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2026年度補正予算案の閣議決定

政府は6月4日以降のガソリン補助金を1リットル当たり33.3円と発表した。前週の37.2円に続いて2週連続での30円台となった。ただし、現在確保しているガソリン補助金の予算は、6月下旬には使い果たすことが予想される(コラム「ガソリン補助金の予算枯渇シミュレーション:追加予算と制度見直しの議論」、2026年5月28日)。
 
そこで政府は、補正予算の編成を通じてガソリン補助金の追加予算を手当てする。政府は6月3日に2026年度補正予算案を閣議決定し、国会に提出した。一般会計の総額は3兆1,135億円となる。
 
補正予算案は3つの項目からなる。第1に、ガソリン補助金の継続など中東情勢対応の予備費を創設し、2兆5,000億円を充てる。第2に、7~9月の電気・ガス代の負担を1家庭あたり5,000円程度減らす。それに必要な財源を2026年度当初予算の一般予備費から賄うが、その予備費の減少分を補正予算で充当する。金額は5,135億円である。
 
第3に、「重点支援地方交付金」向けに1,000億円を計上し、LPガス代の補助などに充てられるようにする。
 
ガソリン補助金については、予算を圧迫するという観点を踏まえて、自民党内から縮小方向での見直しを求める声が強まっている。しかし、現段階ではどのように見直すかは決まっていないのだろう。
 
3日に政府は、4月のガソリン補助金の支出が約3,100億円になったと発表した。ただし、5月分は5,000億円程度に達したと試算される。現在のガソリン補助金制度がそのまま継続するもとで月間5,000億円程度の支出が続く場合、中東情勢対応の予備費に充てられた2兆5,000億円で、5か月分のガソリン補助金の追加予算を賄う計算となる。
 
仮に補助金制度の見直しで支出が半減すれば、2兆5,000億円の予算で10か月程度、つまり今年度いっぱいの予算を確保できる計算となる。自民党内で補助金制度の見直しを求める声が強まっていることを踏まえれば、政府も早晩、見直しを決めるのではないか。

ガソリン補助金の制度見直しを

現在のガソリン補助金をそのまま継続することは財政環境を悪化させ、金融市場では長期金利の上昇や円安などの反応を引き起こしている面がある。補正予算で、ガソリン補助金の追加予算を手当てするのであれば、同時にガソリン補助金を縮小させる方向で見直しを実施すべきだ。
 
現在のガソリン補助金をそのまま続けることの問題は、財政への影響だけではない。原油の供給不足のリスクが残る中、ガソリン、あるいは電気・ガスの消費を緩やかに抑制し始めることが必要だ。ガソリン価格を1リットル170円程度で安定させる現在のガソリン補助金制度や、昨年を上回る手厚い補助が検討されている電気・ガス補助金制度は、消費者の節約意識を弱めてしまうという問題もある。
 
生活が強く圧迫される中低所得層に絞った補助金とし、全体の支出規模を抑えるべきではないか。所得制限付きの補助金が技術的に難しいのであれば、電気・ガスの補助金とともにガソリン補助金の金額を抑え、同時に低所得者向けの給付金を新たに検討しても良いのではないか。
 
ガソリン補助金を縮小させる方法としては、ガソリン価格を一定程度の水準に抑える現在の仕組みを続けながら、その水準を1リットル当たり190円などへと引き上げる方法がある。また、市場で決まるガソリン価格に対して、1リットル20円などと一定額の補助金を政府が支給する方法もある。
 
後者の場合、海外での原油価格がこの先大幅に上昇しても、政府の補助金を一定額に抑えることが可能となるが、ガソリンの小売価格は大きく上昇してしまう。現時点では、前者の見直し方法が採用される可能性の方が高いのではないか。

補正予算は赤字国債の発行で賄われる

補正予算の財源について、高市首相は2025年度分として発行予定の赤字国債3兆円分が税収の上振れによって発行しない見込みが高まったとし、それを今回の補正予算の財源に充てることで、新規の赤字国債の発行は生じないと説明する。しかし、補正予算が赤字国債の発行で賄われる、という事実は変わらない。
 
税収の上振れによって当初予定していた赤字国債の発行が見送られる状況を市場が予め認識していたのであれば、今回の補正予算の編成によって当初予定した水準までやはり赤字国債を発行することになる。それは市場にとって予想外の赤字国債の発行増加となり、長期金利を押し上げる要因となるのではないか。あるいは財政環境の悪化懸念から円安を後押しする要因となるだろう。

プロフィール

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    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。