視できなくなり、選挙後には高市政権は積極財政姿勢を修正せざるを得なくなる可能性も考えておきたい。
ただし、食料品の消費税率を2年間ゼロという政策と給付付き税額控除制度の創設とは、実は、重複する物価高対策だ。消費税減税は決定から実施までに1年半から2年程度は時間を要する。レジのシステム更改や周知の期間が必要であるためだ。その場合、2年間の時限措置であるとしても、消費税減税は決定から2年半から3年間は少なくとも続く。それだけの時間があれば、より抜本的な物価高対策、あるいは中低所得者の支援策である給付付き税額控除を実施することが可能ではないか。
このように両者が重複する施策であることや、年間5兆円の財源の確保が難しいことから、最終的には食料品の消費税率を2年間ゼロという政策は実現しない可能性もあるのではないか。
また、円安・債券安の進行を無視できなくなり、選挙後には高市政権は積極財政姿勢を修正せざるを得なくなる可能性も考えておきたい。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。