対米投資計画の第1号案件が決定
トランプ米大統領は17日に、5,500億ドルの日本の対米投資計画の第1号案件を決めたことを明らかにした(コラム「対米投資計画の第1号案件が決定へ:第2のレアアースと警戒される人工ダイヤも候補に」、2026年2月13日)。天然ガス発電と原油輸出の施設建設、半導体などに使われる人工ダイヤモンドの製造能力構築の3事業であり、計360億ドル規模となる。これは計画全体の6.5%に達する。
赤澤経産相が12日に米ワシントンでラトニック米商務長官と会談した際には、合意は先送りされた。その時点ではソフトバンクグループが主導するデータセンター向けエネルギープロジェクト、メキシコ湾の深海石油ターミナル、半導体向け人工ダイヤモンドの3つの候補が報じられていた。最終的にはこれら3つの候補を絞り込まず、合わせて第1号案件にしたように見える。
商務省によると、米中西部オハイオ州の天然ガス発電施設は出力9.2ギガワットで史上最大規模となる。電力供給能力を拡大して、米製造業の競争力を高める狙いがある。原油の輸出施設は南部テキサス州に設け、米国の原油輸出を年200~300億ドル増やすことを目指す。人工ダイヤモンドについて商務省は、合成工業用ダイヤモンドの製造能力を米国に整備し、米国のすべての需要を国内でまかなえるようにするとした。
赤澤経産相が12日に米ワシントンでラトニック米商務長官と会談した際には、合意は先送りされた。その時点ではソフトバンクグループが主導するデータセンター向けエネルギープロジェクト、メキシコ湾の深海石油ターミナル、半導体向け人工ダイヤモンドの3つの候補が報じられていた。最終的にはこれら3つの候補を絞り込まず、合わせて第1号案件にしたように見える。
商務省によると、米中西部オハイオ州の天然ガス発電施設は出力9.2ギガワットで史上最大規模となる。電力供給能力を拡大して、米製造業の競争力を高める狙いがある。原油の輸出施設は南部テキサス州に設け、米国の原油輸出を年200~300億ドル増やすことを目指す。人工ダイヤモンドについて商務省は、合成工業用ダイヤモンドの製造能力を米国に整備し、米国のすべての需要を国内でまかなえるようにするとした。
日本にとってのメリットは不透明
問題は、こうした案件が米国の製造業の競争力や米国の経済安全保障政策の強化に資するものである一方、日本にとってのメリットが明確でないことだ。
対米投資計画の対象となる分野は、日米政府が交わした「了解覚書(MOU)」の中で、半導体、医薬品、重要鉱物、造船、エネルギー、AI、量子などの「経済安全保障上重要な分野」と明記された。経済安全保障政策では日米が強く連携していることを前提に、米国経済・企業の利益は日本の利益になるとの考えであった。しかし実際には、日本にとってのメリットが明確でない点が大きな問題である。3つの事業のうち人工ダイヤのみが、日本の経済安全保障に関係する。日本も人工ダイヤの調達を、レアアースと同様に中国に依存しているためだ。しかし、米国で製造される人工ダイヤが優先的に日本に供給されるかどうかは明らかではない。
投資案件は、ラトニック商務長官を議長とする投資委員会が提案し、トランプ大統領が最終的に決定する仕組みである。国際協力銀行(JBIC)などの日本の政府系金融機関が出資、融資、融資保証で投資を支援するが、日本は金を出し、実際に投資を決めるのは米国政府であり、さらに投資も米国企業が主体になるという不平等で理不尽な枠組みだ。
対米投資計画の対象となる分野は、日米政府が交わした「了解覚書(MOU)」の中で、半導体、医薬品、重要鉱物、造船、エネルギー、AI、量子などの「経済安全保障上重要な分野」と明記された。経済安全保障政策では日米が強く連携していることを前提に、米国経済・企業の利益は日本の利益になるとの考えであった。しかし実際には、日本にとってのメリットが明確でない点が大きな問題である。3つの事業のうち人工ダイヤのみが、日本の経済安全保障に関係する。日本も人工ダイヤの調達を、レアアースと同様に中国に依存しているためだ。しかし、米国で製造される人工ダイヤが優先的に日本に供給されるかどうかは明らかではない。
投資案件は、ラトニック商務長官を議長とする投資委員会が提案し、トランプ大統領が最終的に決定する仕組みである。国際協力銀行(JBIC)などの日本の政府系金融機関が出資、融資、融資保証で投資を支援するが、日本は金を出し、実際に投資を決めるのは米国政府であり、さらに投資も米国企業が主体になるという不平等で理不尽な枠組みだ。
トランプ政権は関税を巡る米最高裁の判決の前に第1号案件の決定を急いだか
日本政府は、3月中旬に予定されている高市首相の訪米までに第1号案件を決定し、日米首脳会談が円滑に進むようにしたいと考えていた。他方、第1号案件の決定をより急いでいたのは、トランプ政権側だった可能性がある。
早ければ2月20日にも、米最高裁は相互関税などの合法性の判断を示す。仮に違法判決となれば、相互関税は廃止になる。
トランプ政権は、相互関税の税率を引き下げることへの交換条件として日本やその他の国に対米投資を約束させたため、相互関税が廃止になれば、対米投資計画がその有効性を失ってしまう恐れがある。
そこでトランプ政権は、相互関税などについての最高裁の判断が出される前に、日本との間で投資計画の第1号案件をまとめ上げ、各国の対米投資計画が後戻りしないように図った可能性もある。
(参考資料)
「日本の対米投資第1号決定―エネ、重要鉱物の3事業」、2026年2月18日、共同通信ニュース
早ければ2月20日にも、米最高裁は相互関税などの合法性の判断を示す。仮に違法判決となれば、相互関税は廃止になる。
トランプ政権は、相互関税の税率を引き下げることへの交換条件として日本やその他の国に対米投資を約束させたため、相互関税が廃止になれば、対米投資計画がその有効性を失ってしまう恐れがある。
そこでトランプ政権は、相互関税などについての最高裁の判断が出される前に、日本との間で投資計画の第1号案件をまとめ上げ、各国の対米投資計画が後戻りしないように図った可能性もある。
(参考資料)
「日本の対米投資第1号決定―エネ、重要鉱物の3事業」、2026年2月18日、共同通信ニュース
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。