時事通信は8月4日に、高市首相が5月に植田日銀総裁と会談した際に、長期金利の上昇を抑えるために、必要に応じて国債を買い入れるよう求めていたと報じた。さらに、「内閣の取り組みを理解し、適切な金融政策を実行してほしい」と強調したという。これは十分にあり得ることだと感じる。
高市政権は円安進行のリスクや日本銀行の利上げを歓迎するトランプ政権の意向に配慮して、現在、日本銀行の金融政策には公然と注文を付けることを避けているものの、実際には水面下では強く介入していることになるだろう。これは、日本銀行の独立性を損ねるものであり、由々しき事態と言える(コラム「日米協調介入の裏に密約があったか?」、2026年8月5日)。
植田総裁は7月31日の記者会見で、政府が財政規律を尊重することの重要性を訴えた(コラム「総裁記者会見:基調的な物価上昇率が2%から上振れるリスクを強調」、2026年7月31日)。植田総裁は、長期金利の上昇をもたらす主な要因は、政府の消費税減税や成長投資による財政赤字拡大懸念や政府が日本銀行の利上げを牽制しているとの観測が将来の物価上昇リスクを高めている、いわゆる「ビハインド・ザ・カーブ」懸念にあると考えているのではないか。
そうしたもとでは、日本銀行が国債買い入れの増加を通じて長期金利の上昇を抑えるのではなく、政府が自ら政策を見直すことでそれを実現すべきだと考えているだろう。
経済ファンダメンタルズの変化ではなく、金融市場内部で生じる技術的な要因によって長期金利が大きく上昇する際には、日本銀行は国債買い入れを増加させ、長期金利の上昇を抑えるとともに、市場機能の回復を助ける。しかし、長期金利上昇の背景が明確に分かる場合には、安易に国債買い入れを増加しないだろう。
長期金利上昇の要因が、財政赤字拡大懸念や政府が日本銀行の利上げを牽制しているとの観測である場合には、仮に日本銀行が政府の要請に応えて国債買い入れを増加させても、それが長期金利上昇の抑制に寄与するかどうかは不確実であり、逆に長期金利のさらなる上昇を招いてしまう可能性がある。
日本銀行は現在利上げを進めているが、国債買い入れの増加は金融緩和措置であり、両者は矛盾する。金融緩和措置は円安を促し、将来の物価上昇懸念を助長して長期金利を上昇させる可能性がある。
さらに、長期金利の上昇に配慮して日本銀行が国債買い入れを増加させれば、政府の国債の発行を助ける「財政ファイナンス」となる。それによって国債発行はさらに増えるとの観測や、日本銀行の独立性が損なわれるとの観測から、円安と長期金利の上昇が後押しされる可能性がある。
高市政権は、日本銀行に国債買い入れの増加を要請するのではなく、自らの政策を見直し、金融市場からの信認を回復することを通じて、円安や長期金利の上昇に対応すべきだ。
高市政権は円安進行のリスクや日本銀行の利上げを歓迎するトランプ政権の意向に配慮して、現在、日本銀行の金融政策には公然と注文を付けることを避けているものの、実際には水面下では強く介入していることになるだろう。これは、日本銀行の独立性を損ねるものであり、由々しき事態と言える(コラム「日米協調介入の裏に密約があったか?」、2026年8月5日)。
植田総裁は7月31日の記者会見で、政府が財政規律を尊重することの重要性を訴えた(コラム「総裁記者会見:基調的な物価上昇率が2%から上振れるリスクを強調」、2026年7月31日)。植田総裁は、長期金利の上昇をもたらす主な要因は、政府の消費税減税や成長投資による財政赤字拡大懸念や政府が日本銀行の利上げを牽制しているとの観測が将来の物価上昇リスクを高めている、いわゆる「ビハインド・ザ・カーブ」懸念にあると考えているのではないか。
そうしたもとでは、日本銀行が国債買い入れの増加を通じて長期金利の上昇を抑えるのではなく、政府が自ら政策を見直すことでそれを実現すべきだと考えているだろう。
経済ファンダメンタルズの変化ではなく、金融市場内部で生じる技術的な要因によって長期金利が大きく上昇する際には、日本銀行は国債買い入れを増加させ、長期金利の上昇を抑えるとともに、市場機能の回復を助ける。しかし、長期金利上昇の背景が明確に分かる場合には、安易に国債買い入れを増加しないだろう。
長期金利上昇の要因が、財政赤字拡大懸念や政府が日本銀行の利上げを牽制しているとの観測である場合には、仮に日本銀行が政府の要請に応えて国債買い入れを増加させても、それが長期金利上昇の抑制に寄与するかどうかは不確実であり、逆に長期金利のさらなる上昇を招いてしまう可能性がある。
日本銀行は現在利上げを進めているが、国債買い入れの増加は金融緩和措置であり、両者は矛盾する。金融緩和措置は円安を促し、将来の物価上昇懸念を助長して長期金利を上昇させる可能性がある。
さらに、長期金利の上昇に配慮して日本銀行が国債買い入れを増加させれば、政府の国債の発行を助ける「財政ファイナンス」となる。それによって国債発行はさらに増えるとの観測や、日本銀行の独立性が損なわれるとの観測から、円安と長期金利の上昇が後押しされる可能性がある。
高市政権は、日本銀行に国債買い入れの増加を要請するのではなく、自らの政策を見直し、金融市場からの信認を回復することを通じて、円安や長期金利の上昇に対応すべきだ。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。