代替関税は10%から15%に引き上げへ
トランプ米政権は2月24日に、米連邦最高裁が違憲の判決を下し失効した国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく相互関税の代わりに、1974年通商法122条に基づく10%の代替関税を発動した。これは、すべての国、地域に一律に適用された。さらに、トランプ大統領は関税率を15%に引き上げる考えを示した。
ベッセント財務長官は3月4日に、早ければ週内にも関税率を15%に引き上げる考えを示している。しかしそれは一律ではなく、米通商代表部(USTR)のグリア代表は、一部の国、地域に15%が適用される可能性を示唆した(コラム「トランプ新関税15%への引き上げ対象国は一部か」、2026年2月27日)。ブルームバーグ通信は、欧州連合(EU)は15%への引き上げの対象から外れると報じている。
訪米中の赤澤経済産業相は6日にラトニック米商務長官と会談し、日本に対しても15%への引き上げを回避するように要請した。それに対する米国側の回答は明らかになっていない。
代替関税のもとでは、日本が米国に輸出する一部の品目については、相互関税率よりも高い関税率がかけられている。日本への相互関税は、もともとの税率が15%未満の品目は一律15%とし、15%以上の場合は、相互関税を上乗せせずに税率を維持する取り決めとなっていた。10%の代替関税は相互関税導入前の関税率に10%が上乗せされるため、15%以上の水準に引き上げられた品目もある。それは牛肉などだ。
赤澤大臣は、代替関税のもとでも同様の取り決めが適用されるように、ラトニック米商務長官に要請したとみられる。
ベッセント財務長官は3月4日に、早ければ週内にも関税率を15%に引き上げる考えを示している。しかしそれは一律ではなく、米通商代表部(USTR)のグリア代表は、一部の国、地域に15%が適用される可能性を示唆した(コラム「トランプ新関税15%への引き上げ対象国は一部か」、2026年2月27日)。ブルームバーグ通信は、欧州連合(EU)は15%への引き上げの対象から外れると報じている。
訪米中の赤澤経済産業相は6日にラトニック米商務長官と会談し、日本に対しても15%への引き上げを回避するように要請した。それに対する米国側の回答は明らかになっていない。
代替関税のもとでは、日本が米国に輸出する一部の品目については、相互関税率よりも高い関税率がかけられている。日本への相互関税は、もともとの税率が15%未満の品目は一律15%とし、15%以上の場合は、相互関税を上乗せせずに税率を維持する取り決めとなっていた。10%の代替関税は相互関税導入前の関税率に10%が上乗せされるため、15%以上の水準に引き上げられた品目もある。それは牛肉などだ。
赤澤大臣は、代替関税のもとでも同様の取り決めが適用されるように、ラトニック米商務長官に要請したとみられる。
150日以内の通商法301条に基づく関税への移行に不確実性
トランプ政権は、通商法122条に基づく代替関税を150日以内に通商法301条に基づく恒久的な関税措置に移行させる考えだ。それは、失効した相互関税と同様の枠組みになるという。
通商法122条に基づく関税は、固定相場制時代の遺物ともされる仕組みだ。通商法122条は、深刻な国際収支の危機が発生して米国が通貨防衛を迫られた際に、150日間の限定で最大15%の関税を発動することを認めている。延長には議会の承認が必要であるが、与党共和党が僅差で過半数の議席を持つ現在の議会では、延長は認められない可能性が高い。
そこでトランプ政権は、150日間のうちに通商法301条に基づく制裁関税に移行し、恒久的な関税とする考えだ。通商法301条は、相手国の不公正な貿易慣行に対して、米国が一方的に報復関税を課す権限を大統領に与えるものだ。ただし、それには事前に不公正な貿易慣行が行われているかなどをUSTRが調査する必要がある。対象がすべての国、地域のすべての品目となれば、それを150日間で完了することは無理だろう。いい加減な調査で済ませるか、あるいは関税の対象品目の範囲が限定されることが予想される。
通商法122条に基づく関税は、固定相場制時代の遺物ともされる仕組みだ。通商法122条は、深刻な国際収支の危機が発生して米国が通貨防衛を迫られた際に、150日間の限定で最大15%の関税を発動することを認めている。延長には議会の承認が必要であるが、与党共和党が僅差で過半数の議席を持つ現在の議会では、延長は認められない可能性が高い。
そこでトランプ政権は、150日間のうちに通商法301条に基づく制裁関税に移行し、恒久的な関税とする考えだ。通商法301条は、相手国の不公正な貿易慣行に対して、米国が一方的に報復関税を課す権限を大統領に与えるものだ。ただし、それには事前に不公正な貿易慣行が行われているかなどをUSTRが調査する必要がある。対象がすべての国、地域のすべての品目となれば、それを150日間で完了することは無理だろう。いい加減な調査で済ませるか、あるいは関税の対象品目の範囲が限定されることが予想される。
代替関税について24州が提訴:トランプ関税は「司法の壁」に阻まれる
相互関税失効後の通商法122条に基づく代替関税について、野党・民主党の地盤であるオレゴン、アリゾナ、カリフォルニア州など24州は3月5日に、この代替関税は法律上の発動要件を満たさず違法だとして、差し止めと関税の払い戻しを求めて国際貿易裁判所に提訴した。
相互関税と同様に、この代替関税も違法判決によって失効する可能性がある。実際には、裁判所の判決が下される前に、通商法301条に基づく新たな関税へと移行することをトランプ政権は目指しているだろう。
トランプ政権は、IEEPAを根拠とする相互関税や通商法122条に基づく代替関税と比較して、通商法301条に基づく新たな関税は、法的な安定性が高いと考えている。
通商法301条は、トランプ第1次政権時に、中国に対する制裁関税を課す際の根拠法に用いられてきた。ベッセント財務長官は、「(通商法301条に基づく制裁関税は)4千件以上の法的異議申し立てを生き抜いてきた」として、関税の法的な安定性は増すとの見方を示している。
しかし、最高裁がIEEPAを根拠とする相互関税に違憲判決を下した際に、議会の承認を経ずに大統領の権限だけで関税を決めることが違憲との判断を示している。この判例に基づけば、トランプ政権が繰り出す新たな関税措置は、ことごとく裁判で違法判断が下されていく可能性が出てきたのではないか。
このように、トランプ関税は「司法の壁」に阻まれつつある。これに、関税による物価高への不満という「世論の壁」が加わることで、トランプ関税はこの先縮小方向で見直されていくことが避けられないのではないか。
(参考資料)
「トランプ代替関税、15%への引き上げ回避要請 赤沢経産相」、2026年3月7日、日本経済新聞電子版
「日米閣僚、投資巡り再会談―代替関税の意向確認も」、2026年3月7日、共同通信ニュース
「トランプ代替関税でも訴訟 オレゴンなど24州、徴収停止を要求」、2026年3月6日、日本経済新聞電子版
相互関税と同様に、この代替関税も違法判決によって失効する可能性がある。実際には、裁判所の判決が下される前に、通商法301条に基づく新たな関税へと移行することをトランプ政権は目指しているだろう。
トランプ政権は、IEEPAを根拠とする相互関税や通商法122条に基づく代替関税と比較して、通商法301条に基づく新たな関税は、法的な安定性が高いと考えている。
通商法301条は、トランプ第1次政権時に、中国に対する制裁関税を課す際の根拠法に用いられてきた。ベッセント財務長官は、「(通商法301条に基づく制裁関税は)4千件以上の法的異議申し立てを生き抜いてきた」として、関税の法的な安定性は増すとの見方を示している。
しかし、最高裁がIEEPAを根拠とする相互関税に違憲判決を下した際に、議会の承認を経ずに大統領の権限だけで関税を決めることが違憲との判断を示している。この判例に基づけば、トランプ政権が繰り出す新たな関税措置は、ことごとく裁判で違法判断が下されていく可能性が出てきたのではないか。
このように、トランプ関税は「司法の壁」に阻まれつつある。これに、関税による物価高への不満という「世論の壁」が加わることで、トランプ関税はこの先縮小方向で見直されていくことが避けられないのではないか。
(参考資料)
「トランプ代替関税、15%への引き上げ回避要請 赤沢経産相」、2026年3月7日、日本経済新聞電子版
「日米閣僚、投資巡り再会談―代替関税の意向確認も」、2026年3月7日、共同通信ニュース
「トランプ代替関税でも訴訟 オレゴンなど24州、徴収停止を要求」、2026年3月6日、日本経済新聞電子版
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。