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次期米連邦準備制度理事会(FRB)議長候補のケビン・ウォーシュ(Kevin Warsh)氏が、4月21日(火)午前10時(米東部時間)に議会公聴会に臨む。大統領に指名されたFRB議長候補者が議長に就任するためには、1)上院銀行・住宅・都市問題委員会(Senate Banking Committee)での承認公聴会、2)同委員会での採決、3)上院本会議での過半数承認、の3つのプロセスを経る必要がある。今回の公聴会は、この人事承認プロセスの最初で最重要の関門だ。
 
公聴会では、ウォーシュ氏の金融政策スタンスが最大の注目点となる。足もとの原油価格上昇の影響についての評価、トランプ大統領の利下げ圧力にどう向き合うか、FRBの政治からの独立性を維持できるか、等の質問が出ることが予想される。
 
ウォーシュ氏は最近、AIによる生産性向上が物価上昇率を押し下げるとしている。これを、利下げ余地の根拠とする可能性があるが、そうした発言と、従来の金融緩和に慎重な姿勢、特に量的緩和に否定的な考え方との整合性が問われるだろう(コラム「ウォーシュFRB次期議長のもとでFRBと財務省の新たなアコード(協定):ハト派の金利政策とタカ派のバランスシート政策を両立する離れ技」、2026年2月13日)。
 
米民主党の上院議員らは、ウォーシュ氏が1億ドル超の「未開示」資産を保有していることを問題視している。それ以上に注目されているのは、共和党議員が承認に慎重な姿勢を見せていることだ。上院銀行委員会は共和党議員13人、民主党議員11人で構成されており、共和党議員1人でも反対に回ると、委員会での承認が困難となる。
 
共和党のトム・ティリス上院議員は、「司法省によるパウエル現議長への捜査が解決するまで、FRB人事を承認しない」と明言している。そのため、パウエル議長の任期が終わる5月15日までにウォーシュ氏が上院本会議で承認を得られるかどうかは不確実な情勢となってきた。
 
仮にウォーシュ氏が5月15日までに上院の承認を得られなかった場合、パウエル議長はFRBの7人の理事からなる理事会の「暫定」議長を務めると述べている。パウエル議長はそれが「法律の規定」であり、中央銀行が過去にも実施してきたことだとしている。
 
一方、トランプ大統領は、もしパウエル氏が留任するならば解任するだろうと述べている。しかしそれは、トランプ大統領が昨年夏にFRB理事のリサ・クック氏を解任しようとした際と同じように、法的な異議申し立てを招くこと‌になる。クック氏は大統領の解任を巡って連邦最高裁判所でなお係争中であり、彼女は今でもFRB理事の職にとどまっ⁠ている。
 
ウォーシュ氏の議会承認を巡って、再びトランプ大統領とパウエル議長の対立が表面化しており、FRBの政治的独立が改めて問われる事態となっている。
 
(参考資料)
「焦点:FRB次期議長指名のウォーシュ氏、5月就任は不透明」、2026年4月17日、ロイター通信ニュース

プロフィール

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    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。