4月29日に財務省は外国為替平衡操作、つまり為替介入の実績を公表した。4月28日から5月27日までのドル売り円買いの為替介入は11兆7,349億円と、月ごとでは過去最大規模となった。
財務省は大型連休中の4月30日に為替介入を行ったとされる。また、5月1日、5月6日にも為替介入が行われた可能性が指摘される。今回公表されたのは1か月間の為替介入規模の合計値のみであり、日次ベースの数字は8月に公表される。
2024年にも大型連休中に2回のドル売り円買いの為替介入が実施されたが、その合計は9.8兆円だった。今回の11兆7,349億円の介入規模は予想をやや上回るものであり、円安阻止に向けた当局の強い姿勢を感じさせる。
政府は、1ドル160円程度を防衛ラインと位置づけ、その水準を防衛するために、4月30日に2024年7月以来となるドル売り円買い介入に踏み切ったとみられる。為替介入を受けてドル円レートは一時1ドル155円台まで円高が進んだが、足もとでは再び159円台まで円安方向に戻っている。ただし、介入実施から1か月近くが経過する中、介入時の水準まで為替の水準が戻っていないのは、今回の介入が一定程度成功していることを意味していよう。
1ドル160円を超えて円安が進むきっかけとなったのは、2月末の中東情勢緊迫化とそれを受けた原油価格の高騰だ。この先も、中東情勢がドル円レートに最も大きな影響を与える要因となるだろう。米国とイランが戦争終結、ホルムズ海峡再開に合意する方向となれば、原油価格は下落し、円安の修正は進むだろう。その際には、当局は1ドル160円程度の防衛ラインをなんとか守り切ったことになる。
その場合、急速な円安進行に起因する食料品などの値上げの動きは先行き弱まっていき、原油価格高騰によるナフサ由来の製品価格上昇が一巡すれば、日本の物価情勢は徐々に安定を取り戻す展開が予想される(コラム「事前予想を下回った5月東京都区部CPI:円安に促された食料品の値上げの動きは弱まり、基調的な物価上昇率は下振れ」、2026年5月29日)。しかし、中東情勢が改善に転じ、原油価格が低下し、円安が修正されるかどうかはまだ分からない。
中東情勢以外に当面のドル円レートに大きな影響を与える可能性があるのは、日本銀行の利上げだ。6月の金融政策決定会合で日本銀行が利上げ見送りを決めれば、それをきっかけに円安が進み、政府が再びドル売り円買いの為替介入に動く可能性があるだろう。
他方、6月の金融政策決定会合前に中東情勢が改善すれば、円高が進む。その場合には、日本銀行の利上げ見送りが円安に拍車をかける心配がなくなることから、政府は6月の金融政策決定会合での利上げ阻止に向けて水面下での圧力を一段と強める可能性がある。
一方でその場合には、経済の下振れリスクが低下することから、日本銀行執行部は利上げに傾く可能性がある。このように、中東情勢に大きな影響を受けながら、利上げの是非を巡って、政府と日本銀行との間で激しい対立が生じる可能性が出てくるだろう。
財務省は大型連休中の4月30日に為替介入を行ったとされる。また、5月1日、5月6日にも為替介入が行われた可能性が指摘される。今回公表されたのは1か月間の為替介入規模の合計値のみであり、日次ベースの数字は8月に公表される。
2024年にも大型連休中に2回のドル売り円買いの為替介入が実施されたが、その合計は9.8兆円だった。今回の11兆7,349億円の介入規模は予想をやや上回るものであり、円安阻止に向けた当局の強い姿勢を感じさせる。
政府は、1ドル160円程度を防衛ラインと位置づけ、その水準を防衛するために、4月30日に2024年7月以来となるドル売り円買い介入に踏み切ったとみられる。為替介入を受けてドル円レートは一時1ドル155円台まで円高が進んだが、足もとでは再び159円台まで円安方向に戻っている。ただし、介入実施から1か月近くが経過する中、介入時の水準まで為替の水準が戻っていないのは、今回の介入が一定程度成功していることを意味していよう。
1ドル160円を超えて円安が進むきっかけとなったのは、2月末の中東情勢緊迫化とそれを受けた原油価格の高騰だ。この先も、中東情勢がドル円レートに最も大きな影響を与える要因となるだろう。米国とイランが戦争終結、ホルムズ海峡再開に合意する方向となれば、原油価格は下落し、円安の修正は進むだろう。その際には、当局は1ドル160円程度の防衛ラインをなんとか守り切ったことになる。
その場合、急速な円安進行に起因する食料品などの値上げの動きは先行き弱まっていき、原油価格高騰によるナフサ由来の製品価格上昇が一巡すれば、日本の物価情勢は徐々に安定を取り戻す展開が予想される(コラム「事前予想を下回った5月東京都区部CPI:円安に促された食料品の値上げの動きは弱まり、基調的な物価上昇率は下振れ」、2026年5月29日)。しかし、中東情勢が改善に転じ、原油価格が低下し、円安が修正されるかどうかはまだ分からない。
中東情勢以外に当面のドル円レートに大きな影響を与える可能性があるのは、日本銀行の利上げだ。6月の金融政策決定会合で日本銀行が利上げ見送りを決めれば、それをきっかけに円安が進み、政府が再びドル売り円買いの為替介入に動く可能性があるだろう。
他方、6月の金融政策決定会合前に中東情勢が改善すれば、円高が進む。その場合には、日本銀行の利上げ見送りが円安に拍車をかける心配がなくなることから、政府は6月の金融政策決定会合での利上げ阻止に向けて水面下での圧力を一段と強める可能性がある。
一方でその場合には、経済の下振れリスクが低下することから、日本銀行執行部は利上げに傾く可能性がある。このように、中東情勢に大きな影響を受けながら、利上げの是非を巡って、政府と日本銀行との間で激しい対立が生じる可能性が出てくるだろう。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。