暗号資産現物ETFの相次ぐ新規上場
2025年10月28日から29日にかけて、米国の2つの証券取引所に4銘柄の暗号資産現物ETF(上場投資信託)が、新たに上場された(図表)。これらは、ソラナ(SOL)、ライトコイン(LTC)、ヘデラ(HBAR)といった、従来、米国の証券取引所に上場する現物ETFが組成されていなかった暗号資産を裏付け資産とするETFである。
なお、SOLは、イーサリアム(ETH)などで採用されてきたプルーフ・オブ・ステーク(PoS)コンセンサスに加えて、プルーフ・オブ・ヒストリー(PoH)コンセンサスを導入することで高速処理を実現したブロックチェーンのネイティブ・トークンだとされる。一方、LTCは、「ビットコイン(BTC)の軽量版」として考案された暗号資産である。また、HBARは、ブロックチェーンとは異なる公開分散型台帳技術として開発されたハッシュグラフの公開実装版であるヘデラ・ネットワークのネイティブ・トークンだとされる。
これまで米国の証券取引所に上場された暗号資産現物ETF(注1)としては、2024年1月上場のBTC現物ETF(3取引所11銘柄)、同年5月上場のETH現物ETF(3取引所8銘柄)が広く知られている(注2)。その後、2025年7月2日には、REX-Osprey Solana + Staking ETF(ティッカー・シンボル:SSK)がCboeグループのBZX取引所に上場された。この商品は、SOL現物を50%以上保有しながらステーキングによる利益獲得も目指すというものだが(注3)、SOL現物価格と連動するパフォーマンスを目指す米国外のETPへの投資も行うというもので、厳密には暗号資産現物ETFとは言えない。
また、9月18日には、REX-Osprey XRP ETF(ティッカー・シンボル:XRPR)が、SSKと同様にCboe BZX取引所に上場された。これは、リップルが組成した暗号資産で、国際送金の手段としての活用を目指すXRP現物やXRP現物の価格と連動するデリバティブ等の資産に純資産の80%以上を投資するものである。必ずしもXRP現物の価格と完全に連動するパフォーマンスを目指すものではないとされている。
なお、SOLは、イーサリアム(ETH)などで採用されてきたプルーフ・オブ・ステーク(PoS)コンセンサスに加えて、プルーフ・オブ・ヒストリー(PoH)コンセンサスを導入することで高速処理を実現したブロックチェーンのネイティブ・トークンだとされる。一方、LTCは、「ビットコイン(BTC)の軽量版」として考案された暗号資産である。また、HBARは、ブロックチェーンとは異なる公開分散型台帳技術として開発されたハッシュグラフの公開実装版であるヘデラ・ネットワークのネイティブ・トークンだとされる。
図表 新たに上場された暗号資産現物ETF


これまで米国の証券取引所に上場された暗号資産現物ETF(注1)としては、2024年1月上場のBTC現物ETF(3取引所11銘柄)、同年5月上場のETH現物ETF(3取引所8銘柄)が広く知られている(注2)。その後、2025年7月2日には、REX-Osprey Solana + Staking ETF(ティッカー・シンボル:SSK)がCboeグループのBZX取引所に上場された。この商品は、SOL現物を50%以上保有しながらステーキングによる利益獲得も目指すというものだが(注3)、SOL現物価格と連動するパフォーマンスを目指す米国外のETPへの投資も行うというもので、厳密には暗号資産現物ETFとは言えない。
また、9月18日には、REX-Osprey XRP ETF(ティッカー・シンボル:XRPR)が、SSKと同様にCboe BZX取引所に上場された。これは、リップルが組成した暗号資産で、国際送金の手段としての活用を目指すXRP現物やXRP現物の価格と連動するデリバティブ等の資産に純資産の80%以上を投資するものである。必ずしもXRP現物の価格と完全に連動するパフォーマンスを目指すものではないとされている。
暗号資産に厳しい姿勢を示したSEC
米国証券市場の規制・監督機関である証券取引委員会(SEC)は、2024年までは、暗号資産やその関連金融商品の取引拡大に対して、極めて厳しい姿勢をとっていた。
SECは、ジョー・バイデン前大統領の指名を受けて就任したゲーリー・ゲンスラー委員長の下、ICO (Initial Coin Offering)によって組成された様々なトークンの発行を違法な無登録証券募集だとして制裁金を科したり、それらトークンの取引を取り扱う暗号資産交換業者に対して、違法な無登録証券取引所を運営したりしているとして訴訟を提起するといった法執行活動(エンフォースメント)を積極的に展開したのである(注4)。こうしたSECの規制手法に対しては、事前の明確なルールに基づかず、予測可能性の低い「エンフォースメントによる規制」だとの批判も寄せられた。
暗号資産現物ETFをめぐっても、2024年までのSECは、極めて冷淡な対応をとっていた。暗号資産の代表ともいえるBTCを裏付け資産とする現物ETFの上場は、最初の申請から8年以上を経て、ようやく認められたものである。しかも、上場承認の背景には、それまでのSECの対応を違法と断じる裁判所の判決による後押しがあった(注5)。BTC以外のアルトコインを裏付けとする暗号資産現物ETFについても、多数の上場申請が早くから行われていたが、ゲンスラー委員長の下で承認されたのは、ETH現物ETFだけであった。
SECは、ジョー・バイデン前大統領の指名を受けて就任したゲーリー・ゲンスラー委員長の下、ICO (Initial Coin Offering)によって組成された様々なトークンの発行を違法な無登録証券募集だとして制裁金を科したり、それらトークンの取引を取り扱う暗号資産交換業者に対して、違法な無登録証券取引所を運営したりしているとして訴訟を提起するといった法執行活動(エンフォースメント)を積極的に展開したのである(注4)。こうしたSECの規制手法に対しては、事前の明確なルールに基づかず、予測可能性の低い「エンフォースメントによる規制」だとの批判も寄せられた。
暗号資産現物ETFをめぐっても、2024年までのSECは、極めて冷淡な対応をとっていた。暗号資産の代表ともいえるBTCを裏付け資産とする現物ETFの上場は、最初の申請から8年以上を経て、ようやく認められたものである。しかも、上場承認の背景には、それまでのSECの対応を違法と断じる裁判所の判決による後押しがあった(注5)。BTC以外のアルトコインを裏付けとする暗号資産現物ETFについても、多数の上場申請が早くから行われていたが、ゲンスラー委員長の下で承認されたのは、ETH現物ETFだけであった。
トランプ政権下で変化するSEC
これに対して2025年1月に就任したドナルド・トランプ大統領は、大統領選挙の公約に「民主党の違法で非アメリカ的な暗号資産抑圧を終わらせる」という文言を盛り込み、ゲンスラー委員長を大統領就任初日に解任すると断言するなど、選挙期間中からSECによる暗号資産規制の大幅な修正を主張してきた(注6)。
トランプ大統領は、就任後直ちにホワイトハウスに省庁横断的な暗号資産規制見直し作業部会を設置し、米国を「暗号資産分野における世界の首都」にすると宣言した。ゲンスラーSEC委員長は、トランプ大統領の就任直前に辞任し、後任には、従来の暗号資産規制に批判的とされるポール・アトキンス元SEC委員が、トランプ大統領による指名を受けて4月21日に就任した。
トランプ大統領の就任直後から、SECによる暗号資産規制は、大きく変化し始めた。アトキンス氏の正式就任までの間、委員長代行を務めたマーク・ウエダ委員は、暗号資産業界に好意的な姿勢で知られ、「クリプト・マム(暗号資産の母)」の異名をとるへスター・ピアース委員を座長とする暗号資産規制見直しタスクフォースを設置した。ウエダ、ピアース両委員は、ゲンスラー委員長時代から、SECによる暗号資産規制に対して内部から批判を繰り広げていたことで知られている。
新体制に移行したSECは、大手暗号資産交換業者コインベースに対する訴訟を取り下げ、過去5年にわたって訴訟で争ってきたリップルとの和解を成立させるなど、「エンフォースメントによる規制」からの脱却を進めた。SECは、暗号資産を用いた詐欺的な投資勧誘等に対しては厳しい姿勢で臨むと強調しつつも、過剰とも思えるようなエンフォースメントを自粛するとともに、規制の内容を明確化するための情報発信に努めるようになったのである。
2月27日には、SEC企業金融局が、インターネット上のジョークに過ぎないとされる、いわゆるミームコインの発行は、原則的には証券法の規制を受ける投資契約(investment contract)といった有価証券の取引には該当しないとする声明文を公表した(注7)。そこでは、ミームコインの購入者は、何らかの事業に投資しているものではなく、もっぱら他人の努力によって利益が得られるという合理的な期待を抱いているわけではないため、有価証券を取得したとは言えないという見解が示された。
ここで注目されるのは、SECが、少なくともスタッフのレベルでは、かつての「エンフォースメントによる規制」でSEC側の主張の拠り所とされた、①資金の拠出、②共同事業、③事業から得られる収益の期待、④収益の獲得がもっぱら他者の努力による、の4つの要件が満たされれば、証券法上の証券の一種である「投資契約」が成立するという判例法理(ハウイ基準)の暗号資産取引への適用を取りやめたわけではないことである。ミームコインが有価証券ではないという結論は、あくまでハウイ基準から導き出されている。ハウイ基準の拡大解釈ともみなし得るようなエンフォースメントは行われなくなったが、暗号資産に証券法の規制が及ぼされる可能性そのものがなくなったわけではないことは、確認しておく必要があろう。
その後5月29日には、SEC企業金融局が、PoSによって新たに暗号資産を獲得するステーキングについて、証券法上の位置づけを明確化するための声明文を公表した(注8)。そこでは、ハウイ基準に依拠しながら、暗号資産の保有者が単独で行うステーキングだけでなく、第三者が保有者の代理人として行うステーキングや暗号資産交換業者などのサービス・プロバイダーが、複数の暗号資産保有者の保有する暗号資産を集めてステーキングを行う行為などについても、証券法の規制を受ける投資契約といった有価証券の取引には該当しないという見解が示された。
トランプ大統領は、就任後直ちにホワイトハウスに省庁横断的な暗号資産規制見直し作業部会を設置し、米国を「暗号資産分野における世界の首都」にすると宣言した。ゲンスラーSEC委員長は、トランプ大統領の就任直前に辞任し、後任には、従来の暗号資産規制に批判的とされるポール・アトキンス元SEC委員が、トランプ大統領による指名を受けて4月21日に就任した。
トランプ大統領の就任直後から、SECによる暗号資産規制は、大きく変化し始めた。アトキンス氏の正式就任までの間、委員長代行を務めたマーク・ウエダ委員は、暗号資産業界に好意的な姿勢で知られ、「クリプト・マム(暗号資産の母)」の異名をとるへスター・ピアース委員を座長とする暗号資産規制見直しタスクフォースを設置した。ウエダ、ピアース両委員は、ゲンスラー委員長時代から、SECによる暗号資産規制に対して内部から批判を繰り広げていたことで知られている。
新体制に移行したSECは、大手暗号資産交換業者コインベースに対する訴訟を取り下げ、過去5年にわたって訴訟で争ってきたリップルとの和解を成立させるなど、「エンフォースメントによる規制」からの脱却を進めた。SECは、暗号資産を用いた詐欺的な投資勧誘等に対しては厳しい姿勢で臨むと強調しつつも、過剰とも思えるようなエンフォースメントを自粛するとともに、規制の内容を明確化するための情報発信に努めるようになったのである。
2月27日には、SEC企業金融局が、インターネット上のジョークに過ぎないとされる、いわゆるミームコインの発行は、原則的には証券法の規制を受ける投資契約(investment contract)といった有価証券の取引には該当しないとする声明文を公表した(注7)。そこでは、ミームコインの購入者は、何らかの事業に投資しているものではなく、もっぱら他人の努力によって利益が得られるという合理的な期待を抱いているわけではないため、有価証券を取得したとは言えないという見解が示された。
ここで注目されるのは、SECが、少なくともスタッフのレベルでは、かつての「エンフォースメントによる規制」でSEC側の主張の拠り所とされた、①資金の拠出、②共同事業、③事業から得られる収益の期待、④収益の獲得がもっぱら他者の努力による、の4つの要件が満たされれば、証券法上の証券の一種である「投資契約」が成立するという判例法理(ハウイ基準)の暗号資産取引への適用を取りやめたわけではないことである。ミームコインが有価証券ではないという結論は、あくまでハウイ基準から導き出されている。ハウイ基準の拡大解釈ともみなし得るようなエンフォースメントは行われなくなったが、暗号資産に証券法の規制が及ぼされる可能性そのものがなくなったわけではないことは、確認しておく必要があろう。
その後5月29日には、SEC企業金融局が、PoSによって新たに暗号資産を獲得するステーキングについて、証券法上の位置づけを明確化するための声明文を公表した(注8)。そこでは、ハウイ基準に依拠しながら、暗号資産の保有者が単独で行うステーキングだけでなく、第三者が保有者の代理人として行うステーキングや暗号資産交換業者などのサービス・プロバイダーが、複数の暗号資産保有者の保有する暗号資産を集めてステーキングを行う行為などについても、証券法の規制を受ける投資契約といった有価証券の取引には該当しないという見解が示された。
暗号資産現物ETFに対する姿勢の変化
暗号資産現物ETFに対するSECの姿勢も変化した。SECは7月29日、暗号資産現物ETFについて、暗号資産現物による設定・解約を容認する命令を採択した(注9)。ETFは、裏付け資産現物で設定や解約が可能な商品構造をとることが珍しくない。例えば、株価指数に連動するETFを解約して指数に組み入れられている株式を受け取ったり、金価格に連動するETFを解約して金のインゴット(地金)を受け取ったりすることが可能となっていることがある。ところがSECは、BTC、ETHの現物ETFについては、暗号資産現物での設定・解約を認めていなかったのである。
裏付け資産現物での設定・解約が可能になると、ETF運用会社は投資者から受け入れた資金で現物を手当てしたり、現物を売却して資金化したりする必要が少なくなり、運用コストが低下する。実際、このSECによる命令以降、既に上場されている暗号資産現物ETFの仕組みを改め、現物設定・解約が可能なタイプに移行する動きも現れた。
裏付け資産現物での設定・解約が可能になると、ETF運用会社は投資者から受け入れた資金で現物を手当てしたり、現物を売却して資金化したりする必要が少なくなり、運用コストが低下する。実際、このSECによる命令以降、既に上場されている暗号資産現物ETFの仕組みを改め、現物設定・解約が可能なタイプに移行する動きも現れた。
政府機関閉鎖中の新規上場が実現
冒頭で紹介した新たな暗号資産現物ETFの上場だが、議会における与野党の対立から予算法案の審議が停滞し、SECを含む政府機関が閉鎖されている中で実現したことは異例とも言える。11月5日には、政府機関閉鎖の期間は過去最長の36日となった。
SECについてみれば、電子情報開示システムEDGARは通常通り稼働しているものの、その他の業務は、緊急対応を求められる事項に関するものを除き、ほぼ全面的に停止されている。
それにもかかわらず、これまでSECによる個別の承認を要してきたはずの暗号資産現物ETFの新規上場が実現した背景には、一つの規則改正があった。SECは9月17日、Nasdaq、Cboe BZX、 NYSEArca の3証券取引所が申請していた、コモディティを裏付けとする信託受益権証券(Trust Shares)について一般的な上場基準を設ける規則改正を承認したのである(注10)。
この制度変更により、一定の要件を満たす暗号資産現物ETFについては、従来とられていた個別の上場承認のための取引所規則改正手続きは不要となり、SECによる審査期間が240日から75日に短縮されることとなったのである。また、新たな手続きの適用を受ける商品を当初設定する場合には、新規株式公開(IPO)の場合にも必要となるフォームS-1(有価証券届出書)によるSECの登録を受けることが求められるが、1933年証券法は、SECに提出されたフォームS-1は、提出後20日の期間内にSECが異議を唱えなければ発効することになっている(8条(a)項)。いわゆる待期期間である。今回の新規上場は、SECによる審査が事実上機能しておらず、20日の待期期間が経過したことで、いわば自動的に実現したものと言える。
SECについてみれば、電子情報開示システムEDGARは通常通り稼働しているものの、その他の業務は、緊急対応を求められる事項に関するものを除き、ほぼ全面的に停止されている。
それにもかかわらず、これまでSECによる個別の承認を要してきたはずの暗号資産現物ETFの新規上場が実現した背景には、一つの規則改正があった。SECは9月17日、Nasdaq、Cboe BZX、 NYSEArca の3証券取引所が申請していた、コモディティを裏付けとする信託受益権証券(Trust Shares)について一般的な上場基準を設ける規則改正を承認したのである(注10)。
この制度変更により、一定の要件を満たす暗号資産現物ETFについては、従来とられていた個別の上場承認のための取引所規則改正手続きは不要となり、SECによる審査期間が240日から75日に短縮されることとなったのである。また、新たな手続きの適用を受ける商品を当初設定する場合には、新規株式公開(IPO)の場合にも必要となるフォームS-1(有価証券届出書)によるSECの登録を受けることが求められるが、1933年証券法は、SECに提出されたフォームS-1は、提出後20日の期間内にSECが異議を唱えなければ発効することになっている(8条(a)項)。いわゆる待期期間である。今回の新規上場は、SECによる審査が事実上機能しておらず、20日の待期期間が経過したことで、いわば自動的に実現したものと言える。
おわりに
米国の暗号資産業界では、今回ETFの裏付け資産となる暗号資産の多様化が進んだことで、今後、更に多様な暗号資産現物ETFが登場することへの期待感が高まっている。具体的には、イーサリアムに代わる分散型プラットフォームとなることも期待されるというカルダノのネイティブ・トークンであるADA、分散型金融(DeFi)やゲームファイ(GameFi)に特化したブロックチェーン・エコシステムだとされるアバランチのネイティブ・トークンであるAVAX、ミームコインの代表例とも言えるドージコイン(DOGE)といった暗号資産の現物ETFが登場する見通しとも言われる。
多くの機関投資家は、暗号資産交換業者を通じた暗号資産現物への投資には慎重な姿勢を示しているが、証券取引所に上場されるETFであれば投資対象になり得るとの見方があり、現物ETFが証券取引所に上場されると見込まれる暗号資産は、機関投資家による投資拡大を期待して価格が上昇したり暗号資産交換業者を通じた取引が拡大したりする傾向が見られる。
既に触れたように、SECは、暗号資産に対して証券法の規制が及ぶ可能性を全面的に否定しているわけではない。暗号資産規制の転換を積極的に進めるアトキンス委員長も、7月末に行った「デジタル金融革命における米国のリーダーシップ」と題する講演で、証券規制の対象となる暗号資産とそれ以外の線引きを明確にするとともに、証券規制の対象となる暗号資産に関する目的合理的な情報開示規制やその例外規定などを早期に整備するようスタッフに指示したと述べている(注11)。政府機関閉鎖が解消され、SECの活動が正常化すれば、そうした規制の整備を通じて、米国の新たな暗号資産規制像が、より明確になっていくものと予想される。
(注1)以下の記述で取り上げる上場商品の中には、広義のETP(Exchange Traded Product、上場金融商品)ではあってもFund と言えるような法形式で組成されず、厳密にはETF(Exchange Traded Fund)と呼ぶべきでないものも含まれる。しかし本稿では、日本の市場関係者、投資者になじみ深いものと思われるETFという言葉を用いることとする。
(注2)当コラム「米国SECがイーサ(ETH)現物ETFを承認」(2024年5月28日)参照。
(注3)ステーキングとは、暗号資産の保有量や保有年数などに基づく係数を用いて承認者を決定するPoSコンセンサスが採用されている暗号資産について、新たなブロック生成の承認者となることで、その報奨としての暗号資産を獲得する行為である。
(注4)大崎貞和「アメリカSECのエンフォースメントによる暗号資産規制」証券経済研究129号33頁(2025)参照。
(注5)当コラム「米国SECがイーサ(ETH)現物ETFを承認」(2024年5月28日)参照。
(注6)当コラム「トランプ大統領返り咲き後の暗号資産規制」(2024年11月8日)参照。
(注7)SEC, "Staff Statement on Meme Coins", February 27, 2025
(注8)SEC, "Statement on Certain Protocol Staking Activities", May 29, 2025
(注9)SEC, "SEC Permits In-Kind Creations and Redemptions for Crypto ETPs", July 29, 2025
(注10)SEC, "Self-Regulatory Organizations; The Nasdaq Stock Market LLC; Cboe BZX Exchange,Inc.; NYSE Arca, Inc.; Order Granting Accelerated Approval of Proposed Rule Changes, as Modified by Amendments Thereto, to Adopt Generic Listing Standards for CommodityBased Trust Shares", September 17, 2025
(注11)SEC, "American Leadership in the Digital Finance Revolution", July 31, 2025
多くの機関投資家は、暗号資産交換業者を通じた暗号資産現物への投資には慎重な姿勢を示しているが、証券取引所に上場されるETFであれば投資対象になり得るとの見方があり、現物ETFが証券取引所に上場されると見込まれる暗号資産は、機関投資家による投資拡大を期待して価格が上昇したり暗号資産交換業者を通じた取引が拡大したりする傾向が見られる。
既に触れたように、SECは、暗号資産に対して証券法の規制が及ぶ可能性を全面的に否定しているわけではない。暗号資産規制の転換を積極的に進めるアトキンス委員長も、7月末に行った「デジタル金融革命における米国のリーダーシップ」と題する講演で、証券規制の対象となる暗号資産とそれ以外の線引きを明確にするとともに、証券規制の対象となる暗号資産に関する目的合理的な情報開示規制やその例外規定などを早期に整備するようスタッフに指示したと述べている(注11)。政府機関閉鎖が解消され、SECの活動が正常化すれば、そうした規制の整備を通じて、米国の新たな暗号資産規制像が、より明確になっていくものと予想される。
(注1)以下の記述で取り上げる上場商品の中には、広義のETP(Exchange Traded Product、上場金融商品)ではあってもFund と言えるような法形式で組成されず、厳密にはETF(Exchange Traded Fund)と呼ぶべきでないものも含まれる。しかし本稿では、日本の市場関係者、投資者になじみ深いものと思われるETFという言葉を用いることとする。
(注2)当コラム「米国SECがイーサ(ETH)現物ETFを承認」(2024年5月28日)参照。
(注3)ステーキングとは、暗号資産の保有量や保有年数などに基づく係数を用いて承認者を決定するPoSコンセンサスが採用されている暗号資産について、新たなブロック生成の承認者となることで、その報奨としての暗号資産を獲得する行為である。
(注4)大崎貞和「アメリカSECのエンフォースメントによる暗号資産規制」証券経済研究129号33頁(2025)参照。
(注5)当コラム「米国SECがイーサ(ETH)現物ETFを承認」(2024年5月28日)参照。
(注6)当コラム「トランプ大統領返り咲き後の暗号資産規制」(2024年11月8日)参照。
(注7)SEC, "Staff Statement on Meme Coins", February 27, 2025
(注8)SEC, "Statement on Certain Protocol Staking Activities", May 29, 2025
(注9)SEC, "SEC Permits In-Kind Creations and Redemptions for Crypto ETPs", July 29, 2025
(注10)SEC, "Self-Regulatory Organizations; The Nasdaq Stock Market LLC; Cboe BZX Exchange,Inc.; NYSE Arca, Inc.; Order Granting Accelerated Approval of Proposed Rule Changes, as Modified by Amendments Thereto, to Adopt Generic Listing Standards for CommodityBased Trust Shares", September 17, 2025
(注11)SEC, "American Leadership in the Digital Finance Revolution", July 31, 2025
プロフィール
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大崎 貞和のポートレート 大崎 貞和
未来創発センター
1986年に野村総合研究所入社後、1987年以降、経済調査部資本市場研究室、資本市場研究部等で内外資本市場動向の調査研究に従事。 政府審議会委員等の公職を務めた経験を有し、現在は大学でも教育研究活動にも携わるほか、日本証券業協会の自主規制機関としての活動にも参画している。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。