5月分雇用統計でFRBの年内利上げ観測が強まる
米労働省が6月5日に発表した5月分雇用統計で、雇用者増加数は事前予想を上回り、労働市場が比較的堅調であることを示した。5月の非農業雇用者増加数は前月比17.2万人となったが、これは事前予想の8.5万人程度(ロイター調べ)を上回り3か月連続の増加となった。過去2か月分の数字も上方修正され、3カ月間の雇用増は月間平均18.8万人と前年同時期の約3倍の水準まで回復した。
雇用増加をけん引したのはレジャー・接客業であり、7万人増となった。そのうちレストラン・バーで4.8万人増加したが、サッカーFIFAワールドカップに備えた採用の影響があるとみられている。
予想を上回る雇用者増加を受けて、金融市場では米連邦準備制度理事会(FRB)の年内利上げ観測が強まった。市場が織り込む利上げ確率は、雇用統計発表前の約5割から、統計発表後には約7割にまで上昇した。
利上げ時期については年末頃との期待が高まってきており、6月16日~17日の次回米連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利は据え置かれる、との見方に変わりはない。ウォーシュ新議長が初めて参加する次回FOMCでは、参加者のコンセンサスが利上げに傾きつつあるのか、トランプ大統領の意向を受けて金融緩和志向とみられるウォーシュ新議長の政策姿勢に注目が集まる。
FRBの利上げ観測が強まったことで、5日の米金融市場では米国債が売られた。また、利上げ懸念から株価は下落し、特にナスダック株価指数は4%を超える大幅下落となった。これは、トランプ関税の影響を受けた2025年4月以来の下落幅だ。金利上昇に弱いハイテク株の特徴が表れた形である。週明けの8日の日本市場でも、米国市場の影響を受けて株価は大幅に下落する見通しだ。
雇用増加をけん引したのはレジャー・接客業であり、7万人増となった。そのうちレストラン・バーで4.8万人増加したが、サッカーFIFAワールドカップに備えた採用の影響があるとみられている。
予想を上回る雇用者増加を受けて、金融市場では米連邦準備制度理事会(FRB)の年内利上げ観測が強まった。市場が織り込む利上げ確率は、雇用統計発表前の約5割から、統計発表後には約7割にまで上昇した。
利上げ時期については年末頃との期待が高まってきており、6月16日~17日の次回米連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利は据え置かれる、との見方に変わりはない。ウォーシュ新議長が初めて参加する次回FOMCでは、参加者のコンセンサスが利上げに傾きつつあるのか、トランプ大統領の意向を受けて金融緩和志向とみられるウォーシュ新議長の政策姿勢に注目が集まる。
FRBの利上げ観測が強まったことで、5日の米金融市場では米国債が売られた。また、利上げ懸念から株価は下落し、特にナスダック株価指数は4%を超える大幅下落となった。これは、トランプ関税の影響を受けた2025年4月以来の下落幅だ。金利上昇に弱いハイテク株の特徴が表れた形である。週明けの8日の日本市場でも、米国市場の影響を受けて株価は大幅に下落する見通しだ。
ECBと日本銀行は今月利上げに
2月末以降の中東情勢の緊迫化、原油価格高騰を受けて、主要中央銀行はしばらく静観する姿勢を続けた。原油価格高騰という供給ショックは、少なくとも一時的に物価上昇率を上振れさせるが、同時に景気を下振れさせる。物価と経済の双方の安定を使命とする中央銀行は、どちらのリスクがより顕在化するかをしばらく見極めるのが通例だ。
しかし6月に入って、中央銀行の利上げ方向への動きがみられ始めている。6月11日には欧州中央銀行(ECB)が2023年9月以来、約2年半ぶりとなる0.25%の政策金利引き上げ(利上げ)に踏み切る可能性が高まっている。また、6月17日には日本銀行も利上げを実施する可能性も高まっている。
6月3日の日本銀行の植田総裁のきさらぎ会での講演は、予想外にタカ派的な内容であった。これは、6月15~16日の次回金融政策決定会合での利上げを意図的に金融市場に伝える情報発信であった可能性が高い(コラム「植田日銀総裁の講演は6月利上げを示唆したものか」、2026年6月4日)。これを受けて金融市場は、6月17日の日本銀行の利上げをほぼ織り込んだ。
わずか1週間前には利上げに慎重な姿勢を見せていた植田総裁の発言が、短期間で大きく変化したことには違和感がある。背景には、総裁、副総裁など執行部がなお利上げに慎重な中、審議委員が利上げに傾き、政策委員会の多数決で利上げが決まる可能性が高まったという事情があるのではないか。そうであれば、非執行部主導で政策変更が決まる、新日本銀行法のもとでは初めての歴史的ケースとなるだろう。
ただし、このような形で利上げが実施されると、利上げを歓迎しない政府と日本銀行との関係がかなり悪化してしまうことも考えられる。
ECB、日本銀行に加えてFRBも利上げ方向に転じるとの見方が強まるなか、それはドル円レートのさらなる円安リスクを高める可能性があり、日本政府は再び1ドル160円の防衛を迫られる。さらに、主要中央銀行が利上げモードに入る中、世界的に長期金利は上昇しやすくなる。それは、5日のナスダック株の大幅下落にもみられるように、株式市場でのAIブームに大きな逆風をもたらす可能性があるだろう。
しかし6月に入って、中央銀行の利上げ方向への動きがみられ始めている。6月11日には欧州中央銀行(ECB)が2023年9月以来、約2年半ぶりとなる0.25%の政策金利引き上げ(利上げ)に踏み切る可能性が高まっている。また、6月17日には日本銀行も利上げを実施する可能性も高まっている。
6月3日の日本銀行の植田総裁のきさらぎ会での講演は、予想外にタカ派的な内容であった。これは、6月15~16日の次回金融政策決定会合での利上げを意図的に金融市場に伝える情報発信であった可能性が高い(コラム「植田日銀総裁の講演は6月利上げを示唆したものか」、2026年6月4日)。これを受けて金融市場は、6月17日の日本銀行の利上げをほぼ織り込んだ。
わずか1週間前には利上げに慎重な姿勢を見せていた植田総裁の発言が、短期間で大きく変化したことには違和感がある。背景には、総裁、副総裁など執行部がなお利上げに慎重な中、審議委員が利上げに傾き、政策委員会の多数決で利上げが決まる可能性が高まったという事情があるのではないか。そうであれば、非執行部主導で政策変更が決まる、新日本銀行法のもとでは初めての歴史的ケースとなるだろう。
ただし、このような形で利上げが実施されると、利上げを歓迎しない政府と日本銀行との関係がかなり悪化してしまうことも考えられる。
ECB、日本銀行に加えてFRBも利上げ方向に転じるとの見方が強まるなか、それはドル円レートのさらなる円安リスクを高める可能性があり、日本政府は再び1ドル160円の防衛を迫られる。さらに、主要中央銀行が利上げモードに入る中、世界的に長期金利は上昇しやすくなる。それは、5日のナスダック株の大幅下落にもみられるように、株式市場でのAIブームに大きな逆風をもたらす可能性があるだろう。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。