一転してコメ余りと価格低下へ
コメの小売価格の低下が続いている。農林水産省が7月10日に発表した6月29日~7月5日時点のコメの平均店頭価格は、前週比96円(2.7%)低下の5キログラム3,458円だった。値下がりは2週連続であり、2024年11月末から12月初め以来の安値となった。
コメの価格は2024年夏に突如上昇を始め、2025年3月には5キログラム4,000円台に乗せた。これを受け政府は、一般競争入札と随意契約で備蓄米を計59万トン放出した。2025年5月にはコメの価格は前年同月比で101.5%とピークを付け、その後上昇率は低下を続けている。最新2026年5月には-4.9%へと下落に転じている。
コメの価格下落の背景には、記録的なコメ余りがある。農水省の見通しによると、今年6月末の民間在庫量は221万~234万トン。適正水準とされる180万~200万トンを大幅に上回る。
コメの価格は2024年夏に突如上昇を始め、2025年3月には5キログラム4,000円台に乗せた。これを受け政府は、一般競争入札と随意契約で備蓄米を計59万トン放出した。2025年5月にはコメの価格は前年同月比で101.5%とピークを付け、その後上昇率は低下を続けている。最新2026年5月には-4.9%へと下落に転じている。
コメの価格下落の背景には、記録的なコメ余りがある。農水省の見通しによると、今年6月末の民間在庫量は221万~234万トン。適正水準とされる180万~200万トンを大幅に上回る。
価格上昇を受けてコメの実質消費は減少基調
在庫増加の背景には、備蓄米が計59万トン放出された結果、2025年産米の販売が落ちたことに加えて、価格高騰を受けた消費者のコメ離れによる需要減少の影響もある。
コメの価格上昇が始まった時期と重なる2024年7月以降、コメの実質消費は前年同月比で減少基調にある(図表)。コメが、価格の上昇によってむしろ消費量が増える「ギッフェン財」という特殊な商品である場合、コメの価格上昇がコメの消費量の増加を促し、さらにコメの価格を上昇させるといった発散型の不安定な価格形成になる可能性も考えられた(コラム「経済学で読み解くコメの価格高騰対策:コメはギッフェン財か:政府はサプライサイドの対策に注力すべき」、2026年5月20日)。
しかし実際には、コメの実質消費量は価格上昇に敏感に反応して減少に転じた。コメの価格の下落はいずれコメの消費量を回復させ、需給の改善からコメの価格は下げ止まることが期待される。しかし現状でのコメの価格は高騰前の水準と比べてなお高く、下げ止まるまでにはなお時間がかかりそうだ。
2026年産米の価格の先行指標となる鹿児島県産の早場米で、鹿児島県内の農業協同組合(JA)が生産者に渡す前払い金である概算金は、前年比で2割安くなる見通しである。これは8月ごろから出回り始めて9~10月に本格的に店頭へ並ぶ見込みの2026年産米(令和8年産)の新米の価格がかなり下がる可能性を示唆している。
コメの価格上昇が始まった時期と重なる2024年7月以降、コメの実質消費は前年同月比で減少基調にある(図表)。コメが、価格の上昇によってむしろ消費量が増える「ギッフェン財」という特殊な商品である場合、コメの価格上昇がコメの消費量の増加を促し、さらにコメの価格を上昇させるといった発散型の不安定な価格形成になる可能性も考えられた(コラム「経済学で読み解くコメの価格高騰対策:コメはギッフェン財か:政府はサプライサイドの対策に注力すべき」、2026年5月20日)。
しかし実際には、コメの実質消費量は価格上昇に敏感に反応して減少に転じた。コメの価格の下落はいずれコメの消費量を回復させ、需給の改善からコメの価格は下げ止まることが期待される。しかし現状でのコメの価格は高騰前の水準と比べてなお高く、下げ止まるまでにはなお時間がかかりそうだ。
2026年産米の価格の先行指標となる鹿児島県産の早場米で、鹿児島県内の農業協同組合(JA)が生産者に渡す前払い金である概算金は、前年比で2割安くなる見通しである。これは8月ごろから出回り始めて9~10月に本格的に店頭へ並ぶ見込みの2026年産米(令和8年産)の新米の価格がかなり下がる可能性を示唆している。
図表 コメの価格と消費量


コメの価格下落は原油価格上昇の物価押し上げ効果を緩和へ
コメの価格の前年同月比上昇率は2025年5月の101.5%、つまり2倍以上から最新の2026年5月には-4.9%へと下落に転じた。これは、消費者物価の前年比上昇率を1年間で0.66%押し下げた。コメの価格は当面下落を続け、消費者物価の前年比上昇率をさらに押し下げることになるだろう。
原油価格上昇の影響が、秋にかけて幅広い品目へ遅れて波及し、物価を押し上げることが見込まれる中、コメの価格の低下は、その影響を和らげる効果を持つだろう。それは、個人消費にはプラスである。
また、金融市場のインフレ懸念を緩和することで、長期金利の上昇に対して一定程度歯止めをかけることになる一方、日本銀行の金融政策にも影響を与えるだろう。
他方、コメの価格の下落は生産者の収益にはマイナスである。政府・与党内の農水族からは、放出した備蓄米の早期の買い戻しを求める声が上がっている。しかしそれは、政府の物価高対策に逆行してしまう面があり、現時点で実現は難しそうだ。
消費者とコメ生産者の双方に配慮する必要から、政府・与党はコメの価格の下落への対応に苦慮している。コメの価格も政治情勢の影響を大きく受ける。
(参考資料)
「コメ店頭価格 下げ加速、1年7カ月ぶり安値、備蓄米放出時を下回る」、2026年7月11日、日本経済新聞
「備蓄米、早期買い戻し論 放出で米余り、価格下落懸念し農水族打診」、2026年7月10日、朝日新聞
「新米の価格2割安 26年産早場米、前年在庫増え値下がりへ」、2026年7月6日、日本経済新聞電子版
原油価格上昇の影響が、秋にかけて幅広い品目へ遅れて波及し、物価を押し上げることが見込まれる中、コメの価格の低下は、その影響を和らげる効果を持つだろう。それは、個人消費にはプラスである。
また、金融市場のインフレ懸念を緩和することで、長期金利の上昇に対して一定程度歯止めをかけることになる一方、日本銀行の金融政策にも影響を与えるだろう。
他方、コメの価格の下落は生産者の収益にはマイナスである。政府・与党内の農水族からは、放出した備蓄米の早期の買い戻しを求める声が上がっている。しかしそれは、政府の物価高対策に逆行してしまう面があり、現時点で実現は難しそうだ。
消費者とコメ生産者の双方に配慮する必要から、政府・与党はコメの価格の下落への対応に苦慮している。コメの価格も政治情勢の影響を大きく受ける。
(参考資料)
「コメ店頭価格 下げ加速、1年7カ月ぶり安値、備蓄米放出時を下回る」、2026年7月11日、日本経済新聞
「備蓄米、早期買い戻し論 放出で米余り、価格下落懸念し農水族打診」、2026年7月10日、朝日新聞
「新米の価格2割安 26年産早場米、前年在庫増え値下がりへ」、2026年7月6日、日本経済新聞電子版
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。