4月13日に開かれた信託大会で、氷見野日本銀行副総裁は、植田総裁の挨拶原稿を代読した。このテキストでは、「これまでのところ、わが国の経済・物価は、私どもの『展望レポート』で示してきた見通しに概ね沿って推移」とし、引き続き利上げの方針を維持していることを改めて確認した。
ただしそのうえで、「中東情勢の緊迫化を受けて、国際金融市場では不安定な動きがみられるほか、原油価格も大幅に上昇しており、今後の動向には注意が必要」とした。
原油価格上昇の経済への影響については、「原油価格の上昇は、交易条件の悪化を通じて景気を下押しする要因となるほか、中東情勢の緊迫が長期化した場合には、サプライチェーンへの影響を通じて、企業の生産活動に下押し圧力がかかるリスクもあります」と、経済へのマイナスの影響を強調している。
原油価格の上昇の物価への影響については、「短期的にエネルギー価格等を押し上げると考えられますが、基調的な物価上昇率に対しては、上下双方向に作用する可能性があります。景気に下押し圧力がかかり、需給ギャップが悪化すれば、基調的な物価上昇率を下押しする可能性があります」と述べ、基調的な物価上昇率を押し下げる可能性にも言及した。
物価については、「原油価格の上昇が、人々の中長期の予想物価上昇率の上昇につながれば、基調的な物価上昇率の押し上げに作用すると考えられます。ここ数年、企業の賃金・価格設定行動が積極化しているなかにあって、こうした物価上昇のメカニズムが過去に比べて強まっている可能性があることにも留意が必要です」として、一方で、警戒的なトーンも滲ませた。全体としては、物価については両論併記の形となった。
しかし、3月19日の前回の記者会見での総裁の発言と比べると、中東情勢の緊迫化を受けて経済への下振れリスクに対する言及が明らかに目立っていると考える(コラム「日銀総裁記者会見:市場の利上げ期待を通じて円安阻止を狙ったか」、2026年3月19日)。
そして挨拶の最後には、前回の会合では利上げの方針を維持したと述べたうえで、「今後は、中東情勢がなお不透明な状況にあることを踏まえ、その帰趨や、それが経済・物価・金融情勢に及ぼす影響を注視しつつ、経済・物価の中心的な見通しが実現する確度やリスクを点検していきたいと考えています」と締めている。
これは、前回の会合以降、中東情勢の緊迫化を受けて、経済・物価の中心的な見通しが実現する確度が低下し、リスクが上昇している可能性があることを示唆しているように読める。
今回の講演は、4月27・28日の金融政策決定会合で、中東情勢緊迫化の影響を見極めるために、日本銀行が様子見姿勢を取り、利上げを見送る判断をする可能性があることを示唆していると感じられる。
利上げ見送りのメッセージとしては今回のテキストはなお十分に明確でないことから、日本銀行は実際に利上げを見送る場合には、金融政策決定会合前にメディア報道を通じた形などで、より明確な追加のメッセージを送るだろう。市場では引き続き次回会合での利上げの見通しが有力であるが、原油価格上昇や石油製品供給への不安から、日本は未曾有のリスクを先行き抱えており、日本銀行は利上げを見送るのが自然であると、筆者は考えている。
ただしそのうえで、「中東情勢の緊迫化を受けて、国際金融市場では不安定な動きがみられるほか、原油価格も大幅に上昇しており、今後の動向には注意が必要」とした。
原油価格上昇の経済への影響については、「原油価格の上昇は、交易条件の悪化を通じて景気を下押しする要因となるほか、中東情勢の緊迫が長期化した場合には、サプライチェーンへの影響を通じて、企業の生産活動に下押し圧力がかかるリスクもあります」と、経済へのマイナスの影響を強調している。
原油価格の上昇の物価への影響については、「短期的にエネルギー価格等を押し上げると考えられますが、基調的な物価上昇率に対しては、上下双方向に作用する可能性があります。景気に下押し圧力がかかり、需給ギャップが悪化すれば、基調的な物価上昇率を下押しする可能性があります」と述べ、基調的な物価上昇率を押し下げる可能性にも言及した。
物価については、「原油価格の上昇が、人々の中長期の予想物価上昇率の上昇につながれば、基調的な物価上昇率の押し上げに作用すると考えられます。ここ数年、企業の賃金・価格設定行動が積極化しているなかにあって、こうした物価上昇のメカニズムが過去に比べて強まっている可能性があることにも留意が必要です」として、一方で、警戒的なトーンも滲ませた。全体としては、物価については両論併記の形となった。
しかし、3月19日の前回の記者会見での総裁の発言と比べると、中東情勢の緊迫化を受けて経済への下振れリスクに対する言及が明らかに目立っていると考える(コラム「日銀総裁記者会見:市場の利上げ期待を通じて円安阻止を狙ったか」、2026年3月19日)。
そして挨拶の最後には、前回の会合では利上げの方針を維持したと述べたうえで、「今後は、中東情勢がなお不透明な状況にあることを踏まえ、その帰趨や、それが経済・物価・金融情勢に及ぼす影響を注視しつつ、経済・物価の中心的な見通しが実現する確度やリスクを点検していきたいと考えています」と締めている。
これは、前回の会合以降、中東情勢の緊迫化を受けて、経済・物価の中心的な見通しが実現する確度が低下し、リスクが上昇している可能性があることを示唆しているように読める。
今回の講演は、4月27・28日の金融政策決定会合で、中東情勢緊迫化の影響を見極めるために、日本銀行が様子見姿勢を取り、利上げを見送る判断をする可能性があることを示唆していると感じられる。
利上げ見送りのメッセージとしては今回のテキストはなお十分に明確でないことから、日本銀行は実際に利上げを見送る場合には、金融政策決定会合前にメディア報道を通じた形などで、より明確な追加のメッセージを送るだろう。市場では引き続き次回会合での利上げの見通しが有力であるが、原油価格上昇や石油製品供給への不安から、日本は未曾有のリスクを先行き抱えており、日本銀行は利上げを見送るのが自然であると、筆者は考えている。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。