2026年度の物価見通しは大きく下方修正か
日本銀行は7月30日・31日に、金融政策決定会合を開催する。前回6月の会合で政策金利を0.25%引き上げる利上げを実施したばかりであることから、日本銀行が今回の会合で連続利上げを実施する可能性は低い。そうした中、注目点となるのは、展望レポートでの物価見通しの修正と総裁記者会見である。
展望レポートでは、2026年度を中心に実質GDPの成長率見通しが上方修正、物価上昇率見通しが下方修正されることが見込まれる。前回4月の展望レポートでは、2026年度の消費者物価指数(除く生鮮食品)の上昇率の見通し(中央値)は+2.8%と、1月の+1.9%から0.9%ポイントの大幅上方修正となった。中東情勢の緊迫化に伴う原油価格の高騰がその背景にある。
この物価見通しの上方修正が、非執行部の間で利上げに前向きな姿勢を後押しし、6月の利上げにつながった面があるのではないか。
しかし、この物価上昇率の上方修正は行き過ぎだったと考えられる。まず、原油価格高騰の影響が顕著に表れる前の段階の物価上昇率は、予想比で下振れている。これは、過去数年の急速な円安による原材料価格の上昇を食料品価格に転嫁する動きが、昨年と比べて鈍化したことによる。
加えて、コメの価格の下落が、消費者物価上昇率を下振れさせている。消費者物価統計のコメの価格の前年同月比上昇率は2025年5月の101.5%、つまり2倍以上から最新の2026年5月には-4.9%へと下落に転じた。これは、消費者物価の前年比上昇率を1年間で0.66%押し下げた(コラム「コメの価格の下落:原油価格高騰の物価への影響を和らげる効果」、2026年7月14日)。
また地方のJAの概算金は、今年の新米の価格が前年比で4割程度下がる可能性を示唆している。実際にコメの価格が同程度下落すれば、消費者物価上昇率は前年同月比で0.25%程度押し下げられる計算だ。
また、春以降の原油価格高騰の影響が日用品、食料品などの価格に転嫁される動きも想定よりも鈍い。こうした点を踏まえると、今回の展望レポートでは2026年度の消費者物価指数(除く生鮮食品)の上昇率の見通し(中央値)は、0.3%ポイント~0.4%ポイント下方修正されることが予想される。さらに、物価見通しの下方修正は、10月の展望レポートでも続くことが見込まれる。
こうした物価見通しの下方修正は、日本銀行内での早期利上げに向けた機運を緩和させることになるだろう。
展望レポートでは、2026年度を中心に実質GDPの成長率見通しが上方修正、物価上昇率見通しが下方修正されることが見込まれる。前回4月の展望レポートでは、2026年度の消費者物価指数(除く生鮮食品)の上昇率の見通し(中央値)は+2.8%と、1月の+1.9%から0.9%ポイントの大幅上方修正となった。中東情勢の緊迫化に伴う原油価格の高騰がその背景にある。
この物価見通しの上方修正が、非執行部の間で利上げに前向きな姿勢を後押しし、6月の利上げにつながった面があるのではないか。
しかし、この物価上昇率の上方修正は行き過ぎだったと考えられる。まず、原油価格高騰の影響が顕著に表れる前の段階の物価上昇率は、予想比で下振れている。これは、過去数年の急速な円安による原材料価格の上昇を食料品価格に転嫁する動きが、昨年と比べて鈍化したことによる。
加えて、コメの価格の下落が、消費者物価上昇率を下振れさせている。消費者物価統計のコメの価格の前年同月比上昇率は2025年5月の101.5%、つまり2倍以上から最新の2026年5月には-4.9%へと下落に転じた。これは、消費者物価の前年比上昇率を1年間で0.66%押し下げた(コラム「コメの価格の下落:原油価格高騰の物価への影響を和らげる効果」、2026年7月14日)。
また地方のJAの概算金は、今年の新米の価格が前年比で4割程度下がる可能性を示唆している。実際にコメの価格が同程度下落すれば、消費者物価上昇率は前年同月比で0.25%程度押し下げられる計算だ。
また、春以降の原油価格高騰の影響が日用品、食料品などの価格に転嫁される動きも想定よりも鈍い。こうした点を踏まえると、今回の展望レポートでは2026年度の消費者物価指数(除く生鮮食品)の上昇率の見通し(中央値)は、0.3%ポイント~0.4%ポイント下方修正されることが予想される。さらに、物価見通しの下方修正は、10月の展望レポートでも続くことが見込まれる。
こうした物価見通しの下方修正は、日本銀行内での早期利上げに向けた機運を緩和させることになるだろう。
総裁は両論を踏まえたバランスの取れた説明をするか
利上げを決めた前回6月の決定会合の対外公表文では、「現在の実質金利がきわめて低い水準にあること」という文言を削除し、政策金利が中立水準に近づいてきたという認識を日本銀行は滲ませた。これは、引き続き利上げを目指すものの早期の追加利上げには慎重とみられる、総裁を含む執行部の姿勢を反映していると推察される。
一方、対外公表文では、基調的な物価上昇率が2%物価安定目標を超えて上振れていくリスクも言及された。これは、物価上振れへの対応が遅れてしまう「ビハインド・ザ・カーブ」のリスクを警戒して、早期の利上げに前向きな非執行部(審議委員)の一部の意見を反映していると考えられる。
7月31日の記者会見では、総裁はこの両論を再び紹介する形になるのではないか。ただし、総裁自身の意見がより前面に出るのであれば、早期利上げにやや慎重な前者をより強調する可能性もあるだろう。
一方で、前日の米連邦公開市場員会(FOMC)を受けて、為替市場でドル高円安が進むようであれば、円安を牽制するために利上げに前向きな姿勢をやや強調する可能性もある。
一方、対外公表文では、基調的な物価上昇率が2%物価安定目標を超えて上振れていくリスクも言及された。これは、物価上振れへの対応が遅れてしまう「ビハインド・ザ・カーブ」のリスクを警戒して、早期の利上げに前向きな非執行部(審議委員)の一部の意見を反映していると考えられる。
7月31日の記者会見では、総裁はこの両論を再び紹介する形になるのではないか。ただし、総裁自身の意見がより前面に出るのであれば、早期利上げにやや慎重な前者をより強調する可能性もあるだろう。
一方で、前日の米連邦公開市場員会(FOMC)を受けて、為替市場でドル高円安が進むようであれば、円安を牽制するために利上げに前向きな姿勢をやや強調する可能性もある。
政府による利上げ牽制への懸念は続く
先日閣議決定された「骨太の方針」の原案は、日本銀行の利上げを牽制しているとして、円安・債券安の「骨太ショック」を生じさせた。それを受けて、政府は原案の該当部分を修正し、日銀法第3条に言及することで、日銀の自主性を尊重する姿勢を金融市場に示そうとした。それでも、日本銀行への政治介入の懸念は払拭されていない。
文言は修正されたが、「金融政策の具体的手法は日銀に委ねられるべきだ」という表現は残った。これでは、政策金利引き上げなどの政策手段の選択は日本銀行に委ねられるが、政策変更を実施するか否か、いつ実施するかなどの決定は日本銀行には委ねられず、政府がその方針を決めるという従来の政権の考え方を修正していないように読めてしまう。
また、7月28日の記者会見で高市首相は、デフレに戻るリスクがあり、まだデフレ脱却とは言えない、との趣旨の発言をした。これも、日本銀行の利上げを牽制する意図を含む発言と解釈できるだろう。政府は、公の場で日本銀行の利上げを牽制することは控えているが、水面下では今後も牽制を続ける可能性がある。
早期利上げにやや慎重な日本銀行の執行部、早期利上げに総じて前向きな非執行部、追加利上げに否定的な政権の「三つ巴」の構図の中、従来通りに半年に一度の利上げペースが維持され、次回利上げは今年の12月の会合になると予想する。
10月の会合で実施される可能性も残されるが、既述のように10月の展望レポートでも物価見通しを引き下げるのであれば、同じタイミングでの利上げには一定程度制約もあるのではないか。
文言は修正されたが、「金融政策の具体的手法は日銀に委ねられるべきだ」という表現は残った。これでは、政策金利引き上げなどの政策手段の選択は日本銀行に委ねられるが、政策変更を実施するか否か、いつ実施するかなどの決定は日本銀行には委ねられず、政府がその方針を決めるという従来の政権の考え方を修正していないように読めてしまう。
また、7月28日の記者会見で高市首相は、デフレに戻るリスクがあり、まだデフレ脱却とは言えない、との趣旨の発言をした。これも、日本銀行の利上げを牽制する意図を含む発言と解釈できるだろう。政府は、公の場で日本銀行の利上げを牽制することは控えているが、水面下では今後も牽制を続ける可能性がある。
早期利上げにやや慎重な日本銀行の執行部、早期利上げに総じて前向きな非執行部、追加利上げに否定的な政権の「三つ巴」の構図の中、従来通りに半年に一度の利上げペースが維持され、次回利上げは今年の12月の会合になると予想する。
10月の会合で実施される可能性も残されるが、既述のように10月の展望レポートでも物価見通しを引き下げるのであれば、同じタイミングでの利上げには一定程度制約もあるのではないか。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。