長期金利の上昇を受けて個人向け国債の税制優遇措置が検討される
財務省と金融庁は、今月内にもまとめる2027年度の税制改正要望に、個人向け国債の税制優遇措置を盛り込む方針を固めた。具体的には、個人向け国債を少額投資非課税制度(NISA)の対象に加えることや、個人向け国債にかかる相続税を減免することなどが検討されるとみられる(コラム「国債は新NISAの対象となるか?」、2026年7月22日)。
こうした議論が出てきた背景には、足もとでの長期金利の上昇を抑制すること、日本銀行が国債保有残高を削減していくなか、個人投資家を新たな国債保有者にすることで長期金利の上昇を抑えること、といった政府の狙いに加えて、長期金利の上昇によって個人向け国債の投資対象としての魅力が高まり、需要が増加しているという事情もあるだろう。
さらに、日本の長期金利上昇が米国に波及することを警戒する米政権への配慮と、個人の投資対象を海外資産から国内資産に向けることで、円安を抑制する狙いもあると考えられる。
こうした議論が出てきた背景には、足もとでの長期金利の上昇を抑制すること、日本銀行が国債保有残高を削減していくなか、個人投資家を新たな国債保有者にすることで長期金利の上昇を抑えること、といった政府の狙いに加えて、長期金利の上昇によって個人向け国債の投資対象としての魅力が高まり、需要が増加しているという事情もあるだろう。
さらに、日本の長期金利上昇が米国に波及することを警戒する米政権への配慮と、個人の投資対象を海外資産から国内資産に向けることで、円安を抑制する狙いもあると考えられる。
安全資産としての魅力が高い個人向け国債
個人向け国債は、証券会社や銀行などを通じて1万円から購入することができる。利率が半年ごとに変わる変動10年債、利率が一定の固定5年債と固定3年債の3種類がある。発行後1年が経過すれば途中で換金もできるが、その際に、国が元本と最低金利の年率0.05%を保証する。
普通国債と比べて個人向け国債は価格リスクが限定されており、安全資産としての魅力が高い商品となっている。そのため、利回りは普通国債よりも低くなる。9月発行分の利回りは変動10年債で1.87%と10年普通国債の利回りよりもかなり低くなっている。
普通国債と比べて個人向け国債は価格リスクが限定されており、安全資産としての魅力が高い商品となっている。そのため、利回りは普通国債よりも低くなる。9月発行分の利回りは変動10年債で1.87%と10年普通国債の利回りよりもかなり低くなっている。
税優遇措置に3つの課題
しかし、国債をNISAの対象に加えることや、個人向け国債にかかる相続税を減免することなどの個人向け国債への税制優遇措置が、年末の税制改正大綱に盛り込まれるかどうかはまだ分からない。それには幾つかの課題があり、自民党内でも慎重な意見が少なくないためだ。
第1の課題は、個人向け国債をNISAの対象にすることは、「貯蓄から投資へ」との理念のもと、個人が資金をシフトさせ、企業にリスクマネーを提供して経済を活性化させるという制度の趣旨に反する面があるという点だ。個人向け国債は安全資産であり、一定の利回りが得られるという点において銀行預金に近い金融商品だ。
第2の課題は、個人向け国債に税制優遇措置を適用すると、税収が減ってしまうことだ。その分、国債発行が増えれば、狙いとは逆に長期金利を上昇させてしまう恐れもある。
第3の課題は、銀行預金に対して個人向け国債の魅力がより高まることから、銀行預金の流出を促し、それが銀行経営を不安定にさせる可能性があることだ。9月発行分の利回りは変動10年債で1.87%であるが、これはメガバンクの10年物定期預金の1.25%程度を既に上回っている。これに税制優遇措置が加われば、銀行預金から個人向け国債への資金シフトが加速する可能性がある。
第1の課題は、個人向け国債をNISAの対象にすることは、「貯蓄から投資へ」との理念のもと、個人が資金をシフトさせ、企業にリスクマネーを提供して経済を活性化させるという制度の趣旨に反する面があるという点だ。個人向け国債は安全資産であり、一定の利回りが得られるという点において銀行預金に近い金融商品だ。
第2の課題は、個人向け国債に税制優遇措置を適用すると、税収が減ってしまうことだ。その分、国債発行が増えれば、狙いとは逆に長期金利を上昇させてしまう恐れもある。
第3の課題は、銀行預金に対して個人向け国債の魅力がより高まることから、銀行預金の流出を促し、それが銀行経営を不安定にさせる可能性があることだ。9月発行分の利回りは変動10年債で1.87%であるが、これはメガバンクの10年物定期預金の1.25%程度を既に上回っている。これに税制優遇措置が加われば、銀行預金から個人向け国債への資金シフトが加速する可能性がある。
国債の安定消化と金利の安定を目指す政府の取り組み
このように、個人向け国債への税制優遇措置には課題がある。そのため、実現するかどうかはまだ分からない。
一方で財務省は、個人向け国債の商品性を高めることで販売の拡大を目指している。5月に開いた研究会では、個人向けにインフレ連動国債や1年未満の年限が短い個人向け国債など、個人のニーズを掘り起こす新たな個人向け国債の商品化が提案されている。
国債発行が増加する一方、日本銀行が保有国債の削減を進めるもとでは、国債を個人にもっと多く保有してもらうことが、国債の安定消化と金利の安定の観点から重要だ。政府は、税制面での措置に限らず、価格の安定性や流動性といった観点から、個人のニーズによる適合する国債を提供していくことが重要だ。
また、円安・物価高による国債の価格下落、財政悪化による価格下落のリスクを、個人は警戒しているとみられる。この点から、市場の信認に十分に配慮した財政政策運営を進めていくことも、国債の個人保有を広げていくためには欠かせない。
(参考資料)
「個人向け国債に税優遇 財務省など要望へ、与党には慎重論」、2026年8月21日、日本経済新聞
「個人向け国債とは 元本保証で安全、金利上昇で人気に-きょうのことば」、2026年8月20日、日本経済新聞電子版
「個人国債の発行4兆円 4~8月、金利上昇で最高ペース」、2026年8月14日、日本経済新聞
一方で財務省は、個人向け国債の商品性を高めることで販売の拡大を目指している。5月に開いた研究会では、個人向けにインフレ連動国債や1年未満の年限が短い個人向け国債など、個人のニーズを掘り起こす新たな個人向け国債の商品化が提案されている。
国債発行が増加する一方、日本銀行が保有国債の削減を進めるもとでは、国債を個人にもっと多く保有してもらうことが、国債の安定消化と金利の安定の観点から重要だ。政府は、税制面での措置に限らず、価格の安定性や流動性といった観点から、個人のニーズによる適合する国債を提供していくことが重要だ。
また、円安・物価高による国債の価格下落、財政悪化による価格下落のリスクを、個人は警戒しているとみられる。この点から、市場の信認に十分に配慮した財政政策運営を進めていくことも、国債の個人保有を広げていくためには欠かせない。
(参考資料)
「個人向け国債に税優遇 財務省など要望へ、与党には慎重論」、2026年8月21日、日本経済新聞
「個人向け国債とは 元本保証で安全、金利上昇で人気に-きょうのことば」、2026年8月20日、日本経済新聞電子版
「個人国債の発行4兆円 4~8月、金利上昇で最高ペース」、2026年8月14日、日本経済新聞
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。