ハセット氏の次期FRB議長指名の可能性は低下したか
トランプ米大統領は、今年5月に退任する米連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長の後任を今月中にも発表する見通しだ。後任候補は2人のケビン、つまり米国経済会議(NEC)のケビン・ハセット委員長と元FRB理事のケビン・ウォルシュ氏の2人に絞られた感がある。
従来、トランプ大統領の意中の人は自身に強い忠誠心を示すハセット氏に傾いていた感があった。しかし、トランプ大統領に近すぎるという点から、金融市場、金融業界の同氏の評価は概して低い。ウォルシュ氏は金融市場、金融業界の評価は高い一方、トランプ大統領への忠誠心はハセット氏ほど高くなく、トランプ大統領が期待するほど利下げを推進してくれるか疑問であることが、トランプ大統領にとっては課題とみられる。
トランプ大統領は16日に、ハセット氏に「いまの立場にとどまってほしい」と発言した。この発言が、ハセット氏を次期議長に指名しないとのトランプ大統領の考えを示すものと解釈され、16日の米国為替市場では利下げ観測がやや後退しドル高に振れた。
ベッセント財務長官らが、金融市場の信認を得ていないハセット氏の次期議長指名に反対し、トランプ大統領もそれを受け入れた可能性が考えられる。ただし、トランプ大統領が次期議長に誰を指名するかはなお不確実であり、仮にウォルシュ氏が指名されても、利下げを求めるトランプ大統領の影響力を強く受けることは避けられない。議長の交代で、トランプ大統領によるFRBへの政治介入はさらに強まり、FRBの支配が進むだろう。
従来、トランプ大統領の意中の人は自身に強い忠誠心を示すハセット氏に傾いていた感があった。しかし、トランプ大統領に近すぎるという点から、金融市場、金融業界の同氏の評価は概して低い。ウォルシュ氏は金融市場、金融業界の評価は高い一方、トランプ大統領への忠誠心はハセット氏ほど高くなく、トランプ大統領が期待するほど利下げを推進してくれるか疑問であることが、トランプ大統領にとっては課題とみられる。
トランプ大統領は16日に、ハセット氏に「いまの立場にとどまってほしい」と発言した。この発言が、ハセット氏を次期議長に指名しないとのトランプ大統領の考えを示すものと解釈され、16日の米国為替市場では利下げ観測がやや後退しドル高に振れた。
ベッセント財務長官らが、金融市場の信認を得ていないハセット氏の次期議長指名に反対し、トランプ大統領もそれを受け入れた可能性が考えられる。ただし、トランプ大統領が次期議長に誰を指名するかはなお不確実であり、仮にウォルシュ氏が指名されても、利下げを求めるトランプ大統領の影響力を強く受けることは避けられない。議長の交代で、トランプ大統領によるFRBへの政治介入はさらに強まり、FRBの支配が進むだろう。
共同声明に加わらない日本銀行
パウエル議長は11日に、「司法省が9日、FRBに大陪審の召喚状を送り、昨年6月の上院銀行委員会での私の証言に関連した刑事訴追を警告した」と述べた。連邦検察がFRBの本部改修を巡り、パウエル議長に対する捜査を開始した。パウエル議長は、本部改修を巡る自身への刑事捜査は「口実に過ぎない」とし、トランプ大統領の利下げ圧力に自身が応じなかったことと関連している可能性をにじませる異例の発言をしている(コラム「トランプ米政権がパウエルFRB議長に刑事訴追の警告:強まる政治介入で揺らぐFRBの信認:米国金融資産離れを加速させる可能性も」、2026年1月13日)。
これを受けて、欧州など主要中銀の総裁は13日に「FRBおよびパウエル議長と完全に連帯する」との声明を公表し、「中銀の独立性は物価、金融、経済の安定における基盤だ」と危機感を表明した。その後もこの声明に加わる世界の中央銀行の動きは続いた。
一方、こうした動きに日本銀行は加わらず、静観を続けていることが注目される。これは、他の中央銀行と比べて日本銀行が政治との距離をとり、また政治により配慮する姿勢であることを示しているだろう。
今回の件に限らず、日本銀行は以前から、他国の政府の政策を直接批判することを避けてきた。そうした発言が2国間の外交問題に発展し、日本の政府からの批判を受けることを避けるためだ。特にその当該国が、外交上最も重要な米国であればなおさらだ。
日本銀行も、トランプ大統領によるFRBへの政治介入については憂慮していることは間違いない。植田総裁個人は、他の中央銀行とともに共同声明に加わりたいという思いは持っているかもしれない。しかし、上記のような日本銀行の従来の行動様式に照らせば、共同声明に加わらなかったのは予想通りだ。
しかしそれは大変残念なことであり、日本銀行が政治に配慮するとの印象を世界に強く印象付け、日本銀行の信認を損ねることにもなってしまうだろう。日本銀行には、今からでも共同の声明に加わって欲しい。
(参考資料)
「トランプ氏「ハセット氏、現職にとどまって」 FRB議長人事巡り発言」、2026年1月17日、日本経済新聞電子版
「FRB支持声明、日銀は静観 不参加、政府に配慮か」、2026年1月17日、時事通信
これを受けて、欧州など主要中銀の総裁は13日に「FRBおよびパウエル議長と完全に連帯する」との声明を公表し、「中銀の独立性は物価、金融、経済の安定における基盤だ」と危機感を表明した。その後もこの声明に加わる世界の中央銀行の動きは続いた。
一方、こうした動きに日本銀行は加わらず、静観を続けていることが注目される。これは、他の中央銀行と比べて日本銀行が政治との距離をとり、また政治により配慮する姿勢であることを示しているだろう。
今回の件に限らず、日本銀行は以前から、他国の政府の政策を直接批判することを避けてきた。そうした発言が2国間の外交問題に発展し、日本の政府からの批判を受けることを避けるためだ。特にその当該国が、外交上最も重要な米国であればなおさらだ。
日本銀行も、トランプ大統領によるFRBへの政治介入については憂慮していることは間違いない。植田総裁個人は、他の中央銀行とともに共同声明に加わりたいという思いは持っているかもしれない。しかし、上記のような日本銀行の従来の行動様式に照らせば、共同声明に加わらなかったのは予想通りだ。
しかしそれは大変残念なことであり、日本銀行が政治に配慮するとの印象を世界に強く印象付け、日本銀行の信認を損ねることにもなってしまうだろう。日本銀行には、今からでも共同の声明に加わって欲しい。
(参考資料)
「トランプ氏「ハセット氏、現職にとどまって」 FRB議長人事巡り発言」、2026年1月17日、日本経済新聞電子版
「FRB支持声明、日銀は静観 不参加、政府に配慮か」、2026年1月17日、時事通信
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。