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2027年度予算編成に向けた各省庁の概算要求が、8月31日に締め切られた。一般会計の要求総額は140兆円超になったと見られる。日本経済新聞は、143兆円前後と報じている。その場合、2026年度の概算要求総額の122.4兆円を、20兆円程度上回ることになる。この規模は、コロナショック時に匹敵するものであり、平時としては異例の規模だ。
 
高市首相は、経常的な支出は補正予算ではなく当初予算に盛り込む考えを示している。そのことが、概算要求を膨らませる要因となっている。
 
ただし、高市政権の下で作られた2025年度補正予算と2026年度当初予算を足し合わせた140.6兆円をも上回る規模となっており、概算要求を膨らませているのは、この補正予算の要因だけではない。
 
高市首相は、危機管理・成長投資の新たな予算枠にはシーリングを設けず、いわゆる「青天井」とした。経済産業省の概算要求に新たな投資枠が約4.5兆円計上されたが、他省庁も含めた新たな投資枠の合計は、約7.6兆円に及ぶと試算される(コラム「来年度予算の歳出増加・減税試算:20兆円超の財政収支の大幅悪化要因に」、2026年8月24日)。
 
投資枠以外に一般会計総額を大きく拡大させるとみられるのが、防衛費と国債費だ。防衛費は現時点での概算で4.2兆円、長期金利上昇の影響などで国債費は5.3兆円、それぞれ2026年度比で拡大することが予想される。他の要因も加えて合計すると、2027年度の一般会計増額は、2026年度から19兆円程度拡大すると試算される(図表)。
 
ただし、新たな投資枠には金額を示さない「事項要求」を多く含む。そのため、最終的な一般会計はさらに増額される可能性もある。
 
一方、歳入面では食料品の消費税率の8%から1%への引き下げが2027年度に予定されている。これは、約4.4兆円の減収要因となる。
 
政府はその財源を確保する方針だが、実際にはかなり難しいだろう。食料品の消費税率引き下げの財源が確保できない場合には、その分、2027年度の財政収支は2026年度と比べてさらに悪化する。最終的な財政収支悪化の規模は、物価高による税収増加を考慮に入れても、22兆円を超えることになる計算だ。
 
これは、まさに、平時としては異例の財政悪化となる。そうした見通しは、円安・債券安など金融市場の安定を損ねるものとなり、それを通じて経済や国民生活にも悪影響を及ぼすことになるだろう。
 
図表 2027年度予算での歳出増加、歳入減少要因の試算

(参考資料)
「概算要求、過去最大の143兆円前後 『補正予算と一体』で20兆円増」、2026年8月31日、日本経済新聞電子版

プロフィール

  • 木内 登英のポートレート

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。