強制労働による製品の輸入に対する対応の不備を理由に日本に12.5%の新関税
トランプ米政権は23日に、新たに日本を含む60カ国・地域に追加関税をかけると発表した。関税率は10%または12.5%で、日本には12.5%が適用される。この新関税は米東部時間24日午前0時1分(日本時間午後1時1分)に発動した。
この決定はほぼ事前に予想された通りである。米通商代表部(USTR)は6月に原案を示し、広く意見を募っていたが、最終的にはそれに近い内容となった(コラム「トランプ代替関税が失効へ」、2026年7月23日)。
新たな関税は、相手国の不公正貿易慣行への制裁措置として関税の発動を認める通商法301条に基づく。今回は、強制労働による製品の輸入に対する対応が十分でないことを理由に関税を課すものだが、それは後付けの理由付けであり、実際は、今年2月に米最高裁の判決によって違法となって失効した相互関税の復活を狙った措置だ。
2月以降は150日の暫定措置として通商法122条に基づく10%の関税がかけられていた。強制労働による製品の輸入への対応の不備に応じて10%と12.5%が各国に課せられるが、日本は不備が大きいとして12.5%の高い方の関税が課せられる。
欧州連合(EU)や台湾などは低い方の10%の関税率、韓国、スイスなどは日本と同様の12.5%の関税率が課される。既存の関税が12.5%を超える場合は、新たな関税は適用されない。
この決定はほぼ事前に予想された通りである。米通商代表部(USTR)は6月に原案を示し、広く意見を募っていたが、最終的にはそれに近い内容となった(コラム「トランプ代替関税が失効へ」、2026年7月23日)。
新たな関税は、相手国の不公正貿易慣行への制裁措置として関税の発動を認める通商法301条に基づく。今回は、強制労働による製品の輸入に対する対応が十分でないことを理由に関税を課すものだが、それは後付けの理由付けであり、実際は、今年2月に米最高裁の判決によって違法となって失効した相互関税の復活を狙った措置だ。
2月以降は150日の暫定措置として通商法122条に基づく10%の関税がかけられていた。強制労働による製品の輸入への対応の不備に応じて10%と12.5%が各国に課せられるが、日本は不備が大きいとして12.5%の高い方の関税が課せられる。
欧州連合(EU)や台湾などは低い方の10%の関税率、韓国、スイスなどは日本と同様の12.5%の関税率が課される。既存の関税が12.5%を超える場合は、新たな関税は適用されない。
12.5%への関税率引き上げは名目GDPを1年間で0.06%、4,020億円程度押し下げ
ただし日本に対する12.5%の新関税は、既に6月にその案が示されていた。2月以降の一律(鉄鋼、アルミなど分野別関税は除く)10%の関税率と比べればわずか2.5%の上昇である。これは日本の名目GDPを1年間で0.06%、4,020億円程度押し下げる計算となる。影響は比較的軽微と言えるだろう。
さらに、昨年7月に日米間で合意された相互関税、自動車関税の税率は15%であったことから、それを下回る税率となる。
また、昨年7月の日米合意で、相互関税を従来の関税に単純に上乗せしない、という合意がなされたが、それが新関税に踏襲されることが示された。つまり、既存の関税率に新関税の関税率12.5%を上乗せしてそれ以上の関税率とすることはなく、12.5%までの引き上げにとどめることとされた。これは、米国向け輸出に対して高めの関税率が従来から課されている、牛肉などの農産物の日本の輸出業者にとっては朗報だ。
また、負担軽減措置も盛り込まれ、新関税の免除対象は2,000品目を超えた。このような点を踏まえると、新関税が日本経済に与える追加的な打撃は、比較的軽微と言えるだろう。
さらに、昨年7月に日米間で合意された相互関税、自動車関税の税率は15%であったことから、それを下回る税率となる。
また、昨年7月の日米合意で、相互関税を従来の関税に単純に上乗せしない、という合意がなされたが、それが新関税に踏襲されることが示された。つまり、既存の関税率に新関税の関税率12.5%を上乗せしてそれ以上の関税率とすることはなく、12.5%までの引き上げにとどめることとされた。これは、米国向け輸出に対して高めの関税率が従来から課されている、牛肉などの農産物の日本の輸出業者にとっては朗報だ。
また、負担軽減措置も盛り込まれ、新関税の免除対象は2,000品目を超えた。このような点を踏まえると、新関税が日本経済に与える追加的な打撃は、比較的軽微と言えるだろう。
トランプ関税は行き詰まる方向に
トランプ政権は通商法122条に基づく暫定的な代替関税を通商法301条に基づく恒久的な関税に替え、相互関税を実質的に復活させた。昨年4月に導入された国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく相互関税は、約10か月後の今年2月に違法判決で失効した。それに代わる通商法122条に基づく代替関税にも多くの訴訟が起こされている。
トランプ政権は、通商法301条は過去に多くの訴訟に耐えてきたことから、それに基づく新関税には違法判決は下されないと考えている。しかし、今年2月に下された違法判決では、議会の承認を得ない大統領による関税全体に対して違法の疑いが示されたと考えられる。
また通商法301条に基づく制裁関税は、相手国の不公正貿易慣行を綿密に調査することが求められている。今回は、60か国もの国々からの輸入品全体に対して、数か月間で十分な事前調査がなされたとは到底考えられない。この点から、事前調査の不十分性も、通商法301条に基づく新関税の法的な正当性を疑わせるものとなるだろう。
こうした点を考えると、通商法301条に基づく新関税も1年程度で最高裁の違法判決を受けて失効する可能性があるのではないか。また、関税についてはコスト高、物価高を生むため、米国企業や国民からは不評である。
このような司法の壁、世論の壁を受けて、トランプ関税は行き詰まる方向にあると考えられる。
(参考資料)
「トランプ政権が新関税発動、日本12.5% 中間選挙へ看板政策継続」、2026年7月24日、日本経済新聞電子版
トランプ政権は、通商法301条は過去に多くの訴訟に耐えてきたことから、それに基づく新関税には違法判決は下されないと考えている。しかし、今年2月に下された違法判決では、議会の承認を得ない大統領による関税全体に対して違法の疑いが示されたと考えられる。
また通商法301条に基づく制裁関税は、相手国の不公正貿易慣行を綿密に調査することが求められている。今回は、60か国もの国々からの輸入品全体に対して、数か月間で十分な事前調査がなされたとは到底考えられない。この点から、事前調査の不十分性も、通商法301条に基づく新関税の法的な正当性を疑わせるものとなるだろう。
こうした点を考えると、通商法301条に基づく新関税も1年程度で最高裁の違法判決を受けて失効する可能性があるのではないか。また、関税についてはコスト高、物価高を生むため、米国企業や国民からは不評である。
このような司法の壁、世論の壁を受けて、トランプ関税は行き詰まる方向にあると考えられる。
(参考資料)
「トランプ政権が新関税発動、日本12.5% 中間選挙へ看板政策継続」、2026年7月24日、日本経済新聞電子版
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。