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自民党は予算審議の短縮を検討

18日に特別国会が召集された。会期は7月17日までの150日間となる。この特別国会では、衆院選の実施で審議が遅れた2026年度予算案の可決、成立が最大の課題となる。高市首相は年度内成立を目指す考えを示しているが、実際にはそれはかなり難しい情勢だ。
 
近年の例では、当初予算審議は合計で150時間程度かそれ以上であり、2か月程度をかけている。今回は衆院選のため、審議の開始が約1か月遅れる。
 
衆院で自民党が歴史的大勝を遂げたことで、自民党は予算委員長のポストを野党から取り戻す。その結果、予算審議を自民党主導で進めることが可能となっている。そうした追い風を利用して、質疑時間の削減や一部審議を予算成立後に先送りするなどの案が自民党内で検討されている。
 
これに、中道連合の小川代表は難色を示している。自民党は予算編成の遅れから国民生活に支障を出さないように、年度内の成立を目指す。しかし、十分な審議を行わずに年度内成立を優先させれば、国民の税金が政府活動に有効かつ適切に使われているかをチェックするという国会に求められる重要な機能が十分に果たされないことになってしまう。
 
自民党が一部野党の反対を押し切ってでも予算審議の短縮を進めるかどうかは、歴史的大勝後に自民党が数で押し切る国会運営をするのか、それとも野党との丁寧な協議を重視するのかを見極める、重要な試金石となるのではないか。
 
それでも、参院では与党が過半数の議席を得ていない状況であることを踏まえると、予算審議の短縮化には限界があり、年度内の予算成立は難しい。5月の大型連休前の予算成立が、政府・与党の事実上の目標なのではないか。

暫定予算編成での与野党の協力

他方、予算成立の遅れによる国民生活への悪影響を考慮するのであれば、暫定予算に工夫をすることで、一定程度対応できるだろう。1か月程度の本予算成立の遅れを想定して暫定予算を編成するのであれば、9兆円強の予算規模になると推測される。それは、後に成立する本予算に吸収される(コラム「衆院解散と暫定予算」、2026年1月14日)。
 
暫定予算は「行政の空白を防ぐ」ことが目的であるため、新しい政策や事業は盛り込まれないのが通例である。暫定予算に含まれる主な項目は、主に以下の4点に限定される。
 
1)経常的経費:人件費、事務費など、政府機関の通常運営に必要な費用
2)継続事業費:既に進行中の公共事業や契約に関する支出
3)最低限の社会保障費:年金、医療、福祉など国民生活に不可欠な支出
4)国債費:国債の利払いなど、債務履行に関する費用
 
ただしこれ以外であっても、国民生活にとって必要な新規の政策について、野党が賛成すれば暫定予算に含めることは可能だろう。与党の求めに応じて安易に新規の政策を暫定予算に盛り込むことに協力すれば、やはり国会が求められる機能が果たされないことになってしまう。しかし野党に異論がない政策であれば、それは問題ないのではないか。新規の政策ではあるが、所得制限を完全撤廃する高校授業料の無償化などがそうした例となるだろう。
 
特別国会での当初予算の編成と暫定予算の編成では、衆院選で歴史的大勝を収めた与党が数の力で押し切るような国家運営を行うかどうかの試金石になるとともに、衆院選で勢力図が大きく変わった与野党が、国民生活最優先の立場からどの程度協調して政策を進めることができるかを測る試金石ともなるだろう。

プロフィール

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    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。