100%を超えた9月の0.25%利上げ確率
9月2日の金融市場(OIS市場)では、9月17・18日の次回金融政策決定会合での0.25%幅での利上げ確率が、計算上、100%を僅かに超えた。これは、0.25%の利上げの可能性をほぼ織り込んだうえ、0.5%などより大幅な利上げの可能性を部分的に織り込んだ結果だ。日本銀行の利上げ観測の一段の高まりを受けて、2日の海外市場でドル円レートは1ドル158円台まで円高が進んだ。ただし実際には、利上げ幅が0.5%となる可能性は低いとみられる。
また、日本銀行の政策金利のターミナルレート(到達点)の見通しについても足もとで切り上げられる傾向がみられ、一部には2.5%との予想も出ている。しかし、これについても行き過ぎなのではないか。
金融市場で大幅な利上げやターミナルレートの見通しの大幅切り上げが進む背景には、10年国債で3%を超えた長期金利の大幅上昇があるだろう。確かに、長期金利の上昇が期待インフレ率の上昇によって引き起こされる場合には、それは中央銀行の金融引き締め姿勢を強化させる。中央銀行の物価安定への対応が後手に回っていること、つまり「ビハインド・ザ・カーブ」のリスクがあるからだ。
しかし、日本で足もとに見られる長期金利の上昇は、インフレリスクではなく財政リスクの高まりによって生じている面の方が大きいとみられる。こうしたタイプの長期金利の上昇は、経済にも悪影響を及ぼすことから、日本銀行の金融引き締め姿勢を強化させるとは単純には言えないだろう。
また、日本銀行の政策金利のターミナルレート(到達点)の見通しについても足もとで切り上げられる傾向がみられ、一部には2.5%との予想も出ている。しかし、これについても行き過ぎなのではないか。
金融市場で大幅な利上げやターミナルレートの見通しの大幅切り上げが進む背景には、10年国債で3%を超えた長期金利の大幅上昇があるだろう。確かに、長期金利の上昇が期待インフレ率の上昇によって引き起こされる場合には、それは中央銀行の金融引き締め姿勢を強化させる。中央銀行の物価安定への対応が後手に回っていること、つまり「ビハインド・ザ・カーブ」のリスクがあるからだ。
しかし、日本で足もとに見られる長期金利の上昇は、インフレリスクではなく財政リスクの高まりによって生じている面の方が大きいとみられる。こうしたタイプの長期金利の上昇は、経済にも悪影響を及ぼすことから、日本銀行の金融引き締め姿勢を強化させるとは単純には言えないだろう。
利上げペースは加速
9月17・18日の次回金融政策決定会合では、0.25%の利上げが実施される可能性がかなり高いだろう。従来の利上げの間隔が平均で半年強であったことを踏まえれば、それは利上げペースの加速を意味する。
7月末の日米協調介入実施後は、トランプ政権は日本の政策への注文、圧力を強めている。ベッセント米財務長官はG20財務相・中央銀行総裁会議での植田総裁との会談でも、ドル高・円安修正につながる日本銀行の利上げに強い期待を表明した(コラム「米財務省がベッセント財務長官と植田総裁の会談内容を公表」、2026年9月2日)。これは、日本銀行の早期の利上げを後押しするだろう。
また、ベッセント財務長官は、昨年の高市政権発足以降、日本銀行の利上げを牽制すると円安傾向が強まってしまう、と政権に苦言を呈してきた。ベッセント財務長官の、日本銀行の利上げに期待するとの発言には、日本銀行の利上げを妨げないようにとする、高市政権に対するメッセージも込められているのではないか。これも、日本銀行に金融政策のフリーハンドを与えることになり、9月の利上げを後押しする要因だ。
ただしそればかりでなく、中東情勢の緊迫化を受けた原油価格高騰による物価上昇率の上振れが、利上げペースの加速を後押しするだろう。日本銀行は、緩和の調整のタイミングやペースについては、中東情勢、AI需要、円安の3つの要因が影響すると説明している。足もとでは、原油高と円安が進んでおり、利上げペースの加速を後押しする外部環境となっている。
7月末の日米協調介入実施後は、トランプ政権は日本の政策への注文、圧力を強めている。ベッセント米財務長官はG20財務相・中央銀行総裁会議での植田総裁との会談でも、ドル高・円安修正につながる日本銀行の利上げに強い期待を表明した(コラム「米財務省がベッセント財務長官と植田総裁の会談内容を公表」、2026年9月2日)。これは、日本銀行の早期の利上げを後押しするだろう。
また、ベッセント財務長官は、昨年の高市政権発足以降、日本銀行の利上げを牽制すると円安傾向が強まってしまう、と政権に苦言を呈してきた。ベッセント財務長官の、日本銀行の利上げに期待するとの発言には、日本銀行の利上げを妨げないようにとする、高市政権に対するメッセージも込められているのではないか。これも、日本銀行に金融政策のフリーハンドを与えることになり、9月の利上げを後押しする要因だ。
ただしそればかりでなく、中東情勢の緊迫化を受けた原油価格高騰による物価上昇率の上振れが、利上げペースの加速を後押しするだろう。日本銀行は、緩和の調整のタイミングやペースについては、中東情勢、AI需要、円安の3つの要因が影響すると説明している。足もとでは、原油高と円安が進んでおり、利上げペースの加速を後押しする外部環境となっている。
基調的な物価上昇率が2%を超えてしまうリスク
植田総裁は、政策金利の据え置きを決めた7月の決定会合後の記者会見で、「基調的な物価上昇率が2%を超えて上振れていくリスク」があるという点を強調し、そうならないように、利上げのペースを上げる可能性に言及した。
植田総裁は、基調的な物価上昇率が2%の水準に近づいてきたがゆえに、さらに上振れると2%を超えてしまう可能性があるとし、2%の物価目標達成の観点から、この局面での基調的な物価上昇率の上振れリスクは、従来よりも重要な意味を持つ、と説明した。
こうした植田総裁の発言は、金融市場で利上げペースが加速するとの見方を後押しした。
植田総裁は、基調的な物価上昇率が2%の水準に近づいてきたがゆえに、さらに上振れると2%を超えてしまう可能性があるとし、2%の物価目標達成の観点から、この局面での基調的な物価上昇率の上振れリスクは、従来よりも重要な意味を持つ、と説明した。
こうした植田総裁の発言は、金融市場で利上げペースが加速するとの見方を後押しした。
利上げペースの加速は原油高への一時的対応の可能性も
ただし、利上げペースの加速は、原油価格高騰による物価上昇率の一時的な上振れへの対応という側面が強く、必ずしも持続的なものではないと考えられる。
今年2月末の米国・イスラエルによるイラン攻撃を契機に、原油価格は高騰した。通常、原油価格の上昇は数か月後から半年程度の時間をかけて、国内製品の価格上昇をもたらす。既に7月の消費者物価統計では、エネルギー関連以外の価格にも影響の広がりが確認できている。
しかし、食料品などを中心に2年から3年後に遅れて国内物価の上昇をもたらす円安とは異なり、原油価格上昇の影響はもっと短期間で現れ、短期間で終息する傾向がある。さらなる原油価格の上昇や円安進行がない場合には、原油価格の高騰に起因する値上げは、今年10月頃がピークとなり、年末から来年初にかけては次第に落ち着いてくることが予想される。
前述のように、基調的な物価上昇率が2%に近づいたと考えると、この局面からの基調的な物価上昇率の上振れを日本銀行は容認できないことになる。
しかし、基調的な物価上昇率は目標の2%に近づく中、それに合わせて政策金利も経済・物価に対する中立水準に近づいていることになるだろう。こうした局面では、物価上昇率が上振れて目標を上回ってしまうリスクに配慮するのと同時に、政策金利が中立水準を上回り、経済と物価の下方リスクを高めてしまうことにも配慮する必要がある。
実際に、植田総裁は9月2日(日本時間)のG20財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で、利上げの影響は累積的に出てくることから、政策運営を慎重に判断する、とも発言し、基調的な物価上昇率が2%を超える上振れリスクへの対応と、政策金利が中立水準に近づくなか、利上げが経済を悪化させてしまう下振れリスクへの対応のバランスをとる考えを示している。
こうした点を考慮すれば、利上げペースの加速は、原油価格高騰による物価上昇率の一時的な上振れへの対応になると予想される。金融市場では9月の決定会合での利上げに続き、12月の決定会合でも利上げが行われるとの見通しも出てきている。その場合、政策金利は現状の1.0%から1.5%まで上昇することになるが、1.75%~2.0%と考えられるターミナルレート(政策金利の到達点)はまだ先だ。利上げペースが加速する局面は、次の2回の利上げまでと見ておきたい。
今年2月末の米国・イスラエルによるイラン攻撃を契機に、原油価格は高騰した。通常、原油価格の上昇は数か月後から半年程度の時間をかけて、国内製品の価格上昇をもたらす。既に7月の消費者物価統計では、エネルギー関連以外の価格にも影響の広がりが確認できている。
しかし、食料品などを中心に2年から3年後に遅れて国内物価の上昇をもたらす円安とは異なり、原油価格上昇の影響はもっと短期間で現れ、短期間で終息する傾向がある。さらなる原油価格の上昇や円安進行がない場合には、原油価格の高騰に起因する値上げは、今年10月頃がピークとなり、年末から来年初にかけては次第に落ち着いてくることが予想される。
前述のように、基調的な物価上昇率が2%に近づいたと考えると、この局面からの基調的な物価上昇率の上振れを日本銀行は容認できないことになる。
しかし、基調的な物価上昇率は目標の2%に近づく中、それに合わせて政策金利も経済・物価に対する中立水準に近づいていることになるだろう。こうした局面では、物価上昇率が上振れて目標を上回ってしまうリスクに配慮するのと同時に、政策金利が中立水準を上回り、経済と物価の下方リスクを高めてしまうことにも配慮する必要がある。
実際に、植田総裁は9月2日(日本時間)のG20財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で、利上げの影響は累積的に出てくることから、政策運営を慎重に判断する、とも発言し、基調的な物価上昇率が2%を超える上振れリスクへの対応と、政策金利が中立水準に近づくなか、利上げが経済を悪化させてしまう下振れリスクへの対応のバランスをとる考えを示している。
こうした点を考慮すれば、利上げペースの加速は、原油価格高騰による物価上昇率の一時的な上振れへの対応になると予想される。金融市場では9月の決定会合での利上げに続き、12月の決定会合でも利上げが行われるとの見通しも出てきている。その場合、政策金利は現状の1.0%から1.5%まで上昇することになるが、1.75%~2.0%と考えられるターミナルレート(政策金利の到達点)はまだ先だ。利上げペースが加速する局面は、次の2回の利上げまでと見ておきたい。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。