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米財務省が10年~30年国債の買い戻し額を拡大

米財務省は8月19日に、10年~30年の米国債を買い戻す(バイバック)際の1回当たり上限額を、現在の20億ドルから40億ドル以上に引き上げると発表した。この措置は9月9日に始まり、少なくとも11月4日まで続く。
 
米財務省は、発行から時間が経過して取引量が減った国債を買い入れ消却することで、市場全体の流動性を高める措置を講じている。流動性の上昇は金利の低下にもつながり、政府の利払い負担の軽減や経済への好影響が期待される。
 
米財務省は今回の措置を、長期ゾーンで「より手厚い流動性支援を提供したい」という意向を反映した措置だ、と説明している。
 
しかし一般には、今回の措置は、長期金利の上昇を牽制する狙いで行われた市場介入との見方が広がっている。30年国債利回りは足もとで5%を大きく上回っている。長期金利の上昇は住宅ローンの金利上昇につながり、米国経済に悪影響を与える。また、それは国民には不人気であることから、トランプ政権は11月の中間選挙に向けて、長期金利の上昇を警戒していると考えられている。
 
今回の措置の発表を受けて、19日に米30年国債利回りは1日で約0.1ポイント低下した。その影響は日本にも及び、日本の10年国債利回りが3%台に乗ることを食い止めている(コラム「長期金利の大幅上昇をもたらす財政悪化リスク」、2026年8月20日)。
 
10年~30年債の買い戻し額が2倍となると仮定すると、2か月間での買い入れ増加額は107億ドル程度と試算できる。これは、米国債全体の発行残高約39兆ドルのわずか0.03%に過ぎない。今回の措置が米国債の需給に与える直接的な影響は限定的だ。

市場介入姿勢を強めるトランプ政権

しかし、トランプ政権は、7月末に日米協調介入を行い、為替市場で円買いを行った。それに続いて債券市場で米国債の買い戻しを増額したことで、金融市場では介入姿勢が強まっていることが意識されている。それが今後の金融市場に一定程度の影響力を持つだろう。
 
一連の市場介入は、トランプ政権が貿易赤字の拡大につながるドル高円安を回避することとともに、米経済に悪影響をもたらしかねない長期金利の上昇を回避することを強く志向していることの表れだろう。
 
トランプ政権は、ドル高円安と長期金利上昇の回避に向け、その震源地ともなっている日本の動向への注目を一段と強めるのではないか。
 
例えば日本で10年国債利回りが3%の大台に乗る、ドル円レートが1ドル160円台に乗るタイミングで、円安、長期金利上昇を引き起こす財政政策の修正を高市政権に求める可能性がある。トランプ政権は、金融市場への介入を強めるとともに、日本の政策への介入も強める方向にあると考えられる。
 
(参考資料)
“Bessent Leans Into His Role as America’s Bond Trader in Chief”, August 20, 2026, Wall Street Journal

プロフィール

  • 木内 登英のポートレート

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。