トランプ大統領は「大規模な軍事作戦の縮小を検討」と発言
19日の日米首脳会談を日本は無難に乗り切った形であるが、イラン情勢と原油市場に与える影響はほとんどないだろう。
トランプ大統領は20日に、「中東での大規模な軍事作戦の縮小を検討していて、目標達成に非常に近づいている」と投稿した。この発言が戦争終結に向けたトランプ大統領の意志を示しているのかは明らかではない。
一方、ロイター通信は20日に、トランプ政権が対イラン軍事作戦に関し、約2,500人の海兵隊部隊や米海軍の強襲揚陸艦「ボクサー」など複数の艦艇を中東地域に追加派遣すると報じており、トランプ大統領の「軍事作戦の縮小を検討」との発言と矛盾している。
また、トランプ大統領は、「ホルムズ海峡は、必要に応じて海峡を利用する国々によって警備・監視されなければならない。アメリカはそうしない!」とも述べた。欧州諸国や日本、中国、韓国などが、ホルムズ海峡での船舶の安定航行のために艦船などを派遣するのに否定的なことに反発した発言とみられる。この発言からは、トランプ政権が従来示唆していた、ホルムズ海峡を運行する船舶を米軍が援護するとの考えを放棄したようにも見える。そうであれば、ホルムズ海峡を通じた原油供給が正常化する見通しは後退し、原油価格の上昇をもたらすことになるだろう。
仮にトランプ政権が軍事作戦を縮小しても、米国、イスラエル、イランが完全な停戦、終戦で合意しない限り、軍事攻撃のリスクが残る中ではホルムズ海峡を通じた原油供給は回復しない。
さらにトランプ大統領は、48時間以内にイランがホルムズ海峡を完全に開放しなければ、イランの発電所を攻撃するとした。これにイランは強く反発しており、事態は一段と悪化する可能性もある。
トランプ大統領は20日に、「中東での大規模な軍事作戦の縮小を検討していて、目標達成に非常に近づいている」と投稿した。この発言が戦争終結に向けたトランプ大統領の意志を示しているのかは明らかではない。
一方、ロイター通信は20日に、トランプ政権が対イラン軍事作戦に関し、約2,500人の海兵隊部隊や米海軍の強襲揚陸艦「ボクサー」など複数の艦艇を中東地域に追加派遣すると報じており、トランプ大統領の「軍事作戦の縮小を検討」との発言と矛盾している。
また、トランプ大統領は、「ホルムズ海峡は、必要に応じて海峡を利用する国々によって警備・監視されなければならない。アメリカはそうしない!」とも述べた。欧州諸国や日本、中国、韓国などが、ホルムズ海峡での船舶の安定航行のために艦船などを派遣するのに否定的なことに反発した発言とみられる。この発言からは、トランプ政権が従来示唆していた、ホルムズ海峡を運行する船舶を米軍が援護するとの考えを放棄したようにも見える。そうであれば、ホルムズ海峡を通じた原油供給が正常化する見通しは後退し、原油価格の上昇をもたらすことになるだろう。
仮にトランプ政権が軍事作戦を縮小しても、米国、イスラエル、イランが完全な停戦、終戦で合意しない限り、軍事攻撃のリスクが残る中ではホルムズ海峡を通じた原油供給は回復しない。
さらにトランプ大統領は、48時間以内にイランがホルムズ海峡を完全に開放しなければ、イランの発電所を攻撃するとした。これにイランは強く反発しており、事態は一段と悪化する可能性もある。
日本とイランが交渉開始との報道も
イランのアラグチ外相が20日、共同通信の電話インタビューに応じ、日本側との協議を経て日本船舶のホルムズ海峡の通過を認める用意があるとし、封鎖の一時解除に向け既に日本側と協議に入ったと述べた。
仮に日本の船舶のホルムズ海峡の通過が再開しても、通行全体が正常化しない限り、原油価格は安定しない。それによる日本経済や国民生活への悪影響は続く。それでも、原油がなくなってしまうとの不安は大きく緩和されることから、経済の安定には貢献するだろう。
ただし、日本の船舶のホルムズ海峡の通過が再開できるかどうかは予断を許さない。今までもイランは、インドや中国の船舶のホルムズ海峡の航行を許可してきたとされる。それは、それらの国々が米国側に立っていないという前提だ。
しかし日本は米国の同盟国であることから、仮にイラン政府が許可しても、ホルムズ海峡の軍事的な封鎖を行っているイラン革命防衛隊がそれを許すかどうかは疑問だ。イラン革命防衛隊が日本の船舶のホルムズ海峡通過を明確に許可しない限り、日本の船舶の安全は確保されず、通過の再開は難しいだろう。
他方で、日本がイラン政府から日本船舶のホルムズ海峡の通過を認められた場合には、トランプ政権と日本政府との関係が悪化してしまう恐れもある。日本の船舶のホルムズ海峡の通過再開のめどはなお立っていないと見るべきだろう。
仮に日本の船舶のホルムズ海峡の通過が再開しても、通行全体が正常化しない限り、原油価格は安定しない。それによる日本経済や国民生活への悪影響は続く。それでも、原油がなくなってしまうとの不安は大きく緩和されることから、経済の安定には貢献するだろう。
ただし、日本の船舶のホルムズ海峡の通過が再開できるかどうかは予断を許さない。今までもイランは、インドや中国の船舶のホルムズ海峡の航行を許可してきたとされる。それは、それらの国々が米国側に立っていないという前提だ。
しかし日本は米国の同盟国であることから、仮にイラン政府が許可しても、ホルムズ海峡の軍事的な封鎖を行っているイラン革命防衛隊がそれを許すかどうかは疑問だ。イラン革命防衛隊が日本の船舶のホルムズ海峡通過を明確に許可しない限り、日本の船舶の安全は確保されず、通過の再開は難しいだろう。
他方で、日本がイラン政府から日本船舶のホルムズ海峡の通過を認められた場合には、トランプ政権と日本政府との関係が悪化してしまう恐れもある。日本の船舶のホルムズ海峡の通過再開のめどはなお立っていないと見るべきだろう。
タカ派的な日本銀行の情報発信が株価の大幅下落に
日本銀行は、19日の金融政策決定会合後の総裁記者会見で、中東情勢の緊迫化を受けても追加利上げに向けた基本的な姿勢は変わらないことを示した。市場の事前予想よりもややタカ派の情報発信となった。
しかしこうした情報発信は、高市政権によって利上げが封じ込められてしまうことへの日本銀行の警戒と反発を表しているとともに、1ドル160円目前まで迫った円安を阻止する狙いがあったと考えられる(コラム「日銀総裁記者会見:市場の利上げ期待を通じて円安阻止を狙ったか」、2026年3月19日)。
実際、そうした戦略は功を奏し、1ドル160円を超える円安は回避できた。一方、日本銀行のタカ派的な情報発信は、株価を押し下げた。19日の東京市場で、日経平均株価は終値5万3,300円台となり、前日比1,800円を超える大幅安となった。さらに、海外市場では、日本銀行の利上げ懸念とイラン情勢への懸念から、日経平均先物の下落には歯止めがかかっていない。日経平均先物価格は2,000円程度の大幅下落の状態であり、週明け23日の東京市場では日経平均株価は5万1,000円を巡る攻防となる可能性がある。
日本銀行のタカ派的な情報発信は、円安を阻止することには成功したが、株価を大きく押し下げるなど、金融市場の安定を犠牲にしてしまった。株価の大幅下落が続けば、日本銀行は金融市場の安定のために、利上げ先送りのハト派の情報発信に転じる可能性が出てくる。しかしそれは円安を後押ししてしまうだろう。
日本銀行の情報発信は、円安阻止と金融市場の安定という2つの目標に板挟みされる状況に陥ってしまった。
(参考資料)
「日本船の通過「認める用意」 ホルムズ海峡巡りイラン外相」、2026年3月21日、共同通信
しかしこうした情報発信は、高市政権によって利上げが封じ込められてしまうことへの日本銀行の警戒と反発を表しているとともに、1ドル160円目前まで迫った円安を阻止する狙いがあったと考えられる(コラム「日銀総裁記者会見:市場の利上げ期待を通じて円安阻止を狙ったか」、2026年3月19日)。
実際、そうした戦略は功を奏し、1ドル160円を超える円安は回避できた。一方、日本銀行のタカ派的な情報発信は、株価を押し下げた。19日の東京市場で、日経平均株価は終値5万3,300円台となり、前日比1,800円を超える大幅安となった。さらに、海外市場では、日本銀行の利上げ懸念とイラン情勢への懸念から、日経平均先物の下落には歯止めがかかっていない。日経平均先物価格は2,000円程度の大幅下落の状態であり、週明け23日の東京市場では日経平均株価は5万1,000円を巡る攻防となる可能性がある。
日本銀行のタカ派的な情報発信は、円安を阻止することには成功したが、株価を大きく押し下げるなど、金融市場の安定を犠牲にしてしまった。株価の大幅下落が続けば、日本銀行は金融市場の安定のために、利上げ先送りのハト派の情報発信に転じる可能性が出てくる。しかしそれは円安を後押ししてしまうだろう。
日本銀行の情報発信は、円安阻止と金融市場の安定という2つの目標に板挟みされる状況に陥ってしまった。
(参考資料)
「日本船の通過「認める用意」 ホルムズ海峡巡りイラン外相」、2026年3月21日、共同通信
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。