トランプ大統領が欧州8か国に対する関税を撤回
同時株安など足元の世界の金融市場を動揺させる震源地となっていたのは、グリーンランド問題を巡ってトランプ政権が欧州8か国に対して関税をかける考えを示したことと、衆院選での消費税減税の議論を受けて、日本で長期金利が急騰したことの2点である。
トランプ大統領は21日に、欧州8か国に対して関税を実施する考えを撤回した。これは予想されていたことであるが、米国市場で経済悪化への懸念から株安、債券安、ドル安のトリプル安が進んだことへの配慮が、その背景にあるだろう(コラム「世界的株安が進む:グリーンランド問題とFRBへの政治介入で米国はトリプル安:消費税減税で変質する高市トレード」、2026年1月21日)。
昨年4月にトランプ政権が相互関税を打ち出した際に、金融市場でトリプル安が生じたため、相互関税(上乗せ部分)の実施を延期したことと似た対応だ。
関税の撤回を受けて、世界の株価は大きく反転し、日本でも22日の日経平均株価は大幅上昇となった。
トランプ大統領は21日に、欧州8か国に対して関税を実施する考えを撤回した。これは予想されていたことであるが、米国市場で経済悪化への懸念から株安、債券安、ドル安のトリプル安が進んだことへの配慮が、その背景にあるだろう(コラム「世界的株安が進む:グリーンランド問題とFRBへの政治介入で米国はトリプル安:消費税減税で変質する高市トレード」、2026年1月21日)。
昨年4月にトランプ政権が相互関税を打ち出した際に、金融市場でトリプル安が生じたため、相互関税(上乗せ部分)の実施を延期したことと似た対応だ。
関税の撤回を受けて、世界の株価は大きく反転し、日本でも22日の日経平均株価は大幅上昇となった。
日本の長期金利上昇に世界の注目が集まる:選挙後には財政政策修正も
ダボス会議の場でベッセント財務長官は、米国での長期金利上昇は日本の長期金利上昇の影響を受けていると指摘し、日本政府に市場の安定に向けた対応を暗に求めた。片山財務大臣は同じダボス会議で、高市政権が市場の安定に配慮して慎重な財政運営を行うとの説明をし、市場安定化に向けた口先介入を行った。しかし、実効性を伴わない口先介入の効果は限定的だろう。
格付会社S&P社は、高市政権が選挙公約に掲げる食料品の消費税率を2年間ゼロにする案は、長期的に日本の財政を悪化させるリスクがあると指摘した。今後は、日本国債の格下げのリスクもより意識されやすくなる。
世界的に注目を浴びるようになった日本の長期金利の上昇を、高市政権は無視できないだろう。選挙後には、財政健全化をより重視する姿勢を強めざるを得ないのではないか。
消費減税についても、社会保障と税の一体改革を審議する「国民会議」の議論に委ねる考えを高市首相は示しており、減税を実施するとは明言していない。「国民会議」の場で、より抜本的な物価高対策として給付付き税額控除の設計を急ぐべき、との意見が有力になったとして、高市政権が消費税減税を見送る可能性も十分にあるのではないか。
格付会社S&P社は、高市政権が選挙公約に掲げる食料品の消費税率を2年間ゼロにする案は、長期的に日本の財政を悪化させるリスクがあると指摘した。今後は、日本国債の格下げのリスクもより意識されやすくなる。
世界的に注目を浴びるようになった日本の長期金利の上昇を、高市政権は無視できないだろう。選挙後には、財政健全化をより重視する姿勢を強めざるを得ないのではないか。
消費減税についても、社会保障と税の一体改革を審議する「国民会議」の議論に委ねる考えを高市首相は示しており、減税を実施するとは明言していない。「国民会議」の場で、より抜本的な物価高対策として給付付き税額控除の設計を急ぐべき、との意見が有力になったとして、高市政権が消費税減税を見送る可能性も十分にあるのではないか。
長期・超長期金利の上昇に日本銀行は打つ手なし
長期金利上昇については、22日・23日の金融政策決定会合での日本銀行の対応も注目を集めている。しかし実際には、金融政策で長期金利上昇を抑えることは難しい。いわば打つ手なしである。
物価上昇懸念を煽る円安の阻止に向けて、日本銀行がさらに利上げを進める考えを示すと、短めの金利のみならず、イールドカーブ全体が上方にシフトし、長期・超長期の金利のさらなる上昇を招いてしまう可能性がある。
他方、日本銀行が追加利上げに慎重な姿勢を見せると、円安が進み、将来の物価上昇懸念が高まり、やはり長期・超長期の金利のさらなる上昇を招いてしまう可能性がある。
一方、日本銀行は、指値オペや定例オペでの国債買い入れの増額を通じて、長期・超長期の金利の上昇を抑えることも可能だ。それらは、国債市場のボラティリティが高まる際に、投機的な動きを抑える目的で実施するものだ。
しかし足元の長期・超長期の金利上昇の原因は明らかで、高市政権の積極財政姿勢を映したものであることは疑いがない。そのため、日本銀行が国債買い入れを増加させても、それは長期・超長期の金利の押し下げ、国債市場の安定回復には一時的な効果しか持たないだろう。
円安とともに長期・超長期の金利上昇は、企業や家計の資金調達コストを高め、経済活動に悪影響を及ぼしかねない水準になってきた可能性がある。国債市場の安定を回復させることができるのは、高市政権がより財政健全化を重視する政策に転じること以外にはない。
物価上昇懸念を煽る円安の阻止に向けて、日本銀行がさらに利上げを進める考えを示すと、短めの金利のみならず、イールドカーブ全体が上方にシフトし、長期・超長期の金利のさらなる上昇を招いてしまう可能性がある。
他方、日本銀行が追加利上げに慎重な姿勢を見せると、円安が進み、将来の物価上昇懸念が高まり、やはり長期・超長期の金利のさらなる上昇を招いてしまう可能性がある。
一方、日本銀行は、指値オペや定例オペでの国債買い入れの増額を通じて、長期・超長期の金利の上昇を抑えることも可能だ。それらは、国債市場のボラティリティが高まる際に、投機的な動きを抑える目的で実施するものだ。
しかし足元の長期・超長期の金利上昇の原因は明らかで、高市政権の積極財政姿勢を映したものであることは疑いがない。そのため、日本銀行が国債買い入れを増加させても、それは長期・超長期の金利の押し下げ、国債市場の安定回復には一時的な効果しか持たないだろう。
円安とともに長期・超長期の金利上昇は、企業や家計の資金調達コストを高め、経済活動に悪影響を及ぼしかねない水準になってきた可能性がある。国債市場の安定を回復させることができるのは、高市政権がより財政健全化を重視する政策に転じること以外にはない。
プロフィール
-
木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。