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トランプ大統領がドル安容認的な発言

1月28日の東京市場でドル円レートは一時1ドル152円台と、昨年10月以来の円高水準となった。先週末の日本と米国の当局によるレートチェックという口先介入が、円高・ドル安の流れを作った。さらに27日にトランプ米大統領がドル安を容認するかのような発言をしたことが、ドル安・円高の流れをさらに後押ししている。

トランプ大統領は27日に、急速なドル安進行を懸念していないかと記者団から問われ、「ドルの価値は素晴らしい」と答えた。そのうえで日本と中国について、「円や人民元の切り下げをいつも望んでいる。切り下げるのは公平ではない。切り下げられると競争が難しいと言ってきた」と従来通りの批判を展開した。

さらにトランプ大統領は、足元でドル安が進む状況を受け、ドルの水準について「ドルは絶好調だ」と述べた。こうした発言を為替市場は、トランプ大統領がドル安を容認していると受け止めた。

トランプ大統領の発言は概して一貫性はなく、個々の発言を取り立てて重視するのは危険である。しかし、先週末に米当局が円安・ドル高をけん制するために為替市場に口先介入(レートチェック)を実施した直後であることを踏まえると、トランプ政権の為替政策の修正を反映している可能性も考えられる。

関税に次ぐ施策がドル安政策か

来月には米最高裁が、トランプ政権が導入した相互関税などに違法判決を下す可能性がある。トランプ政権は既に、関税による物価高への不満を募らせる米国民に配慮して、関税策を縮小させる動きを見せている。他方で、米国が他国に対して過大に負ってきた負担の象徴であるとトランプ大統領が考える米国の貿易赤字の縮小は、まだ道半ばだ。

そこでトランプ政権は、貿易赤字縮小の手段を関税からドル安へとシフトさせていく可能性が考えられる。トランプ大統領の経済顧問であり現在米連邦準備制度理事会(FRB)の理事を務めるミラン氏が2024年に書いたレポートでは、ドル安政策は関税に次ぐ第2の施策として位置付けられていた。

トランプ政権のドル高修正策、ドル安政策に日本が組み込まれる可能性があり、その一端が1月23日に日米当局によるレートチェックという協調行動に表れた可能性も考えられる。

日米金融政策調整を通じたドル安政策も

ドル安政策の手段として将来トランプ政権が採用するのは、単独あるいは日米協調でのドル売り円買いの為替介入である可能性もあるが、それよりも、FRBの利下げ、あるいはFRBの利下げと日銀の利上げを組み合わせた日米金融政策調整の可能性の方が高いだろう。

FRBのパウエル議長は今年5月に退任するが、トランプ政権は間もなく後任人事を発表する。利下げに前向きであり、利下げを望むトランプ大統領に高い忠誠心を示す人物が新たな議長に指名される。そのもとでトランプ大統領は、FRBの利下げを通じてドル安政策を進める可能性がある。

日米協調でドル高・円安を修正する流れとなれば、急速に円高が進む可能性があるだろう。一時的には1ドル140円程度まで円高が進む可能性があるのではないか。

トランプ政権は円安を生じさせる高市政権の積極財政政策をけん制する可能性も

現時点で見れば、物価高を助長する円安阻止を望む日本政府と、ドル高を修正して貿易赤字を縮小したい米国政府との利害は一致している。この点が23日に日米当局によるレートチェックという協調行動の背景にあったとも言えるだろう。

しかし米当局によるレートチェックには、高市政権の積極財政姿勢が円安ドル高、長期金利の上昇を招いていることによるけん制、批判の意味もあるのではないか。そうであれば、高市政権の積極財政姿勢は、今後、トランプ政権によって制約を受けるようになり、選挙後には高市政権は積極財政姿勢を修正し、消費税減税を実施しない方向に動くことも考えられる(コラム「【衆院選の焦点①】米当局は高市積極財政への懸念を強めているか」、2026年1月27日)。

いずれにせよ、日米による為替政策の調整は、衆院選での論点の一つに浮上してきている。

プロフィール

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    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。