&N 未来創発ラボ

野村総合研究所と
今を語り、未来をみつめるメディア

原油価格の高騰と品不足の双方で日用品の価格は顕著に上昇へ

日本はナフサの約4割を国内で原油から精製し、約6割を海外から輸入している。原油、ナフサともにホルムズ海峡を経由して輸入される割合が高いことから、ナフサの不足への懸念が一気に高まっている。ナフサの国内在庫は約20日分しかないとされる。
 
ナフサからエチレンが作られ、それがレジ袋・ゴミ袋、食品ラップ・包装フィルム、洗剤・シャンプーボトル、ペットボトル、化学繊維、ポリ容器、接着剤、塗料、医療用品など様々な日用品となる。
 
エチレンを生産する企業は、原料となるナフサの不足から生産停止に追い込まれることを避けるために、既にエチレンの減産に動いている。国内のエチレン設備の多くが減産している状況だという。
 
そのため、エチレン由来の日用品の一部では、品不足を反映した小売価格の上昇が見られ始めている。原油価格の上昇の影響を試算した日用品の価格上昇と比べて、品不足が加わった価格の上昇幅は格段に大きくなるケースが見られる点に留意したい(コラム「生活に忍び寄る原油価格上昇による物価高:個別の日用品、食料品の価格上昇を推定」、2026年3月6日)。
 
また、原油価格上昇時には、日用品や食料品への価格転嫁は数か月から半年程度をかけて緩やかに進むのが通例であるが、原油価格の上昇と品不足の双方を背景とする今回の日用品の価格上昇は、より大きな幅で、またより早く表面化する可能性が高い。

ゴミ袋・食品保存袋、食品トレーの価格上昇

各種報道などを総合すると、ゴミ袋・食品保存袋などのポリエチレン製品は、2026年5月下旬から30%以上の値上げが見込まれている。日本サニパックは、ゴミ袋・保存袋など全製品について従来価格比で30%以上の価格改定を発表した。現在数百円台後半の45Lゴミ袋(50枚入り)は、1パックあたり100~200円程度の上昇が見込まれる。消耗品で代替しにくいため、値上げされやすい。
 
食品トレーなどに使われる発泡ポリスチレンシート(エチレン由来)は、2026年4月下旬出荷分から1kgあたり120円の値上げが見込まれている。これは、食品スーパーでの弁当・総菜・カップ麺などの価格上昇につながるとみられる。
 
さらに、日本触媒などが酸化エチレン(EO)系およびEO誘導品を90円/kg以上値上げすると発表している。それは、洗剤・シャンプー・ボディソープ、不凍液、PETボトル、医療用材料の価格上昇につながるものだ。

家計負担は年間1.8万円から2.6万円程度にも

以下では4人家族で、エチレン由来の日用品の価格上昇がどの程度家計の負担になるかを、様々な前提の下で試算した(図表)。家計の年間負担額は合計で1万8,000円~2万5,500円と試算される。価格上昇と家計への負担は4月から順次生じることが見込まれる。
 
これに、ガソリンなどの燃料費、電気・ガス代などの負担増が加わることで、家計の負担感はかなり高まる。
 
図表 エチレン由来製品の価格上昇と家計負担(4人家族)の試算値

プロフィール

  • 木内 登英のポートレート

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。