&N 未来創発ラボ

野村総合研究所と
今を語り、未来をみつめるメディア

電気・ガス料金値上げの家計負担増加は年間4万5,720円

原油価格高騰やナフサ不足を受けて、電気・ガス料金、食料品、日用品の価格上昇が予想されている。6月は5月と比べて価格上昇の動きがさらに広がることが予想される。
 
まずは電気・ガス料金について見ると、火力発電の輸入燃料費の変動に合わせて電気・ガス料金を自動で調整する「燃料費調整制度」のもと、1—3月期平均の輸入燃料費の上昇が反映されて、6月に電気・ガス料金は大きく上昇することが見込まれる(コラム「電気・ガス代は6月に大幅値上げが始まる:政府の補助金制度にも注目」、2026年5月1日)。
 
1—3月期の原油価格が前期比で30%上昇したと想定すると、電気料金は6%上昇、ガス料金は7.5%上昇し、2025年4人家族世帯の月額の負担増加は1,317円、3か月で3,951円、年間で1万5,800円(①)になると試算される。電気・ガス料金の大幅値上げは6月から始まる見込みだが、実際に家計に請求されるのは7月からと考えられる。
 
他方、1月から3月まで実施された電気料金の補助金は既に終了し、それが家計の負担となる。昨年11月の総合経済対策で政府は、二人以上世帯の電気・ガス補助金による負担減は3か月間で平均7,300円との試算値を発表した。この補助金がなくなったことによる家計負担は、年間2万9,200円(②)となる(7,300円×4)。
 
さらに経済産業省の発表によれば2026年5月検針分からの2026年度再エネ賦課金は、1kWhあたり4.18円に設定された。これは2025年度の3.98円/kWhから0.20円/kWhの小幅上昇だ。一般的な家庭の電力利用量は300kWh/月と考えられるため、0.20円/kWhの上昇は月額60円、年間720円(③)の家計の負担増加となる。
 
以上、6月からの電気料金引き上げに、再エネ賦課金の引き上げ、補助金制度の終了の影響を加えると、年間4万5,720円(①+②+③)の家計負担が生じる計算となる。
 
ただし実際には、7月から9月の3か月間、政府は電気・ガス料金の補助金を導入することを決定している。その規模は5,000億円程度とされる。1—3月期の電気・ガス料金引き上げによる家計負担増加の推計値である3か月分3,951円は、この補助金5,000億円によって相殺される計算となる。

6月は値上げの動きが広がる

電気・ガス料金以外でも、6月には値上げの動きが一段と広がる。円安による輸入物価上昇、人件費上昇の影響に加えて、原油価格高騰や石油(ナフサ)由来製品の供給不足の影響が製品価格に一段と反映されるためだ。
 
6月の値上げは食料品で最も顕著であるが、その動きを報道ベースで確認すると、カルビーなどのポテトチップスが+約5~10%、ジャガビーが約30%、明星食品のチャルメラ、一平ちゃんなど即席麺が+約6~10%、ドレッシングやタルタルソースが約8~10%、味の素などのインスタントスープが+15~17%、日清オイリオなどの食料油が約11~15%、明治ザバスなどのプロテインが約6~28%値上げ、となっている。
 
食料品以外ではクレハなどの冷凍保存袋が約25~35%、第一三共などの市販薬・保湿ミルクが最大約40%、ミシュランなどのタイヤが3~5%、とそれぞれ値上げが予定されている。

7-9月期が物価上昇率加速のピークか

帝国データバンクによると、2026年6月の食料品の値上げは559品目に及ぶという。これは、5月の61品目から急増となる。ただし、2026年4月の値上げは2,798品目であったことから、それよりは低い水準にとどまっている。
 
値上げは四半期の初めの月、特に4月と10月に実施されることが多い。2025年の4月の値上げ品目数は推定で4,000品目超、10月は3,161品目だった。今年5月、6月の値上げ品目数が4月よりも少ないのは、季節的な要因によるところが大きいとみられる。
 
一方、こうした季節的な要因を超えて、原油価格高騰や石油(ナフサ)由来製品の供給不足の影響が顕著に表れるのはこれからだ。既にその影響は、ごみ袋、包装材、医療器具、シンナーなどに表れ、6月にはタイヤなどにも表れる見込みだ。他方、洗剤、シャンプー、接着剤、塗料、化学繊維の衣料品などの価格上昇が顕著に生じるのは、7月以降となるのではないか。
 
石油(ナフサ)由来製品や食料品の価格上昇率が最も顕著に高まる、つまり物価の加速のピークとなるのは7-9月と見ておきたい。仮に中東情勢が改善して原油価格が低下に転じても、それは変わらないのではないか。原油価格の下落が物価の安定につながるまでには半年程度はかかると考えられ、年内は明確な物価の安定回復は見込みがたいだろう。

プロフィール

  • 木内 登英のポートレート

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。