ガソリン補助金の予算を8,000億円追加へ
政府は3月19日にガソリン補助金を開始した。ガソリン補助金は、レギュラーガソリンの全国平均価格のうち170円(1リットル当たり、以下同様)を超える部分について補助を行うものだ。軽油、重油、灯油についても同額の補助を行う。また、航空燃料についてはガソリン補助額の4割程度の補助を行う。
その予算としては補助金の基金の残り2,800億円が充てられているが、新たに2025年度予算の予備費約8,000億円が追加される。予備費の残高は8,100億円程度であり、そのほぼすべてを活用することになる。政府は24日にも閣議決定する見通しだ。
この予算の追加を通じて、政府は原油価格高騰と補助金制度の長期化に備える。また、予算が枯渇することで補助金が早期に打ち切られるとの個人、企業の不安を緩和する狙いもあるだろう。
政府は2022年1月にガソリン補助金制度を開始し、ガソリンの暫定税率廃止とともに2025年末に制度を一度終了していた。過去約4年間で合計8兆1,719億円の予算を計上した。今回の追加分を加えると、累計9兆円前後に膨らむ見通しだ。
資源エネルギー庁によると、3月16日時点のレギュラーガソリンの全国平均価格は190.8円と、前週の161.8円から急激に上昇した。資源エネルギー庁は19日~25日の1週間のガソリンの店頭価格を200円20銭と見積もり、170円との差額である30.2円の補助金を決めた。
補助金の予算は、新たに8,000億円を加えて1兆800億円となる。ガソリンの1日当たりの消費量は約1.2億リットルと見られ、ガソリンに対して30円の補助金を出すと、1日の補助金額は36億円となる。これは、2,800億円の予算では78日、8,000億円を新たに追加した1兆800億円を加えると300日続けることができる計算となる。
ただし、この計算はガソリンへの補助金だけの場合であり、実際には軽油、重油、灯油、航空燃料にも補助金が使われる。政府は、ガソリンの30円分補助する場合、1か月の補助金総額は約3,000億円になると試算している。これは、1日の補助金が約100億円であり、補助金の対象となる燃料が1日当たり3.33億リットル程度であるとの計算だ。
その予算としては補助金の基金の残り2,800億円が充てられているが、新たに2025年度予算の予備費約8,000億円が追加される。予備費の残高は8,100億円程度であり、そのほぼすべてを活用することになる。政府は24日にも閣議決定する見通しだ。
この予算の追加を通じて、政府は原油価格高騰と補助金制度の長期化に備える。また、予算が枯渇することで補助金が早期に打ち切られるとの個人、企業の不安を緩和する狙いもあるだろう。
政府は2022年1月にガソリン補助金制度を開始し、ガソリンの暫定税率廃止とともに2025年末に制度を一度終了していた。過去約4年間で合計8兆1,719億円の予算を計上した。今回の追加分を加えると、累計9兆円前後に膨らむ見通しだ。
資源エネルギー庁によると、3月16日時点のレギュラーガソリンの全国平均価格は190.8円と、前週の161.8円から急激に上昇した。資源エネルギー庁は19日~25日の1週間のガソリンの店頭価格を200円20銭と見積もり、170円との差額である30.2円の補助金を決めた。
補助金の予算は、新たに8,000億円を加えて1兆800億円となる。ガソリンの1日当たりの消費量は約1.2億リットルと見られ、ガソリンに対して30円の補助金を出すと、1日の補助金額は36億円となる。これは、2,800億円の予算では78日、8,000億円を新たに追加した1兆800億円を加えると300日続けることができる計算となる。
ただし、この計算はガソリンへの補助金だけの場合であり、実際には軽油、重油、灯油、航空燃料にも補助金が使われる。政府は、ガソリンの30円分補助する場合、1か月の補助金総額は約3,000億円になると試算している。これは、1日の補助金が約100億円であり、補助金の対象となる燃料が1日当たり3.33億リットル程度であるとの計算だ。
3つのシナリオでシミュレーション
これらの点を踏まえ、以下では3つのシナリオのもと、合計1兆800億円の補助金の予算がいつ枯渇するのかについてシミュレーションを行った。
政府は今月末から1か月分の政府の原油備蓄を放出する。その価格は、前月の産油国での公定価格の平均水準と定められている。そのため、イラン情勢が悪化する前の安い原油価格が石油精製業者に販売される。安価な政府の原油備蓄を用いてガソリンなどを精製すると、補助金が必要なくなる可能性がある。
ただし、元売り業者のガソリン卸価格の設定は複雑であり、不確実性が高い。そこで、以下のシミュレーションでは、政府の原油備蓄放出によって補助金が発生しないのは、楽観シナリオの4月分のみとした。
第1の楽観シナリオは、3月に政府の補助金が30円、4月は政府の原油備蓄放出によってゼロ円、5月は20円、6月以降は10円とした。これは、海外の原油価格が次第に低下していくことを前提としている。
第2の標準シナリオは、補助金が30円で先行き一定であることを前提にした。
第3の悲観シナリオは、3月の補助金が30円、4月は40円、5月以降は50円と増加していくことを想定した。これは、海外の原油価格が上昇していくことが前提である(図表1)。
政府は今月末から1か月分の政府の原油備蓄を放出する。その価格は、前月の産油国での公定価格の平均水準と定められている。そのため、イラン情勢が悪化する前の安い原油価格が石油精製業者に販売される。安価な政府の原油備蓄を用いてガソリンなどを精製すると、補助金が必要なくなる可能性がある。
ただし、元売り業者のガソリン卸価格の設定は複雑であり、不確実性が高い。そこで、以下のシミュレーションでは、政府の原油備蓄放出によって補助金が発生しないのは、楽観シナリオの4月分のみとした。
第1の楽観シナリオは、3月に政府の補助金が30円、4月は政府の原油備蓄放出によってゼロ円、5月は20円、6月以降は10円とした。これは、海外の原油価格が次第に低下していくことを前提としている。
第2の標準シナリオは、補助金が30円で先行き一定であることを前提にした。
第3の悲観シナリオは、3月の補助金が30円、4月は40円、5月以降は50円と増加していくことを想定した。これは、海外の原油価格が上昇していくことが前提である(図表1)。
図表1 ガソリン補助金のシミュレーションの前提

図表2 ガソリン補助金の予算枯渇シミュレーション


図表2 ガソリン補助金の予算枯渇シミュレーション

標準シナリオでは7月初め、悲観シナリオでは6月初めに補助金の予算は枯渇
以上の前提の下でシミュレーションを行うと、新たに8,000億円を追加する1兆800億円の予算は、標準シナリオでは7月4日、悲観シナリオでは6月2日に使い果たされる計算となる。一方、楽観シナリオでは、来年の1月上旬まで予算は持つ計算だ。
仮に1兆800億円の予算を使い果たしても、2026年度予算の予備費や2026年度補正予算によって追加の予算を確保することは可能である。
しかし、現在の補助金制度を長期間続けることは問題だ。第1の問題は財政を圧迫することであり、それが金融市場の財政悪化懸念を高めれば、円安が進み、燃料を含む価格の上昇が引き起こされる。
第2の問題は、化石燃料消費の効率化と脱炭素の取り組みに水を差してしまうことだ。中東情勢の緊迫化と原油価格高騰が続く中、企業や国民は、燃料や電気の消費を抑制、節約するような行動変容が求められている。しかし、補助金によってガソリン価格が比較的低位に抑えられれば、ガソリン車の利用は減らず、また、EV車への切り替えなども進まなくなる。これは、化石燃料消費の効率化と脱炭素の取り組みの妨げとなってしまう。
このような点を踏まえると、原油価格高騰が2か月以上続く場合には、補助金を縮小する方向で見直しが図られる可能性があるだろう(コラム「下落を始めたガソリン価格とガソリン補助金の課題」、2026年3月23日)。
(参考資料)
「ガソリン補助に8000億円―政府が予備費で、24日にも決定」、2026年3月23日、共同通信ニュース
仮に1兆800億円の予算を使い果たしても、2026年度予算の予備費や2026年度補正予算によって追加の予算を確保することは可能である。
しかし、現在の補助金制度を長期間続けることは問題だ。第1の問題は財政を圧迫することであり、それが金融市場の財政悪化懸念を高めれば、円安が進み、燃料を含む価格の上昇が引き起こされる。
第2の問題は、化石燃料消費の効率化と脱炭素の取り組みに水を差してしまうことだ。中東情勢の緊迫化と原油価格高騰が続く中、企業や国民は、燃料や電気の消費を抑制、節約するような行動変容が求められている。しかし、補助金によってガソリン価格が比較的低位に抑えられれば、ガソリン車の利用は減らず、また、EV車への切り替えなども進まなくなる。これは、化石燃料消費の効率化と脱炭素の取り組みの妨げとなってしまう。
このような点を踏まえると、原油価格高騰が2か月以上続く場合には、補助金を縮小する方向で見直しが図られる可能性があるだろう(コラム「下落を始めたガソリン価格とガソリン補助金の課題」、2026年3月23日)。
(参考資料)
「ガソリン補助に8000億円―政府が予備費で、24日にも決定」、2026年3月23日、共同通信ニュース
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。