高市政権からは金融市場に配慮する発言
2月25日の衆院本会議で国民民主党の玉木代表は、政府の国債管理政策を透明化する必要があるとした上で、米財務省借入諮問委員会(TBAC)を例に挙げ、市場参加者を入れた専門的な助言機関の創設を提案した。
これに対し高市首相は、国債市場特別参加者会合や国債投資家懇談会の開催を通じて「市場関係者との緊密な対話に努めている」と指摘し、既存の枠組みを活用して、市場のニーズを踏まえた安定的な国債発行に万全を期す考えを示した。
高市首相は20日の施政方針演説で「野放図な財政政策をとるわけではない」とも強調し、市場の信認を確保する考えを語った。このように最近、高市政権からは金融市場に配慮する発言が目立つようになったと感じる。
それ以前は、例えば2025年12月10日の衆院予算委員会での答弁で高市首相は、財政の悪化懸念を映した長期金利の上昇について質問された際に、「長期金利が上がり続けていくというようなことよりも」と発言し、「金融市場を軽視しているのではないか」との批判を受けた。
これに対し高市首相は、国債市場特別参加者会合や国債投資家懇談会の開催を通じて「市場関係者との緊密な対話に努めている」と指摘し、既存の枠組みを活用して、市場のニーズを踏まえた安定的な国債発行に万全を期す考えを示した。
高市首相は20日の施政方針演説で「野放図な財政政策をとるわけではない」とも強調し、市場の信認を確保する考えを語った。このように最近、高市政権からは金融市場に配慮する発言が目立つようになったと感じる。
それ以前は、例えば2025年12月10日の衆院予算委員会での答弁で高市首相は、財政の悪化懸念を映した長期金利の上昇について質問された際に、「長期金利が上がり続けていくというようなことよりも」と発言し、「金融市場を軽視しているのではないか」との批判を受けた。
長期金利の急上昇が転機に
1月19日の夜、高市首相は記者会見で、1月23日の通常国会冒頭での衆院解散と食料品の消費税率を2年間ゼロにする考えを示した。これを受けて翌20日には国債市場で長期金利が大幅に上昇し、10年国債の金利は2.3%台、40年国債の金利は4.2%台にまで急上昇した。こうした金融市場の混乱を受けて、高市政権は市場の安定に配慮した情報発信を強化していったとみられる。
同日20日のダボス会議で片山財務大臣は、高市政権の「責任ある積極財政」について、積極財政とは無制限な財政拡張ではないとし、成長の実現と財政の持続可能性を同時に達成することを目指すと説明した。また、金融市場に対して日本は財政規律を維持していると発信していると述べた。
ダボス会議に参加していたベッセント米財務長官は、日本国債市場での売り(利回り上昇)が米国債市場にも波及したとの見方を示したうえで、「日本側から市場を落ち着かせる発言が出てくると確信している」と述べた。これは、高市政権に対して、金融市場の安定に努めるようにトランプ政権が圧力をかけたということではないか。
同日20日のダボス会議で片山財務大臣は、高市政権の「責任ある積極財政」について、積極財政とは無制限な財政拡張ではないとし、成長の実現と財政の持続可能性を同時に達成することを目指すと説明した。また、金融市場に対して日本は財政規律を維持していると発信していると述べた。
ダボス会議に参加していたベッセント米財務長官は、日本国債市場での売り(利回り上昇)が米国債市場にも波及したとの見方を示したうえで、「日本側から市場を落ち着かせる発言が出てくると確信している」と述べた。これは、高市政権に対して、金融市場の安定に努めるようにトランプ政権が圧力をかけたということではないか。
日本の金融市場の混乱が米国市場に波及することを警戒したトランプ政権
さらに、1月23日には日本銀行の金融政策決定会合後に為替市場で一時1ドル159円台まで円安が進んだことを受け、政府の委託で日本銀行がレートチェックを行い、ニューヨーク市場では米連邦準備制度理事会(FRB)もレートチェックを行った。この際には、日本側の要請に米国が応え、為替市場の安定に向けた日米の協調策が講じられたとの見方も広がった。しかしニューヨーク市場でのレートチェックは、ベッセント財務長官が主導したものと、後に日本経済新聞は報じている。
つまり、米国は円安阻止に向けて日本に協力した訳ではなく、あくまでも米国の利益のために動いたのである。それは、日本での円安とそれに連動した債券安が米国に波及して、米国経済に悪影響を与えるドル高と債券安をもたらすことを遮断したかったのである。
そうした行動は、金融市場を安定させられない高市政権に対する批判の意味もあったのではないか。これは筆者が指摘していた点でもある(コラム「【衆院選の焦点①】米当局は高市積極財政への懸念を強めているか」、2026年1月27日)。
つまり、米国は円安阻止に向けて日本に協力した訳ではなく、あくまでも米国の利益のために動いたのである。それは、日本での円安とそれに連動した債券安が米国に波及して、米国経済に悪影響を与えるドル高と債券安をもたらすことを遮断したかったのである。
そうした行動は、金融市場を安定させられない高市政権に対する批判の意味もあったのではないか。これは筆者が指摘していた点でもある(コラム「【衆院選の焦点①】米当局は高市積極財政への懸念を強めているか」、2026年1月27日)。
市場の財政懸念は最悪期を脱したか
このように、高市政権は財政悪化を懸念して動揺した金融市場と、それを強く警戒するトランプ政権の圧力を受けて、金融市場の安定に配慮する発言を強化していったとみられる。
高市政権の「責任ある積極財政」の具体的な中身は未だ不明確であり、金融市場の財政懸念は解消されていない。しかし、高市政権が金融市場からの信認確保、金融市場の安定に配慮することを明言していることで、極端な積極財政はとられないとの見方が金融市場では浮上している。これが、衆院選で自民党が歴史的な勝利を収めた後、予想外に長期金利が下がった主因だろう。
こうした点から長期金利は1月でピークを付けたことが考えられる。ただし、10年国債の金利にはなお数十ベーシスポイントの財政リスクプレミアムが乗った状態と考えられ、これが解消するまでには時間がかかるだろう。
高市政権の「責任ある積極財政」の具体的な中身は未だ不明確であり、金融市場の財政懸念は解消されていない。しかし、高市政権が金融市場からの信認確保、金融市場の安定に配慮することを明言していることで、極端な積極財政はとられないとの見方が金融市場では浮上している。これが、衆院選で自民党が歴史的な勝利を収めた後、予想外に長期金利が下がった主因だろう。
こうした点から長期金利は1月でピークを付けたことが考えられる。ただし、10年国債の金利にはなお数十ベーシスポイントの財政リスクプレミアムが乗った状態と考えられ、これが解消するまでには時間がかかるだろう。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。