好調な20年国債の入札後に長期金利は低下
4月14日に実施された20年国債の入札では、応札倍率(応札額÷落札額)は4.82倍と過去1年間の平均値3.27倍や前回の3.25倍を上回り、投資家の需要の強さを裏付けた。この応札倍率は2019年以来の水準である。
20年国債の入札が好結果であったことを受けて、14日の長期債利回りは顕著に低下した。20年国債の利回りは0.1%ポイント弱低下した。10年国債利回りも0.05%ポイント程度低下した。
20年国債の需要を高め、長期金利の低下を促した要因の一つは、4月27・28日の日本銀行の金融政策決定会合で、日本銀行が昨年12月以来の追加利上げに踏み切るとの観測が後退したことだ。
前日の植田総裁の講演では、利上げに向けた基本的な方針が変わらないことは強調されたが、一方で、イラン情勢の影響から金融市場が不安定となり、景気が下振れるリスクや原油価格の上昇が基調的な物価上昇率を下振れさせるリスクについて言及されるなど、踏み込んだ発言となった(コラム「植田総裁の講演は、イラン情勢の経済への影響により警戒的:利上げ見送りの地均しの可能性も」、2026年4月13日)。
20年国債の入札が好結果であったことを受けて、14日の長期債利回りは顕著に低下した。20年国債の利回りは0.1%ポイント弱低下した。10年国債利回りも0.05%ポイント程度低下した。
20年国債の需要を高め、長期金利の低下を促した要因の一つは、4月27・28日の日本銀行の金融政策決定会合で、日本銀行が昨年12月以来の追加利上げに踏み切るとの観測が後退したことだ。
前日の植田総裁の講演では、利上げに向けた基本的な方針が変わらないことは強調されたが、一方で、イラン情勢の影響から金融市場が不安定となり、景気が下振れるリスクや原油価格の上昇が基調的な物価上昇率を下振れさせるリスクについて言及されるなど、踏み込んだ発言となった(コラム「植田総裁の講演は、イラン情勢の経済への影響により警戒的:利上げ見送りの地均しの可能性も」、2026年4月13日)。
後退する日本銀行の4月の利上げ観測
これは、米国とイランの協議が物別れに終わったことと相まって、金融市場の追加利上げ観測を後退させた。OIS市場の金利に基づくブルームバーグの計算によると、日本銀行が28日の金融政策決定会合で利上げに踏み切る確率は、先週末の10日時点の55.3%から13日には33.9%まで低下した。4月1日時点では73.4%であったが、日銀支店長会議での企業の先行きの慎重な見方と、13日の総裁の講演の2段階で、利上げ観測は後退した。
それでもなお3割程度の確率で4月28日の利上げは金融市場に織り込まれている。日本銀行が利上げ見送りを既に決めた場合には、決定会合当日に金融市場が混乱することを避けるために、利上げ観測をもう一段後退させるような追加の情報を発信する可能性があるだろう。それは、メディア報道を通じた形となるのではないか。
それでもなお3割程度の確率で4月28日の利上げは金融市場に織り込まれている。日本銀行が利上げ見送りを既に決めた場合には、決定会合当日に金融市場が混乱することを避けるために、利上げ観測をもう一段後退させるような追加の情報を発信する可能性があるだろう。それは、メディア報道を通じた形となるのではないか。
利上げ観測後退でも円安に振れなかったことが日銀の利上げ見送りの決定を後押し
日本銀行が今回利上げを見送る場合に最も懸念するのは、それが円安と債券安(長期金利の上昇)を後押ししてしまうことだろう。日本銀行の利上げが遅れることで、原油高で後押しされた市場の中長期のインフレ期待が煽られれば、日本銀行の政策対応が後手に回る、いわゆるビハインドザカーブの状態となり、長期金利上昇と円安進行をもたらしてしまう。
しかし、14日の金融市場では、日本銀行の利上げ観測が後退する中で、ドル円レートは1ドル158円台まで円高が進み、クリティカルな水準である1ドル160円から離れた。また、既に述べたように20年国債の入札が好結果であったことにも後押しされ、長期金利は低下した。これらは、日本銀行の利上げ見送りを後押しするものだ。
しかし、14日の金融市場では、日本銀行の利上げ観測が後退する中で、ドル円レートは1ドル158円台まで円高が進み、クリティカルな水準である1ドル160円から離れた。また、既に述べたように20年国債の入札が好結果であったことにも後押しされ、長期金利は低下した。これらは、日本銀行の利上げ見送りを後押しするものだ。
イラン情勢を受けて利上げ見送りは自然
日本銀行は12月に追加利上げを実施しており、その影響を見極めるという観点からは、4月の追加利上げはもともと早すぎるという感がある。しかもイラン情勢は日本経済に甚大な悪影響を及ぼす可能性があり、現時点で利上げを見送り、様子見姿勢をとるのはかなり自然なことだ。
それにも関わらず、最近まで金融市場で4月の利上げ予想が優勢であったのは、政策委員が利上げに前向きであることが「主な意見」で示されたことに加え、前回の3月の決定会合後の記者会見で、植田総裁が、イラン情勢を受けても日本銀行の利上げの方針が変わらないことを強調したことがあるだろう。
こうした総裁の情報発信は、1ドル160円を超えて円安が進むことをけん制する狙いがあったと考えられる。しかし、原油価格の上昇に加えて、国内での石油関連品の減産と供給不足に基づく価格上昇の懸念が広まる中、円安への警戒だけで利上げに踏み切るのはあまりにも不自然だ。
それにも関わらず、最近まで金融市場で4月の利上げ予想が優勢であったのは、政策委員が利上げに前向きであることが「主な意見」で示されたことに加え、前回の3月の決定会合後の記者会見で、植田総裁が、イラン情勢を受けても日本銀行の利上げの方針が変わらないことを強調したことがあるだろう。
こうした総裁の情報発信は、1ドル160円を超えて円安が進むことをけん制する狙いがあったと考えられる。しかし、原油価格の上昇に加えて、国内での石油関連品の減産と供給不足に基づく価格上昇の懸念が広まる中、円安への警戒だけで利上げに踏み切るのはあまりにも不自然だ。
政府のイラン情勢への政策対応との整合性
政府はガソリン補助金の導入に加えて、原油・ナフサの確保などに奔走している。それでも石油関連品の供給不足や価格上昇によって景気の下振れリスクは高まっている。そうした中、政府は日本銀行の利上げには反対であり、それを水面下で伝えている可能性があるのではないか。
日本銀行が今回利上げを見送るのであれば、それはイラン情勢によって景気の下振れリスクが潜在的にはかなり高まる中、政府の経済政策と整合性を意識した協調策という側面もあるだろう。
イラン情勢が好転せず、国内経済の下振れリスクが顕著に高まる場合には、昨年のトランプ関税への対応と同様に、日本銀行が事実上、利上げの一時停止に追い込まれる可能性も考えられる。その場合には、長期金利はもう一段低下することが予想される。
日本銀行が今回利上げを見送るのであれば、それはイラン情勢によって景気の下振れリスクが潜在的にはかなり高まる中、政府の経済政策と整合性を意識した協調策という側面もあるだろう。
イラン情勢が好転せず、国内経済の下振れリスクが顕著に高まる場合には、昨年のトランプ関税への対応と同様に、日本銀行が事実上、利上げの一時停止に追い込まれる可能性も考えられる。その場合には、長期金利はもう一段低下することが予想される。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。