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連休中に一時円高に振れる

祝日のため日本が休場である5月4日の外国為替市場で、午後にドル円レートが1ドル157円台前半から1ドル155円台後半へと、10分程度の間に1円50銭程度円高に振れる局面があった。
 
さらに、5月6日の午後にも、1ドル158円程度から155円程度へ30分程度の間に3円程度円高に振れた。
 
こうした短期間での激しいドル円の変動は、政府による為替介入の実施が疑われる。
特に2回目の円高はそうだ。ドル円の取引量が少なく、為替介入の影響が大きく出やすい連休期間中の7~8日、あるいはそれ以降も政府のドル売り円買い介入が実施されてもおかしくない状況だ。ちなみに2年前は大型連休中に2回の為替介入が実施された。

原油先物市場への介入との合わせ技も

政府は1ドル160円を防衛ラインに定めていると考えられる。4月30日に政府は、この防衛ラインを超えて円安が進むことを回避するために、2024年7月以来のドル売り円買い介入を実施した(コラム「大型連休のはざまにドル売り円買いの為替介入:為替介入は時間稼ぎの政策」、2026年5月1日)。介入は5兆円規模と推測される。
 
また、財務省は、原油先物市場の投機的な動きが円安を生じさせていると指摘しており、為替市場での円買いとともに原油先物市場での原油買いの介入も実施するという異例の対応を今後は見せる可能性もある。異例の対応によって、市場にサプライズを生じさせるとともに、円安阻止に向けた政府の強い意志を示すことで、介入効果を高める狙いがあるだろう。

円安阻止に向けて政府と日本銀行の強い協調は難しいか

日本の外国為替市場の1日の平均取引高は、2025年4月時点で約4,402億ドル(日本銀行発表)、現在のドル円レートで換算すれば約69兆円だ。為替介入の規模はこの1日の取引高と比べれば小さく、為替市場の需給に大きな影響を与えることはできない。
 
しかし、為替介入によって、数週間から長ければ数か月間、円安を一定期間食い止める効果は期待できるだろう。為替介入は「時間を買う」政策であり、時間を稼いでいる間に為替市場を取り巻く環境が変化することを期待する政策だ。
 
他方、政府の為替政策と日本銀行の金融政策が強く協調すれば、為替市場に大きな影響を与えることが可能となる。しかし現状では、政府は円安阻止を望む一方、日本銀行の利上げを望んでいないとみられる。そのため、円安阻止に向けた政府と日本銀行の強い協調は実現しにくい環境だ。
 
足もとで円安が進んだ最大の理由は、イラン情勢と原油価格の高騰である。日本政府は必要に応じて追加のドル売り円買い介入を実施するも決定打を欠く中、イラン情勢と原油市場が安定を取り戻すのを待つ以外にない状況だ。

プロフィール

  • 木内 登英のポートレート

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。