財源の問題が立ちはだかり、消費税率引き下げに向けたハードルはなお高い
政府内では食料品の消費税率の2年間引き下げをより迅速に実施するため、税率を0%ではなく1%にする方向で議論が進んでいるとされる(コラム「浮上する食料品の消費税率1%案:原油価格高騰と消費税減税の家計への影響を比較」、2026年4月27日)。
ただし、仮に1%までの税率引き下げにするとしても、その実施までにかかる時間を大幅に縮小することは難しいのではないか。レジのシステム改修を早期に対応できる企業もある一方、中小零細企業や独自のレジシステムを導入している企業では、対応に時間がかかる。混乱を回避するためには対応が遅い企業に税率引き下げの時期を合わせる必要があるだろう。そのため、1%までの税率引き下げであっても、法制化から実施までには半年~1年程度を要すると推測される。1%であっても0%であっても、足もとの原油価格高騰に迅速に対応することはできない。そうした物価高対策としての食料品の消費税率引き下げの欠点が浮き彫りになっている。
さらに、消費税率引き下げの財源の議論がほぼ進んでいないことが大きな問題だ。食料品の消費税率を引き下げる場合、0%であれば年間約5兆円、1%であれば年間約4.4兆円の財源が必要となるが、それを確保するのはかなり難しい。高市首相は消費税率の引き下げを赤字国債には頼らないと明言しており、その公約のもとでは財源の問題が立ちはだかり、消費税率引き下げに向けたハードルはなお高い。
ただし、仮に1%までの税率引き下げにするとしても、その実施までにかかる時間を大幅に縮小することは難しいのではないか。レジのシステム改修を早期に対応できる企業もある一方、中小零細企業や独自のレジシステムを導入している企業では、対応に時間がかかる。混乱を回避するためには対応が遅い企業に税率引き下げの時期を合わせる必要があるだろう。そのため、1%までの税率引き下げであっても、法制化から実施までには半年~1年程度を要すると推測される。1%であっても0%であっても、足もとの原油価格高騰に迅速に対応することはできない。そうした物価高対策としての食料品の消費税率引き下げの欠点が浮き彫りになっている。
さらに、消費税率引き下げの財源の議論がほぼ進んでいないことが大きな問題だ。食料品の消費税率を引き下げる場合、0%であれば年間約5兆円、1%であれば年間約4.4兆円の財源が必要となるが、それを確保するのはかなり難しい。高市首相は消費税率の引き下げを赤字国債には頼らないと明言しており、その公約のもとでは財源の問題が立ちはだかり、消費税率引き下げに向けたハードルはなお高い。
給付付き税額控除でも財源の議論は後回し
他方、食料品の消費税率の2年間引き下げと並行して国民会議で議論されているのが、給付付き税額控除だ。27日の国民会議にはその設計についての政府のイメージ案が示される。並行して行われるこの2つの議論には、大きく2つの共通点がある。
第1は、迅速に実施できることを優先した議論となっていることだ。食料品の消費税率引き下げでは0%でなく1%にすることが議論されている。給付付き税額控除制度については、給付のみを行う制度として始められる方向だ。これでは、税と社会保障の一体改革ではなく、単に社会保障改革になってしまう。
第2は、財源の議論が進んでいないことだ。既にみたように食料品の消費税率引き下げの議論は進んでいない。給付付き税額控除制度についても、財源の議論は今のところ素通りされている感がある。
本来は、制度設計、給付増加の予算規模、財源確保の3点を同時に議論し、国民のコンセンサスを取りながら最適解を探すべきだ。
第1は、迅速に実施できることを優先した議論となっていることだ。食料品の消費税率引き下げでは0%でなく1%にすることが議論されている。給付付き税額控除制度については、給付のみを行う制度として始められる方向だ。これでは、税と社会保障の一体改革ではなく、単に社会保障改革になってしまう。
第2は、財源の議論が進んでいないことだ。既にみたように食料品の消費税率引き下げの議論は進んでいない。給付付き税額控除制度についても、財源の議論は今のところ素通りされている感がある。
本来は、制度設計、給付増加の予算規模、財源確保の3点を同時に議論し、国民のコンセンサスを取りながら最適解を探すべきだ。
財源問題を中心になお大きな課題を残す
近年の物価高に、社会保障制度、税制は十分に対応できないことが明らかになった。生活保護などの給付水準を名目金額で定めていることにより、物価高で給付の目減りが生じた。また、所得税の課税最低限や税率区分を名目の所得で定めていることから、物価高で実質増税となっている。
物価高など外部環境の変化に柔軟に対応し、中低所得層の生活を守るためには、社会保障と税の一体改革は必要だ。給付の見直しのみを実施する場合には、低所得層に偏った支援策となってしまうことも懸念されるところだ。インフレによる実質増税を回避する安定した制度にするためには、税制の抜本的見直しも不可欠だ。
さらに、子育て世代への給付を手厚くすることも議論されている。しかし、子育て世帯の所得水準もまちまちであり、高額所得の子育て世帯への給付増額は必要ないだろう。既に岸田政権の下では児童手当の大幅拡充が決定されている。安易に給付額を膨らませることは避けるべきだ。
このように、食料品の消費税率や給付付き税額控除については、財源問題を中心になお大きな課題を残している。夏までの中間とりまとめというスケジュールにしばられて、拙速に決めてしまうことは避けるべきだ。そのうえで、原油価格高騰といった当面の物価高に対する迅速な対応としては、低所得層向けの給付も検討すべきだろう。
物価高など外部環境の変化に柔軟に対応し、中低所得層の生活を守るためには、社会保障と税の一体改革は必要だ。給付の見直しのみを実施する場合には、低所得層に偏った支援策となってしまうことも懸念されるところだ。インフレによる実質増税を回避する安定した制度にするためには、税制の抜本的見直しも不可欠だ。
さらに、子育て世代への給付を手厚くすることも議論されている。しかし、子育て世帯の所得水準もまちまちであり、高額所得の子育て世帯への給付増額は必要ないだろう。既に岸田政権の下では児童手当の大幅拡充が決定されている。安易に給付額を膨らませることは避けるべきだ。
このように、食料品の消費税率や給付付き税額控除については、財源問題を中心になお大きな課題を残している。夏までの中間とりまとめというスケジュールにしばられて、拙速に決めてしまうことは避けるべきだ。そのうえで、原油価格高騰といった当面の物価高に対する迅速な対応としては、低所得層向けの給付も検討すべきだろう。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。