G7石油備蓄の共同放出量は、世界の原油消費量の4日分に満たない規模か
3月9日に原油価格は高騰し、WTI原油先物価格は一時1バレル120ドル近くまで上昇した。これを受けて、日経平均株価は一時4,200円を超える大幅下落となった。しかしその後、原油価格は一時80ドル台前半まで大幅に下落した。その結果、10日の日経平均株価は上昇に転じ、9日の円安、株安、債券安のトリプル安は10日には円高、株高、債券高のトリプル高となった。
原油価格が下落に転じるきっかけとなったのは、G7が9日の緊急会合で石油備蓄の共同放出を協議するとのニュースが報道されたことだ。実際G7は、「備蓄放出などを通じた世界的なエネルギー供給の支援を含め、必要な措置を講じる用意がある」と説明した。しかし、G7議長国を務めるフランスは、現時点では備蓄放出を取りまとめる段階にはまだ至っていない、と説明している。
G7の石油備蓄量は、約35億バレル~約39.2億バレルと考えられる(コラム「原油価格が一時120ドルに接近:G7が石油備蓄の共同放出を検討」、2026年3月9日)。石油備蓄の目的は、原油価格の上昇を抑えるためではなく、原油の調達が困難になるような緊急事態の際に企業に原油を供給し、経済活動を維持することにある。この点から、G7が石油備蓄の共同放出を行うとしても、わずかな量にとどめるのではないか。実際米国は、最大で4億バレルの共同放出を支持している、とCNBCは報じている。4億バレルは、G7の石油備蓄量の1割程度である。
他方、IEAのOil Market Reportによると、世界の原油消費量は日量102~103百万バレルである。4億バレルは世界の原油消費量の4日分に満たない。この点から、G7の共同石油備蓄の放出によって、世界の原油需給バランスに大きな影響を与えることはできないだろう。
G7が石油備蓄の共同放出を行うとしても、それが原油価格を押し下げる効果は一時的でしかなく、時間稼ぎの政策と位置付けられるだろう。
原油価格が下落に転じるきっかけとなったのは、G7が9日の緊急会合で石油備蓄の共同放出を協議するとのニュースが報道されたことだ。実際G7は、「備蓄放出などを通じた世界的なエネルギー供給の支援を含め、必要な措置を講じる用意がある」と説明した。しかし、G7議長国を務めるフランスは、現時点では備蓄放出を取りまとめる段階にはまだ至っていない、と説明している。
G7の石油備蓄量は、約35億バレル~約39.2億バレルと考えられる(コラム「原油価格が一時120ドルに接近:G7が石油備蓄の共同放出を検討」、2026年3月9日)。石油備蓄の目的は、原油価格の上昇を抑えるためではなく、原油の調達が困難になるような緊急事態の際に企業に原油を供給し、経済活動を維持することにある。この点から、G7が石油備蓄の共同放出を行うとしても、わずかな量にとどめるのではないか。実際米国は、最大で4億バレルの共同放出を支持している、とCNBCは報じている。4億バレルは、G7の石油備蓄量の1割程度である。
他方、IEAのOil Market Reportによると、世界の原油消費量は日量102~103百万バレルである。4億バレルは世界の原油消費量の4日分に満たない。この点から、G7の共同石油備蓄の放出によって、世界の原油需給バランスに大きな影響を与えることはできないだろう。
G7が石油備蓄の共同放出を行うとしても、それが原油価格を押し下げる効果は一時的でしかなく、時間稼ぎの政策と位置付けられるだろう。
トランプ大統領が原油市場に口先介入か
一方、トランプ大統領は9日に、対イラン戦争は「ほぼ完全に、ほぼ完了している」とし、「ごく短期に」終結するとの見通しを示し、これも原油価格の下落を後押しした。前日までトランプ大統領は、対イラン戦争は4~5週間、あるいはそれ以上長期化するとの見通しや、戦闘の長期化を決定的にする地上軍を展開させる可能性にも言及していた。
トランプ大統領の発言が1日にして変わったのは、9日の原油価格の急騰を受けたものだろう。それまでは、原油価格の上昇はイランの核の脅威を排除するために「支払う代償としてはごく小さいものだ」として、原油価格の上昇を容認する姿勢を見せていた。しかし、1バレル120ドルに接近するほどの原油価格高騰に直面して、トランプ大統領は懸念を強め、原油価格の上昇を抑えるための口先介入を始めたと見られる。
しかしトランプ大統領の発言内容は一貫性を欠いており、対イラン戦争がごく短期に終結するとの見通しを述べる一方で、「われわれはさらに前進する」と、米国の関与が長期的に続く可能性も示唆しており、発言は混乱しているようにも聞こえる。
少なくともトランプ大統領は、戦闘を早期に終結させる具体的なプランを現時点では持っていない可能性が高い。そうであれば、原油価格の下落も一時的に終わりやすい。
米国内でガソリン価格上昇やイラン戦争の長期化、米兵の犠牲などが続けば、米国民は戦争への批判を強めるだろう。それがトランプ大統領に戦争終結と原油価格の安定に向けた具体的な行動を強いることに、いずれはなるだろう。しかし現状ではなおその局面には至っておらず、トランプ大統領の今回の発言も原油市場へのリップサービスの域を出ていないのではないか。
1バレル120ドル近くから80ドル台前半まで9日に一気に下落したWTI原油先物価格は、10日には再び90ドル台まで上昇し、先週末の水準にまで戻っている。イランを巡る事態に変化が見られなければ、原油供給の支障が長期化するとの見通しが強まり、原油価格は上昇しやすい。近いうちに、1バレル100ドル台に再び達する可能性もあるのではないか。
トランプ大統領の発言が1日にして変わったのは、9日の原油価格の急騰を受けたものだろう。それまでは、原油価格の上昇はイランの核の脅威を排除するために「支払う代償としてはごく小さいものだ」として、原油価格の上昇を容認する姿勢を見せていた。しかし、1バレル120ドルに接近するほどの原油価格高騰に直面して、トランプ大統領は懸念を強め、原油価格の上昇を抑えるための口先介入を始めたと見られる。
しかしトランプ大統領の発言内容は一貫性を欠いており、対イラン戦争がごく短期に終結するとの見通しを述べる一方で、「われわれはさらに前進する」と、米国の関与が長期的に続く可能性も示唆しており、発言は混乱しているようにも聞こえる。
少なくともトランプ大統領は、戦闘を早期に終結させる具体的なプランを現時点では持っていない可能性が高い。そうであれば、原油価格の下落も一時的に終わりやすい。
米国内でガソリン価格上昇やイラン戦争の長期化、米兵の犠牲などが続けば、米国民は戦争への批判を強めるだろう。それがトランプ大統領に戦争終結と原油価格の安定に向けた具体的な行動を強いることに、いずれはなるだろう。しかし現状ではなおその局面には至っておらず、トランプ大統領の今回の発言も原油市場へのリップサービスの域を出ていないのではないか。
1バレル120ドル近くから80ドル台前半まで9日に一気に下落したWTI原油先物価格は、10日には再び90ドル台まで上昇し、先週末の水準にまで戻っている。イランを巡る事態に変化が見られなければ、原油供給の支障が長期化するとの見通しが強まり、原油価格は上昇しやすい。近いうちに、1バレル100ドル台に再び達する可能性もあるのではないか。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。