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政権運営の骨格は維持

高市首相は17日午後、同日に発表した内閣改造と前日の自民党役員人事を受けて、首相官邸で記者会見を行った。
 
党役員人事では、麻生副総裁、鈴木幹事長が留任、改造内閣では、主要ポストで茂木外務大臣、片山財務大臣、赤沢経産大臣、小泉防衛大臣、上野厚生労働大臣、城内経済財政担当大臣らが留任となり、政権運営の骨格が維持された。高市首相が、安定した政権運営の下で2027年の自民党総裁選での再選を狙う布陣とも指摘されている。
 
内閣改造での人選について、高市首相は3つのポイントを挙げた。第1が、実行力重視だ。当選回数にこだわらず、やる気、専門性に配慮した、とした。第2が、選挙に強いことだ。これは、過去2回の国政選挙を勝ち抜いた、いわゆる不記載議員の登用についての説明とみられる。第3が、継続性だ。外交、通商などで海外のカウンターパートとの関係の継続が重要なポストについては留任させた、としている。これについては、米国政府と調整して為替市場で日米協調介入などを実現させた片山財務大臣を主に念頭に置いた説明だったのではないか。

主要ポストで留任が目立った今回の人事について2つの解釈

主要ポストで留任が目立った今回の人事については、高市首相が掲げてきた政策をさらに推進することを狙ったもの、との解釈もある。高市首相は記者会見で、第2次高市改造内閣を「決断と挑戦、実行の内閣」と表現し、新たな政策が実行のステージに入ったと説明した。
 
一方で、高市首相が掲げる政策を前進させる狙いがあるのであれば、高市首相の政策により強く賛同する人物を主要ポストに据えたのではないか、との見方もある。それは、主に財務大臣、経済財政担当大臣らのポストについての指摘だ。また、留任となった麻生副総裁、鈴木幹事長は、基本的には財政規律を重視する姿勢であり、高市政権の積極財政を強くは支持していないとみられる。
 
実際にそうした人事が行われなかったのは、財政悪化懸念から金融市場で円安・債券安が進むことを警戒した可能性、消費税率引き下げに反対するなど自民党内の財政健全派に配慮した可能性、円安・債券安を警戒するトランプ政権に配慮した可能性、の3つが考えられる。特に片山財務大臣の留任については、トランプ政権への配慮がうかがえる。
 
仮にそうであれば、今回の人事は、高市首相が金融緩和、積極財政等の政策姿勢を修正する兆候であるとの見方もできるだろう(コラム「内閣改造・党役員人事から高市政権の今後の政策姿勢を読む」、2026年9月14日)。

アベノミクスのレガシーは修正されるか

ただし、記者会見では、「責任ある積極財政」の修正を示唆するような発言は高市首相から聞かれなかった。財政悪化を警戒して長期金利が上昇するなどの金融市場の動きへの対応を問われると、高市首相は市場とのコミュニケーションが重要であり、市場に対して「責任ある積極財政」の考えを丁寧に説明していくことが重要と答えた。
 
しかし、金融市場が期待しているのは、政策の丁寧な説明や「責任ある」「財政の持続性」といった言葉ではなく、実際に、金融市場の安定回復に資する具体的な政策の見直しなのではないか。
 
高市首相は、消費税率引き下げの財源については、赤字国債に頼らないことを再度強調した上で、「財源確保の見通しは立っている」と説明した。見通しが立っているのであれば、なぜ、具体策がいまだ全く示されていないのか。
 
日本銀行の金融政策、独立性についての質問に対して高市首相は、「金融政策の具体的手法は日銀に委ねられている」「日銀が政府と密接に連携し2%の物価目標の持続的で安定的な達成を目指し適切な政策運営を行うことを期待する」と、従来通りの公式見解を繰り返した。トランプ政権が望んでいるとみられる、政府が日本銀行の独立性をより尊重し、利上げを制約しないとの姿勢に転じるのかどうかはまだ明らかではない。
 
円安・債券安による物価高と長期金利の上昇は、経済と国民生活の安定を損ねている面があるとみられる。この円安・債券安を食い止めるためには、高市政権の積極財政、積極金融緩和というアベノミクスのレガシーを修正することが必要だろう。
 
ただし現時点で、高市政権がこうした政策姿勢の修正に向かっているかどうかについてはなお不確実だ。

プロフィール

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    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。