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「就業者負担軽減支援金」の対象は年収100万~350万円が「一つの参考」

10月20日に、飲食料品の消費税率を引き下げる法案と、所得連動の「就業者負担軽減支援金」を設ける法案の2本が、衆院本会議で同時に審議入りした。高市首相は両法案の早期成立を目指す考えを示し、2年後には税率を確実に8%へ戻すと強調した。
 
一方、支援金の対象となる所得水準・支給額と、2年間で約10兆円に上る減税の財源については、引き続き示されなかった。与党は11月上旬の衆院通過と、12月12日の会期末までの法案成立を目指している。
 
高市首相は20日の衆院本会議で、2年後の消費税率について、「2年後には責任をもって確実に税率を元に戻す」と答えた。与党として党議決定しているため、その間首相が代わっても、自民・維新の首相なら誰でも同じ対応になる、と説明した。
 
また、高市首相は、景気を理由にした延期は考えておらず、(税率を戻すことを延期するために)国民の信を問うことも想定していないと述べた。税率を戻す時期に支援金が本格導入され、中低所得の働き手の手取りが増えるため、との説明である。ただし、大規模災害や感染症の拡大時は「臨機応変に判断する」とした。
 
支援金の対象と金額について、首相は14日の衆院予算委員会で、欧米の例から就業者の3割、約2,000万人を「一つの参考」として示し、所得上限は今後検討するとしていた。20日の答弁では、20日の本会議では、税・社会保険料負担の国際比較を踏まえ、年収100万~350万円を「一つの参考」として示した。ただし、この範囲を支給対象の基準とは明言しておらず、対象や支給額の詳細は今後の審議を踏まえて検討するとした。
 
首相は前日19日の参院予算委では「国債の発行を否定するものではない」と述べ、消費税減税の財源に国債を充てる可能性を示唆したとも受け止められた(コラム「高市首相が消費税減税の財源を国債発行で賄う可能性を示唆か」、2026年10月20日)。
 
その後、官房長官は「従来の政府の方針に変わりはない」と述べ、首相もXで「予算編成全体についての発言だ」と説明した。

主要野党は減税よりも給付で足並みが揃う方向

消費税減税・支援金法案を受けて、主要野党は「2年だけの減税より、まず給付」で主張が揃いつつある。ただし対象と金額は、党ごとに異なる。
 
国民民主党は審議入り当日の20日に、対案の「給付付き現役世代減税法案」を提出した。同党は本会議で、政府案について、減税には賛成としつつも税率が8%に戻る際の「中間層大増税」と批判した。また、年収300万円前後を境に支援金を受け取れる人と受け取れない人が分かれること、減税開始までの低所得者対策の空白や、年金生活者が支援金の対象外になる点も問題としている。
 
対案として同党は、住民税の控除額を117万円から178万円(2028年度以降)に引き上げ、1人年5万円程度の恒久減税を実施すること、年収178万円以下の就業者には収入に応じて給付することを示した。
 
公明党の西田幹事長は、「現状のままでは賛成できない」とした。また、給付で一致する4党で「何らかの連携をしていきたい」と述べた。
 
同党は、減税分の約10兆円を充て、2年間で1人約8万円を給付する対案を示している。
 
民主改革の会は、政府案では支援金の数字と消費税減税の財源が示されていないことを批判しているが、現時点では独自案は確認されていない。一方小川代表は、公明案に共感を示している。
 
立憲民主党は、財源次第で政府案に反対することを示唆している。2026年度内に住民税非課税世帯へ給付し、2027年4月から中間層に拡大、2029年4月以降は給付付き税額控除を導入することを主張する。
 
日本共産党は、全品目の消費税率を一律5%に引き下げ、恒久減税とすることを提案し、その財源は大企業・富裕層への課税としている。
 
チームみらいは消費税減税に一貫して反対の姿勢であり、減税に代えて所得連動型給付と子育て加算を主張する。
 
参政党は、政府案に賛成できないとし、飲食料品に限らない、より広い消費税減税を主張する。

今後の審議の見通し

法案成立のカギは参院にある。与党は参院で過半数に4議席足りない状況だ。参院で2議席を持つ日本保守党は19日に政府の法案に賛成を表明したが、それでもなお無所属議員の取り込みが必要とされる。参院の野党は簗前農相の問責決議案で結束した経緯もあり、野党が給付で共闘すれば否決の可能性が出てくるだろう。
 
報道によれば、政府は支援金の対象の線引きを交渉材料とみている。与党が譲歩する余地としては次の3点が考えられる。第1は、支援金の所得上限・下限を広げ、中間層や現役世代を手厚くすることだ。これは、国民民主・立民の主張と重なる。
 
第2に、減税開始までのつなぎとして当面の給付を上乗せする。野党の間では予備費の活用を主張する声がある。
 
第3に、食料品の消費税率引き下げで打撃を受ける、外食・農家への支援を拡充する。
 
これら3つの妥協では、いずれも歳出額は増える。財源が示されないまま、歳出が上積みされていけば、円安・債券安などの金融市場の動揺を引き出しやすい。12月12日の会期末に向けては、法案審議の行方と来年度予算の政府案の策定を睨んで、金融市場の財政懸念は続く。

プロフィール

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    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。