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パウエル議長への捜査が打ち切られウォーシュ氏の議長人事が前進へ

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の任期は5月15日で終了するが、後任となるウォーシュ氏は、上院での承認が遅れて5月15日までに就任できない可能性が出ていた。
 
しかし、米司法省がFRB本部改修工事に関するパウエル議長の議会証言に関する捜査を打ち切ったと24日に発表した結果、ウォーシュ氏の承認が進む見通しとなった。
 
本会議に先だち承認に向けた採決が行われる上院銀行委員会では、共和党議員が13人、民主党議員が11人で構成され、民主党議員が反対しても共和党議員がすべて賛成すれば、過半数でウォーシュ氏が承認される。
 
しかし、パウエル議長に対する捜査の不当性を主張し、共和党のトム・ティリス米上院議員が承認に反対していた。彼は、パウエル議長に対する捜査が続く限り、ウォーシュ氏の承認に反対すると主張していた。
 
仮に5月15日までにウォーシュ氏が承認されなければ、パウエル議長が引き続き議長代行を務める構えであり、代行議長職を巡ってトランプ大統領とパウエル議長の間で激しい対立が生じる可能性があった(コラム「FRB議長退任直前に再び強まるパウエル議長とトランプ大統領の対立」、2026年4月22日)。
 
トランプ大統領はパウエル議長に対する捜査の必要性を訴え、ティリス氏とトランプ大統領がどちらも譲らない構図が続いていた。米司法省の捜査打ち切りは、最終的にトランプ大統領が譲歩したことを意味するのではないか。

パウエル議長の去就が注目される

上院銀行委員会は4月29日に指名承認投票を予定している。上院本会議でも承認されれば、5月15日までにウォーシュ氏が次期FRB議長に就任する可能性が出てきた。その場合、4月28・29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)が、パウエル議長が議長として参加する最後のFOMCとなる。
 
注目されるのはパウエル議長の去就である。パウエル議長の任期は5月15日に切れるが、理事としての任期は2028年まで残されている。議長職を終える際に理事職も辞するのが通例であるが、パウエル議長はその態度を明らかにしていない。パウエル議長が理事職も辞せば、その後任にトランプ大統領が自らの息がかかった利下げ推進派を充てる可能性が高い。それはFRBに対する政治介入の強化となる。それを阻止するために、パウエル議長は理事職にとどまる可能性がある。そうなれば、トランプ大統領とパウエル氏の激しい対立が、今後も続くだろう。

FOMC分断のリスクも

さらに、パウエル議長は理事職にとどまる場合には、利下げに慎重なパウエル氏と、トランプ大統領の命を受けて利下げに前向きなウォーシュ氏が、それぞれFOMC内で派閥を形成して反目しあうことも考えられるのではないか。これは金融政策決定に混乱をもたらし、金融市場をかく乱させるだろう。
 
FOMCの分裂ともいえるこうした事態を避けるために、パウエル議長は理事職を辞する可能性も考えられる。4月29日のFOMC後の記者会見で、パウエル議長は今後の去就について質問されるはずであり、その回答は大きな注目点となる。

プロフィール

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    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。