経済産業省は、7月2日からガソリン補助金の算定方式を見直す。代替調達拡大による原油単価の上昇分を「調整単価」として補助金に上乗せすることで、ガソリン小売価格の上昇を抑える狙いがあるとみられる。
政府は過去1週間の海外の原油価格の変化分を毎週補助金に反映させることで、全国レギュラー平均小売価格が1リットル170円程度になるように調整してきた。その前提となるのは、毎週水曜日に決定される大手ガソリン元売り業者のガソリン卸売価格が、ガソリンの原価を決める原油価格(円建て)に連動していることだ。
しかし、足もとではガソリンの原価と海外の原油価格(円建て)との間にずれが生じている。第1に、中東情勢の緊迫化を受けた原油価格高騰の影響が遅れて価格に反映されることで、石油の政府備蓄が、元売り業者に対して結果として割安の価格で3月以降提供されてきたと推察されることだ。
第2に、政府と企業がホルムズ海峡を経由しない代替ルートでの原油調達を拡大させ、7月にはホルムズ海峡を経由した従来の輸入分を代替調達で補うことができる見通しとなった。ただし、代替ルートでの原油調達では、中東産原油よりも単価が高い米国からの輸入を増やしたことや、割高なスポット価格で買い入れたことから、ホルムズ海峡を経由した従来の原油よりも単価がかなり上がった可能性が考えられる。
政府は代替ルートでの調達が進んだことから、政府の石油備蓄を温存するために5月を最後に、その放出を見合わせている。元売り業者にとっては割安な政府の石油備蓄による原油調達が停止する一方、割高な代替ルートでの原油調達が増えたことから、調達する原油の平均単価が上昇していると推察される。
そこで、元売り業者が原油単価の上昇分をガソリンの卸売価格に本格的に上乗せする見通しになったことを踏まえて、政府はこの「調整単価」導入を決めたのではないかと推測される。
調整単価は月単位で見直され、7月2日から適用される7月分は1リットル当たり4.9円となる。政府が6月24日に発表した25日から1週間のガソリン補助金は、1リットル当たり6.0円とされた。前週の18.2円から大幅に縮小し、3月19日にガソリン補助金制度が開始されて以降、最低水準となった(コラム「原油価格の下落を受けて来週にもガソリン価格の下落が始まる可能性」、2026年6月24日)。
その後も原油価格は低下し、WTI原油先物価格は一時1バレル60ドル台と、米国、イスラエルによるイラン攻撃開始前の水準に近づいた。こうした原油価格の下落が反映されれば、7月1日に発表される政府のガソリン補助金はゼロになる可能性があった。
筆者の計算では、現在の為替レートのもとでは、WTI原油先物価格が1バレル75ドル程度であれば、レギュラーガソリンの全国平均小売価格は1リットル170円程度となり、補助金は必要なくなる(政府の補助金額の算定はドバイ原油の価格に基づく)。
しかし7月以降、政府が計算する1リットル当たり4.9円に見合った価格が「調整単価」としてガソリンの小売価格に上乗せされるのであれば、WTI原油先物価格が1バレル70ドル程度でないと、ガソリン補助金は無くならず、ガソリンの小売価格の平均は1リットル170円を下回らない計算となる。
個人が原油価格下落の恩恵をガソリン価格の低下として享受できる余地は、当面は大きくなさそうだ。
政府は過去1週間の海外の原油価格の変化分を毎週補助金に反映させることで、全国レギュラー平均小売価格が1リットル170円程度になるように調整してきた。その前提となるのは、毎週水曜日に決定される大手ガソリン元売り業者のガソリン卸売価格が、ガソリンの原価を決める原油価格(円建て)に連動していることだ。
しかし、足もとではガソリンの原価と海外の原油価格(円建て)との間にずれが生じている。第1に、中東情勢の緊迫化を受けた原油価格高騰の影響が遅れて価格に反映されることで、石油の政府備蓄が、元売り業者に対して結果として割安の価格で3月以降提供されてきたと推察されることだ。
第2に、政府と企業がホルムズ海峡を経由しない代替ルートでの原油調達を拡大させ、7月にはホルムズ海峡を経由した従来の輸入分を代替調達で補うことができる見通しとなった。ただし、代替ルートでの原油調達では、中東産原油よりも単価が高い米国からの輸入を増やしたことや、割高なスポット価格で買い入れたことから、ホルムズ海峡を経由した従来の原油よりも単価がかなり上がった可能性が考えられる。
政府は代替ルートでの調達が進んだことから、政府の石油備蓄を温存するために5月を最後に、その放出を見合わせている。元売り業者にとっては割安な政府の石油備蓄による原油調達が停止する一方、割高な代替ルートでの原油調達が増えたことから、調達する原油の平均単価が上昇していると推察される。
そこで、元売り業者が原油単価の上昇分をガソリンの卸売価格に本格的に上乗せする見通しになったことを踏まえて、政府はこの「調整単価」導入を決めたのではないかと推測される。
調整単価は月単位で見直され、7月2日から適用される7月分は1リットル当たり4.9円となる。政府が6月24日に発表した25日から1週間のガソリン補助金は、1リットル当たり6.0円とされた。前週の18.2円から大幅に縮小し、3月19日にガソリン補助金制度が開始されて以降、最低水準となった(コラム「原油価格の下落を受けて来週にもガソリン価格の下落が始まる可能性」、2026年6月24日)。
その後も原油価格は低下し、WTI原油先物価格は一時1バレル60ドル台と、米国、イスラエルによるイラン攻撃開始前の水準に近づいた。こうした原油価格の下落が反映されれば、7月1日に発表される政府のガソリン補助金はゼロになる可能性があった。
筆者の計算では、現在の為替レートのもとでは、WTI原油先物価格が1バレル75ドル程度であれば、レギュラーガソリンの全国平均小売価格は1リットル170円程度となり、補助金は必要なくなる(政府の補助金額の算定はドバイ原油の価格に基づく)。
しかし7月以降、政府が計算する1リットル当たり4.9円に見合った価格が「調整単価」としてガソリンの小売価格に上乗せされるのであれば、WTI原油先物価格が1バレル70ドル程度でないと、ガソリン補助金は無くならず、ガソリンの小売価格の平均は1リットル170円を下回らない計算となる。
個人が原油価格下落の恩恵をガソリン価格の低下として享受できる余地は、当面は大きくなさそうだ。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。