社会保障国民会議が再開へ
国会空転の影響から中断していた社会保障国民会議が、13日に再開する。自民党の小野寺税調会長が示した消費税率引き下げ及び給付制度の案は、1)食料品の消費税率を2027年4月から2029年3月末まで2年限定で1%にする、2)2027年秋には1%分の税収規模(約6千億円)で働く中低所得者に対して所得に連動した給付をすることで、食料品の消費税率の「実質ゼロ」を実現する、3)2029年度から中低所得者の負担を軽減する給付制度を導入する、というものだ。
これに対して野党は強く反対している。消費税減税については、中道改革連合が恒久減税を求めている。また国民民主党は、減税よりも給付が望ましいと主張する。国民民主党の玉木代表は、「飲食料品の消費税を仮に1%にしても、思ったほど税込み価格は下がりません。元に戻す時は大幅な増税になる」と発言している。
これに対して野党は強く反対している。消費税減税については、中道改革連合が恒久減税を求めている。また国民民主党は、減税よりも給付が望ましいと主張する。国民民主党の玉木代表は、「飲食料品の消費税を仮に1%にしても、思ったほど税込み価格は下がりません。元に戻す時は大幅な増税になる」と発言している。
消費税率の引き下げ分ほど食料品の価格は下がらない
確かに、食料品の消費税率引き下げ分だけ、食料品の店頭価格は下がらない可能性は高い。食料品の消費税率を8%から1%に7%ポイント引き下げ、その分が食料品の価格に完全に反映される場合、価格は(100%÷107%-1)で6.5%下がる計算となる。
しかし、過去数年は物価の上昇率が高くなっていることから、過去の消費税率引き上げ時と比べても、税率変更の影響と実際の価格の変化との間にはズレが生じやすい。価格の改定には様々なコストがかかることから、企業はできるだけ頻繁な価格改定を避けようとする。そこで、将来の食料品の値上げ分を消費税率引き下げ時に前倒しで販売価格に反映する可能性が考えられる。
最新5月の全国消費者物価統計で、食料品の物価上昇率は前年同月比+3.5%である。仮にこの1年間の価格上昇がこの先1年間続くとし、企業がその価格上昇分を消費税率引き下げ分と相殺する形で食料品の価格を設定すると考えよう。その場合、食料品の消費税率が8%から1%に引き下げられる時点での食料品の価格低下幅は、税率変更の影響の理論値である6.5%ではなく、約3.2%と半分程度となる計算だ。
ちなみに、2020年にドイツがコロナ対策としてVAT(付加価値税)の軽減税率を7%から5%に引き下げた際には、消費者価格への転嫁は減税分の約70%程度にとどまったとする実証研究がある。食料品の消費税率を引き下げても、理論値ほどには食料品の価格が下がらない可能性は高い。
しかし、過去数年は物価の上昇率が高くなっていることから、過去の消費税率引き上げ時と比べても、税率変更の影響と実際の価格の変化との間にはズレが生じやすい。価格の改定には様々なコストがかかることから、企業はできるだけ頻繁な価格改定を避けようとする。そこで、将来の食料品の値上げ分を消費税率引き下げ時に前倒しで販売価格に反映する可能性が考えられる。
最新5月の全国消費者物価統計で、食料品の物価上昇率は前年同月比+3.5%である。仮にこの1年間の価格上昇がこの先1年間続くとし、企業がその価格上昇分を消費税率引き下げ分と相殺する形で食料品の価格を設定すると考えよう。その場合、食料品の消費税率が8%から1%に引き下げられる時点での食料品の価格低下幅は、税率変更の影響の理論値である6.5%ではなく、約3.2%と半分程度となる計算だ。
ちなみに、2020年にドイツがコロナ対策としてVAT(付加価値税)の軽減税率を7%から5%に引き下げた際には、消費者価格への転嫁は減税分の約70%程度にとどまったとする実証研究がある。食料品の消費税率を引き下げても、理論値ほどには食料品の価格が下がらない可能性は高い。
消費税減税を骨太方針に盛り込むことは見送りか
中道改革連合、立憲民主、公明の3党が、食料品の消費税を2年間限定で1%に引き下げる案を「到底受け入れられない」と強く否定する見解の原案をまとめ、社会保障国民会議の実務者会議で今後表明すると報じられている。「減税終了後に大幅な負担増となる」点を特に問題視しているようだ。
自民党は7月15日にも中間取りまとめを行い、骨太方針に盛り込みたい考えだ。しかし野党の反対が強い中、早期の中間取りまとめの実現は難しい情勢だ。政府・自民党は結論を先送りし、骨太方針には消費税減税関連の詳細を記さないことも検討している。そのうえで、8月中に閣議決定し、9月に法案を提出し、来年4月に食料品の消費税率引き下げを実施するというスケジュールを描く。
自民党は7月15日にも中間取りまとめを行い、骨太方針に盛り込みたい考えだ。しかし野党の反対が強い中、早期の中間取りまとめの実現は難しい情勢だ。政府・自民党は結論を先送りし、骨太方針には消費税減税関連の詳細を記さないことも検討している。そのうえで、8月中に閣議決定し、9月に法案を提出し、来年4月に食料品の消費税率引き下げを実施するというスケジュールを描く。
「給付付き税額控除導入までのつなぎ」という消費税率引き下げの主張
食料品の消費税率引き下げについて政府は、より抜本的な物価高対策となる給付付き税額控除導入までのつなぎと位置付けていた。しかし、こうした位置づけは、その根拠が揺らいでいる。
給付付き税額控除は導入までに時間がかかることから、税額控除を行わずに所得に連動した簡素化した給付制度を2029年度から導入する計画だ。しかし一方で政府は、2027年秋に1%分の税収規模(約6千億円)で所得に連動した給付を行う考えだ。これは、給付付き税額控除を簡素化した給付制度と大きく違わないのではないか。
給付付き税額控除を簡素化した給付制度が2027年秋に実施可能なのであれば、2027年4月の食料品の消費税率引き下げは、つなぎの政策という位置づけの根拠を失うことになる。
給付付き税額控除は導入までに時間がかかることから、税額控除を行わずに所得に連動した簡素化した給付制度を2029年度から導入する計画だ。しかし一方で政府は、2027年秋に1%分の税収規模(約6千億円)で所得に連動した給付を行う考えだ。これは、給付付き税額控除を簡素化した給付制度と大きく違わないのではないか。
給付付き税額控除を簡素化した給付制度が2027年秋に実施可能なのであれば、2027年4月の食料品の消費税率引き下げは、つなぎの政策という位置づけの根拠を失うことになる。
財源議論が進まないことが最も深刻な問題
この点に加え、食料品の消費税率引き下げに関わる大きな問題は、財源の議論がほぼ進んでいないことだ。政府は、食料品の消費税率引き下げを赤字公債に頼ることはないと明言する一方、その財源には租税優遇措置、補助金の見直し等で対応する考えを示してきた。
しかし、省庁による自主点検では、租税優遇措置、補助金の見直しは成果を挙げていない(コラム「日本版DOGEの限界:省庁の自主点検で租税特別措置の廃止方針はわずか1件」、2026年7月10日)。
財源の目途が立たないまま、食料品の消費税率引き下げの議論を進めれば、最終的には赤字国債の発行増加を招くとの懸念が強まり、金融市場では円安・債券安が進むだろう。それは、物価高と金利上昇を通じて家計を圧迫する。
混迷する社会保障国民会議における食料品の消費税率引き下げの議論の中でも、財源の議論が後回しになっていることが最も深刻な問題だ。
(参考資料)
「消費減税への異論収まらず「両論併記しか…」 国民会議13日再開へ」、2026年7月12日、朝日新聞社
「消費税減税 結論持ち越し 社会保障国民会議 国会閉会後か 新給付制度 先行合意へ」、2026年7月11日、読売新聞
「消費減税:「つなぎ」消費減税もはや不要? 「改革の本丸」給付付き税額控除…ほぼ同じ制度が来秋導入可能」、2026年7月9日、毎日新聞
「2年間限定「1%」 中立公「到底受け入れられず」 消費税」、2026年7月11日、読売新聞
しかし、省庁による自主点検では、租税優遇措置、補助金の見直しは成果を挙げていない(コラム「日本版DOGEの限界:省庁の自主点検で租税特別措置の廃止方針はわずか1件」、2026年7月10日)。
財源の目途が立たないまま、食料品の消費税率引き下げの議論を進めれば、最終的には赤字国債の発行増加を招くとの懸念が強まり、金融市場では円安・債券安が進むだろう。それは、物価高と金利上昇を通じて家計を圧迫する。
混迷する社会保障国民会議における食料品の消費税率引き下げの議論の中でも、財源の議論が後回しになっていることが最も深刻な問題だ。
(参考資料)
「消費減税への異論収まらず「両論併記しか…」 国民会議13日再開へ」、2026年7月12日、朝日新聞社
「消費税減税 結論持ち越し 社会保障国民会議 国会閉会後か 新給付制度 先行合意へ」、2026年7月11日、読売新聞
「消費減税:「つなぎ」消費減税もはや不要? 「改革の本丸」給付付き税額控除…ほぼ同じ制度が来秋導入可能」、2026年7月9日、毎日新聞
「2年間限定「1%」 中立公「到底受け入れられず」 消費税」、2026年7月11日、読売新聞
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。