ウォーシュ氏はトランプ大統領から利下げを求められていないと発言
米国時間4月21日に米連邦準備制度理事会(FRB)議長候補のケビン・ウォーシュ氏が、上院の公聴会で証言を行った。最大の注目点は、ウォーシュ氏が議長に就任した後、彼を指名したトランプ大統領に配慮して利下げに前向きな政策を実施するかどうかという点だった。
実際には、自身が議長に就任した後の金融政策運営について、ウォーシュ氏は明確な発言を避けた。表面的にはトランプ大統領の影響を受けることはなく、FRBの独立性は維持される、との趣旨の発言を行ったが、これは予想通りであった。実際にFRBの金融政策がどう変わるかについて明確なメッセージはなかったため、金融市場の反応も限定的だった。
民主・共和両党の上院議員からは、指名に際してトランプ大統領から政策金利について確約を求められたかどうかと繰り返し質問を受けた。これに対してウォーシュ氏は、「大統領は、いかなる特定の金利判断についても確約するよう求めたことは一度もない。断言する。仮に求められたとしても私は同意しなかっただろうが、そもそも求められたことはない」と返した。
実際には、自身が議長に就任した後の金融政策運営について、ウォーシュ氏は明確な発言を避けた。表面的にはトランプ大統領の影響を受けることはなく、FRBの独立性は維持される、との趣旨の発言を行ったが、これは予想通りであった。実際にFRBの金融政策がどう変わるかについて明確なメッセージはなかったため、金融市場の反応も限定的だった。
民主・共和両党の上院議員からは、指名に際してトランプ大統領から政策金利について確約を求められたかどうかと繰り返し質問を受けた。これに対してウォーシュ氏は、「大統領は、いかなる特定の金利判断についても確約するよう求めたことは一度もない。断言する。仮に求められたとしても私は同意しなかっただろうが、そもそも求められたことはない」と返した。
それでもウォーシュ氏の金融政策はトランプ大統領の意向を反映か
そのうえでウォーシュ氏は、「どの大統領も金利引き下げを望んでいる。トランプ大統領はそれをより露骨に言っているだけだ」と従来通りの説明を繰り返し、自身が特別に政治圧力に晒されている訳ではないことを強調した。
こうしたウォーシュ氏の発言は予想通りである。仮にトランプ大統領の意向を反映して利下げを進める考えと発言すれば、上院での承認は危うくなる。ウォーシュ氏が議会でこのように発言することは、事前にトランプ大統領と調整済みだったのではないか。利下げを強く望み、さらに、パウエル議長のように自身に強く反発する議長を指名してしまう失敗を2度と繰り返さない、と誓うトランプ大統領に指名されたウォーシュ氏は、やはりトランプ大統領の意向に沿って緩和的な金融政策を行うと見た方が良いだろう。これは、ドル安のリスクを高める。
こうしたウォーシュ氏の発言は予想通りである。仮にトランプ大統領の意向を反映して利下げを進める考えと発言すれば、上院での承認は危うくなる。ウォーシュ氏が議会でこのように発言することは、事前にトランプ大統領と調整済みだったのではないか。利下げを強く望み、さらに、パウエル議長のように自身に強く反発する議長を指名してしまう失敗を2度と繰り返さない、と誓うトランプ大統領に指名されたウォーシュ氏は、やはりトランプ大統領の意向に沿って緩和的な金融政策を行うと見た方が良いだろう。これは、ドル安のリスクを高める。
FRBの金融政策を痛烈に批判
金融政策に関連して、ウォーシュ氏は「AIによる生産性向上が財・サービスの価格を抑制し、FRBが金融緩和を行う余地を生む」と示唆する発言をしてきた。この点も議会証言では問われた。ウォーシュ氏は明確な回答を避けつつも、現在の局面を「現代経済史上、最も破壊的な瞬間」だと述べ、AIによる生産性向上によって物価上昇圧力は抑えられている、との認識を改めて示唆した。この点は、FRB内でウォーシュ氏が、インフレリスクを過大評価すべきでないと主張する際の大きな論点となるだろう。
自身の金融政策姿勢については明確な説明を避けた一方、現在のFRBの金融政策については痛烈な批判を展開した。ウォーシュ氏は、FRBを「道を見失い」、「その権限の範囲を逸脱し」、「自らの選択によって政治に関与している」組織だと酷評した。また、10年以上FRBがコミュニケーション手段として重視してきた金融政策のフォワードガイダンスの慣行を強く批判した。
そのうえで、FRBは経済・物価の安定という使命を果たしていないため信頼を失っており、それがゆえに政治的な思惑が入り込んでくるのは当然のこと、とトランプ大統領のFRBへの政治介入を援護するかのようなニュアンスの発言をしている。
自身の金融政策姿勢については明確な説明を避けた一方、現在のFRBの金融政策については痛烈な批判を展開した。ウォーシュ氏は、FRBを「道を見失い」、「その権限の範囲を逸脱し」、「自らの選択によって政治に関与している」組織だと酷評した。また、10年以上FRBがコミュニケーション手段として重視してきた金融政策のフォワードガイダンスの慣行を強く批判した。
そのうえで、FRBは経済・物価の安定という使命を果たしていないため信頼を失っており、それがゆえに政治的な思惑が入り込んでくるのは当然のこと、とトランプ大統領のFRBへの政治介入を援護するかのようなニュアンスの発言をしている。
ウォーシュ氏の議長承認が遅れて混乱も
今後のFRBの金融政策については、ウォーシュ氏の政策運営に不確実性が残る。また、ウォーシュ氏の指名が遅れることで、FRBの金融政策に空白や混乱が生じる可能性もある(コラム「FRB議長退任直前に再び強まるパウエル議長とトランプ大統領の対立」、2026年4月22日)。
共和党上院議員のトム・ティリス氏は、司法省がFRB本部改築を巡るパウエル議長に対する捜査を取り下げるまで、いかなるFRB理事候補も支持しないと表明している。同氏はウォーシュ氏の議会証言でも、FRB本部改築で工事費が事前見積もりを超過したことは正当な理由によるものであることを主張した。
他方、トランプ大統領は、パウエル議長に対する捜査を取り下げる考えはないとしている。FRBの建設プロジェクトを巡る刑事捜査に関し、トランプ氏とトム・ティリス上院議員(共和、ノースカロライナ州)のどちらが折れなければ、ウォーシュ氏は上院で承認されない。その結果、5月15日以降の議長代行を巡ってトランプ大統領とパウエル議長の激しい対立が生じる可能性があり、それも金融市場の不確実性を高めることになるだろう。
(参考資料)
“Kevin Warsh swearing in before testifying at a Senate Banking Committee confirmation hearing(FRB議長候補ウォーシュ氏、承認公聴会での主な発言)”, Wall Street Journal, April 22, 2026
共和党上院議員のトム・ティリス氏は、司法省がFRB本部改築を巡るパウエル議長に対する捜査を取り下げるまで、いかなるFRB理事候補も支持しないと表明している。同氏はウォーシュ氏の議会証言でも、FRB本部改築で工事費が事前見積もりを超過したことは正当な理由によるものであることを主張した。
他方、トランプ大統領は、パウエル議長に対する捜査を取り下げる考えはないとしている。FRBの建設プロジェクトを巡る刑事捜査に関し、トランプ氏とトム・ティリス上院議員(共和、ノースカロライナ州)のどちらが折れなければ、ウォーシュ氏は上院で承認されない。その結果、5月15日以降の議長代行を巡ってトランプ大統領とパウエル議長の激しい対立が生じる可能性があり、それも金融市場の不確実性を高めることになるだろう。
(参考資料)
“Kevin Warsh swearing in before testifying at a Senate Banking Committee confirmation hearing(FRB議長候補ウォーシュ氏、承認公聴会での主な発言)”, Wall Street Journal, April 22, 2026
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。