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政策金利据え置きを決めたFOMCで4人が反対

米連邦公開市場委員会(FOMC)は4月28・29日に開いた定例会合で、政策金利の据え置きを決定した。据え置きの決定は3会合連続となる。声明では「中東情勢は経済見通しに関する不確実性の高さにつながっている」とされ、中東情勢の不確実性がより高まっているとの判断が示された。
 
政策金利据え置きの決定は予想通りであったが、予想外だったのは4人の反対が出たことだ。利下げ推進派のミラン理事は0.25ポイントの利下げを主張し、政策金利据え置きに反対票を投じた。
 
他の3人は、FOMCで声明文の文言に異議を唱えた。クリーブランド連銀のハマック総裁、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁、ダラス連銀のローガン総裁は、「FF金利の誘導目標レンジの据え置きは支持したものの、今回の声明に緩和バイアスを含めることを支持しなかった」と説明した。パウエル議長はこの反対意見について、FOMCにおける中心的な見方が「より中立的な方向に移りつつある」という事実を反映していると説明している。
 
この3人の反対と後で述べるパウエル議長の理事職継続の意向から、今回のFOMCを予想よりも「タカ派的」と金融市場は受け止めた。政策金利の見通しを反映する傾向が強い2年債利回りは、一時0.11%上昇して3.95%となった。FOMC政策決定の発表日としては2022年以来の大きな上昇幅である。金融市場では利下げ観測がほぼなくなり、2027年にかけて政策金利の見通しはほぼ横ばいとなった。

パウエル議長は理事職にとどまりFOMCでの金融政策決定に関与を続ける

今回のFOMCで最大の注目点となったのは、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の去就だった。米上院銀行委員会は29日に、トランプ大統領が次期FRB議長に指名したウォーシュ氏を賛成多数で承認した。米司法省がパウエル議長への捜査を打ち切ったことで、同委員会でのウォーシュ氏承認の道が開かれた(コラム「ウォーシュ氏の次期FRB議長人事が前進へ:パウエル議長が議長としての最後のFOMC」、2026年4月28日)。
 
今後上院本会議での承認を経て、ウォーシュ氏はパウエル議長の任期が切れる5月15日までに正式に次期議長に就任する見通しとなった。その場合、パウエル議長が議長として参加するFOMCは、今回が最後となる。
 
パウエル議長の議長としての任期は5月15日に切れるが、理事の任期は2028年1月まで続く。従来、パウエル議長は、FRBを政治介入から守るため、自身への捜査が続く間は理事職にとどまる考えを示していた。捜査は終了したが、パウエル議長はしばらく理事職にとどまる考えを記者会見で明らかにした。
 
パウエル議長は「この捜査が透明性を持ち、真の意味で最終的に完了するまで理事会を離れないと述べてきたが、その考えは変わらない」とした。パウエル議長は、週末に複数の司法省当局者から、FRBの内部監査機関が勧告しない限り刑事捜査を再開しないとの説明を受けたものの、首都ワシントンの連邦検事正が必要に応じて捜査を再開する可能性があることから、当面は理事職にとどまり、「適切だと判断した時点で退任する」と述べた。パウエル議長はFOMCでの金融政策決定に関与を続けることになる。

FOMCが分裂すればドル安と債券安が進むリスク

パウエル議長は「理事としては目立たない形で職務を果たすつもりだ」と述べ、新たに議長に就任するウォーシュ氏との対立を避ける考えを示した。
 
しかし、パウエル議長が理事にとどまり、FOMCへの参加を続ければ、FOMC内に2トップ状態が生まれる可能性がある。トランプ大統領の意向を受けたウォーシュ氏が「ハト派」の議論を主導し、金融緩和重視派がウォーシュ氏のもとに集結する一方、今回、FOMCの文言に反対した3人を中心に、金融緩和慎重派がパウエル氏のもとに集結して、FOMCが分裂する事態になる可能性が出てきたのではないか。
 
ウォーシュ氏が議長に就任しても、現在の経済環境の下では政策金利は当面据え置きが続く可能性が高い。しかしこの先、金融政策を巡って2つのグループを軸に議論が大きく分かれる可能性もある。その場合、FOMCの金融政策は混乱しているとの受け止めから、通貨の信認は低下し、ドル安と債券安が進むリスクがあるだろう。
 
さらに、利下げに慎重なパウエル氏に対してトランプ大統領の激しい攻撃が今後も続き、トランプ大統領が理事職を解任する動きを見せる可能性がある。こうしたFRBへの政治介入も、ドル安と債券安のリスクを高めるだろう。パウエル氏のトランプ大統領との因縁の闘いはなおも続く。
 
(参考資料)
“Divided Fed Officials Hold Rates; Powell to Stay as Governor(FOMCは金利据え置きも亀裂深まる、パウエル氏は理事続投に意欲)”, Bloomberg, April 30, 2026

プロフィール

  • 木内 登英のポートレート

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。