トランプ米政権は7月24日に、日本や欧州連合(EU)、中国を含む60か国・地域からの輸入品に対して、強制労働への対応が不十分だとして、通商法301条に基づいて10%または12.5%の新たな関税を発動した。この新関税は、通商法122条に基づく150日間の10%の暫定的な代替関税を引き継ぐものだ(コラム「トランプ政権が日本に12.5%の新関税を発動:日本経済への追加的な影響は限定的」、2026年7月24日)。
民主党の州知事または司法長官を擁する25州は7月3日に、新関税は大統領の権限を超える違法な措置と主張し、差し止めを求めて米国際貿易裁判所に提訴した。
各州は訴状で、政権が法律で義務付けられている調査を拙速に進めたうえ、新たな関税が世界的なサプライチェーンにおける強制労働の撲滅に効果的であることを証明していないと主張している。さらに、広範な国々に対して損害を与える関税を無差別に発動する政策を継続するための口実として、強制労働を利用しているとの指摘もある。
同関税措置を巡っては、米中小企業2社も差し止めを求めて発効当日に提訴している。
トランプ政権側は、「外国政府が強制労働で生産された製品の輸入禁止を効果的に執行できていないのは不当で、米労働者を含む米国の商業に負担を強いるものであり、対処しなければならない」と述べ、強制労働による輸入製品への対応が不十分であることを理由に通商法301条に基づく関税を発動することの正当性を主張している。また、違法判決を受けた、相互関税の根拠法とした国際緊急経済権限法(IEEPA)や代替関税の根拠とした通商法122条比べて、過去に多くの訴訟に耐えてきたとし、違法判決を受ける可能性は低いと自信を示している。
過去に通商法301条に基づいて発動された関税は、特定の国の特定の品目が対象だった。しかし今回は、多くの国の多くの輸入品が対象である。通商法301条に基づいて関税を発動する際には、相手国の不公正貿易慣行を十分に調査することと、議会への説明が求められる。関税を継続するために強制労働を口実にした今回の措置については、従来以上に違法性が疑われる。IEEPAに基づく相互関税は、導入から10か月程度で最高裁の違法判決が下され失効した。新関税についても1年程度で同様の経緯を辿る可能性があるのではないか。
(参考資料)
「米関税差し止め求め政権提訴、民主党系25州「大統領権限逸脱」」、2026年8月3日、ロイター通信ニュース
民主党の州知事または司法長官を擁する25州は7月3日に、新関税は大統領の権限を超える違法な措置と主張し、差し止めを求めて米国際貿易裁判所に提訴した。
各州は訴状で、政権が法律で義務付けられている調査を拙速に進めたうえ、新たな関税が世界的なサプライチェーンにおける強制労働の撲滅に効果的であることを証明していないと主張している。さらに、広範な国々に対して損害を与える関税を無差別に発動する政策を継続するための口実として、強制労働を利用しているとの指摘もある。
同関税措置を巡っては、米中小企業2社も差し止めを求めて発効当日に提訴している。
トランプ政権側は、「外国政府が強制労働で生産された製品の輸入禁止を効果的に執行できていないのは不当で、米労働者を含む米国の商業に負担を強いるものであり、対処しなければならない」と述べ、強制労働による輸入製品への対応が不十分であることを理由に通商法301条に基づく関税を発動することの正当性を主張している。また、違法判決を受けた、相互関税の根拠法とした国際緊急経済権限法(IEEPA)や代替関税の根拠とした通商法122条比べて、過去に多くの訴訟に耐えてきたとし、違法判決を受ける可能性は低いと自信を示している。
過去に通商法301条に基づいて発動された関税は、特定の国の特定の品目が対象だった。しかし今回は、多くの国の多くの輸入品が対象である。通商法301条に基づいて関税を発動する際には、相手国の不公正貿易慣行を十分に調査することと、議会への説明が求められる。関税を継続するために強制労働を口実にした今回の措置については、従来以上に違法性が疑われる。IEEPAに基づく相互関税は、導入から10か月程度で最高裁の違法判決が下され失効した。新関税についても1年程度で同様の経緯を辿る可能性があるのではないか。
(参考資料)
「米関税差し止め求め政権提訴、民主党系25州「大統領権限逸脱」」、2026年8月3日、ロイター通信ニュース
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。