&N 未来創発ラボ

野村総合研究所と
今を語り、未来をみつめるメディア

暗号資産規制に関する解釈指針の公表

2026年3月17日、米国の証券取引委員会(SEC)は、ビットコインなど暗号資産の取引への連邦証券法の適用を明確化するための解釈指針(interpretive release)(以下、本指針)を公表した(注1)。
 
2017年に暗号資産プロジェクトDAOへの証券法の適用に関する文書(注2)を公表して以降、SECは連邦最高裁判所のSEC対ハウイ事件判決(注3)によって定立された「ハウイ基準」に示された「証券(security)」の定義に関する解釈を暗号資産に当てはめ、多くの暗号資産の取引を証券の違法な募集だとして摘発してきた。
 
こうしたSECの規制手法は、事前に定められた明確なルールによらず、経済活動の予測可能性を低下させる不当な「エンフォースメントによる規制」だとして強い批判を受けた(注4)。ところが、「米国を世界の暗号資産の首都にする」とうたうトランプ大統領の就任後、SECは急速に姿勢を変化させている(注5)。本指針は、現在のSECの暗号資産規制に対する考え方を整理して示すものである。
 
本指針の大きな特色は、制定主体としてSECだけでなく商品先物取引委員会(CFTC)が加わっている点にある。先物取引を所管するCFTCは、証券に関連するデリバティブ取引の規制をめぐって、しばしばSECと対立し、暗号資産規制をめぐっても、CFTC委員が「エンフォースメントによる規制」を公然と批判するなど、緊張関係にあった。しかし、トランプ政権発足直後に設置された暗号資産規制をめぐる作業部会は、SEC、CFTCを含む関係機関間の協調を求め、去る3月11日には、イノベーションの促進と市場の公正性の維持、投資者・顧客保護の観点から規制面で協力し合うという内容の覚書(memorandum of understanding)がSECとCFTCとの間で取り交わされていた(注6)。本指針の制定は、この覚書に基づく両者による共同作業の最初の成果である。
 
以下では、本指針が示した暗号資産の分類と証券法の適用の有無を中心に、本指針の概要を紹介する。

暗号資産の分類

本指針は、従来の「エンフォースメントによる規制」でSECが援用してきたハウイ基準に依拠しつつ、どのような暗号資産、どのような取引形態が連邦証券法の規制に服するのかを改めて検討している。ハウイ基準とは、①資金の拠出、②拠出された資金による共同事業、③もっぱら(あるいは主として)他者の経営努力による収益獲得の期待、という3つの要件が満たされる場合には、連邦証券法の規制対象である投資契約(investment contract)に該当するという法理である(注7)。
 
本指針は、暗号資産を次の5つのカテゴリーに分類する。①デジタル・コモディティ(商品)、②デジタル収集品(collectible)、③デジタル・ツール、④ステーブル・コイン、⑤デジタル証券である。その上で、①、②、③は、それ自体としては証券ではないが、証券法の規制を受ける証券である投資契約に基づいて売買されることがあり得る、④は、証券である場合とそうでない場合があり得る、⑤は、それ自体が証券であるとする。また、本指針は、暗号資産は多様であり、技術進歩も急速であるため、これら5つのカテゴリーのいずれにも属さない暗号資産や2以上のカテゴリーの属性を持つハイブリッド型の暗号資産も存在し得るとする。

デジタル・コモディティとは

暗号資産の5つのカテゴリーのうち、第一のデジタル・コモディティは、他の者の経営努力によって生じる収益獲得への期待ではなく、実際に機能している暗号資産システム上のプログラムされた動きや需要と供給の変動によって価値が決まる暗号資産だとされる。本指針は、具体的な例として、ビットコイン(BTC)のほか、アプト(APT)、アバランシュ(AVAX)、ビットコイン・キャッシュ(BCH)、カルダノ(ADA)、チェインリンク(LINK)、ドージコイン(DOGE)、イーサ(ETH)、ヘデラ(HBAR)、ライトコイン(LTC)、ポルカドット(DOT)、シバイヌ(SHIB)、ソラナ(SOL)、ステラ(XLM)、テゾス(XTZ)、XRP(XRP)などを挙げている。
 
ここで挙げられた暗号資産の多くは、ブロックチェーン・プラットフォーム上でのアプリケーション開発に用いられるネイティブ・トークンとされているものだが、DOGEやSHIBのようにインターネット上のジョークだとされるミーム・コインも含まれている(注8)。
 
本指針は、デジタル・コモディティの中には、保有者にブロックチェーン・プラットフォーム上でのコンセンサス形成への参加を可能にするものやシステムのガバナンスへの関与を可能にするものもあるとする。デジタル・コモディティが証券ではないのは、投資契約などの証券をデジタル化したものではなく、証券としての経済的性質を有しないからだとされる。また、デジタル・コモディティが機能する暗号資産システムには、利用者を監視したり、報酬を利用者に分配したりする中央管理者は存在しないとする。

デジタル収集品とは

本指針が掲げる暗号資産の第二のカテゴリーであるデジタル収集品とは、芸術作品、音楽、映像、トレーディング・カード、ゲーム内のアイテム、インターネット・ミームやキャラクター、トレンドなどのデジタル・データ等の収集を可能にする暗号資産である。これらは事業体に係る法的権利や持ち分、デジタル収集品の作者等に対する債権債務などを保有者に付与するものではないとされる。具体的な例としては、CryptoPunks、クローミー・スクイッグル、ファン・トークン、WIF、VCOINなどが挙げられている。
 
本指針は、デジタル収集品が証券ではないのは、投資契約などの証券をデジタル化したものではなく、デジタル収集品の購入は、事業体への投資やデジタル収集品の作者等に対する債権債務の引き受けには当たらないからだとする。
 
もっとも、デジタル収集品は、販売のやり方次第では、ハウイ基準に照らして証券に該当すると考えられることもあり得るとされる。芸術作品など有形の収集品の場合でも、当該収集品に対する共有持分権を販売すれば、原資産である芸術作品自体は証券ではないが、共有持分権の販売は投資契約という証券に該当することがあり得るのと同様である。
 
本指針は、インターネット上のジョークであり、事業のための資金調達手段ではないとされる、いわゆるミーム・コインは、一般にはデジタル収集品のカテゴリーに属するとしている。しかし、しばしばミーム・コインの代表格とされるDOGEやSHIBは、前述のように、デジタル収集品ではなくデジタル・コモディティだとされる。こうした違いが設けられているのは、本指針が、DOGEやSHIBは中央管理者を置かない十分に分散化されたネットワーク上の存在となっており、他の様々なミーム・コインとは異なる次元にあると考えているためであろう。

デジタル・ツールとは

本指針が掲げる暗号資産の第三のカテゴリーであるデジタル・ツールとは、会員権、チケット、資格、称号、身分証等として機能させるために発行される暗号資産だとされる。デジタル・ツールは、中央管理者によって発行される場合もあるが、暗号資産システムに組み込まれたプログラムに従って自律的に付与される場合もある。デジタル・ツールの価値は、実際上の機能によって決まり、将来の収益期待が約束されているといったものではない。本指針は、具体的な例として、イーサリアム・ネーム・サービスのドメイン・ネームやコインデスクのマイクロコスモスNFTコンセンサス・チケットなどを挙げている。
 
デジタル・ツールが証券ではないのは、投資契約などの証券をデジタル化したものではなく、証券としての経済的性質を有しないからだとされる。博物館の会員資格を取得する者が、博物館運営者の経営努力による収益獲得を期待していないのと同様に、デジタル・ツールを購入する者は、その機能を利用したいだけで、事業に対する持分権や債権者としての権利を取得したいわけではないのだとされる。

ステーブル・コインとは

本指針が掲げる暗号資産の第四のカテゴリーであるステーブル・コインとは、米国ドルなどの参照資産と同じ価値を維持するよう設計された暗号資産である。
 
2025年7月に議会が制定したジーニアス法(GENIUS Act)では、支払手段として用いられるステーブル・コインである「支払手段ステーブル・コイン(payment stable coin)」に係る規制が確立され、当局の認可を受けたステーブル・コイン発行者が発行する支払手段ステーブル・コインは、証券の定義から除外されることとなった。ただし、ジーニアス法は、現時点ではまだ施行されていない。
 
ステーブル・コインについてSECスタッフは、2025年4月、一定の準備資産を有する発行者が発行したステーブル・コインで、保有者に発行者の事業経営への参加権を付与しないなどの一定の要件を満たすものは、証券法上の証券にあたらないという見解を公表した(注9)。本指針は、ジーニアス法が施行されていない現時点では、SECスタッフの当該見解が、ステーブル・コインに対して妥当するとしている(注10)。

デジタル証券とは

暗号資産の第五のカテゴリーが、証券法の規制の適用を受けるデジタル証券もしくはトークン化証券である。デジタル証券とは、証券の経済的性質を有する暗号資産である。本指針は、デジタル証券には、発行者自身によってもしくは発行者のためにトークン化されたものと発行者と直接関係を有しない第三者によってトークン化されたものがあるとし、いずれも証券法の規制の適用を受けるものとする。

デジタル証券以外の暗号資産への証券法の適用

本指針は、以上のように暗号資産を分類した上で、当然に証券法の規制の適用を受けるデジタル証券ではない暗号資産の販売が、投資契約という証券に該当する可能性について説明している。
 
すなわち、デジタル証券以外のカテゴリーに属する、本来は証券ではない暗号資産であっても、発行者やその関係者が暗号資産を販売する方法や形態次第では、暗号資産の売買契約自体が投資契約という証券に該当する可能性も否定できないのである。本指針は、この点について、購入者に対して、発行者の経営努力によって収益が得られるという合理的な期待を抱かせるような販売が行われた場合は、投資契約が成立し、証券の売買に当たるという考え方を示している。逆に、例えば発行者と関係を有しない第三者が、発行者の経営努力によって収益が得られるといった説明や約束をしたとしても、購入者に当該収益が得られるという合理的な期待を抱かせることにはならないため、投資契約には当たらないとする。
 
また、本指針は、いったん証券ではない暗号資産の販売に係る投資契約が成立したとしても、その後も半永久的に購入者との間で投資契約が継続するというわけではないとする。当初の投資契約と証券ではない暗号資産の分離が生じる可能性があるというのである。
 
本指針は、そうした分離が生じる状況として次のようなものを挙げる。一つは、発行者が当初約束した収益獲得に不可欠な経営努力を完了した場合である。例えば、発行者が約束した暗号資産に関係する一定のソフトウェア開発が完了したといった場合が考えられる。
 
そして、投資契約が成立するかどうかの判断は、暗号資産の引き渡し時点で、発行者の経営努力による収益獲得の合理的期待があるかどうかによるとする。例えば、かつて盛んに行われたICO(initial coin offering)では、直ちにトークンの引渡しが行われるが、購入者による投資時点ではトークンは組成されておらず、その引渡しも行われないSAFT(simple agreement for futures tokens)という販売手法もとられていた。本指針は、後者の場合、トークンの受渡し時点でも発行者の経営努力による収益獲得の合理的期待があれば、投資契約が成立するとしている。
 
当初の投資契約と暗号資産の分離が生じるもう一つの場合は、発行者が約束した収益獲得に不可欠な経営努力の遂行が、もはや期待できないという場合である。暗号資産の販売から相当長期間が経過し、発行者が当初約束していた経営努力を払わないことが明らかになっている場合などが考えられるとする。
 
例えば、発行者が、それ自体は証券としての経済的性質を有しない暗号資産を、自らの経営努力で収益獲得が合理的に期待できるかのような説明を行って販売したといった場合であれば、当初の販売は投資契約の締結であり、1933年証券法の求める証券公募登録か私募としての適用除外への依拠が求められることになる。しかし、その後、発行者自身が、当該暗号資産に係るシステム開発等を停止するといった事実を公表すれば、もはや当該暗号資産の購入者は、発行者の経営努力による収益獲得の期待を合理的に抱くことはできなくなるので、当該暗号資産は、証券ではなくなるというのである。

マイニング、ステーキング、ラップド・トークン、エア・ドロップ

本指針は、暗号資産の組成・新規獲得をめぐるマイニングやステーキングといった行為が、証券法上どのように取り扱われるかについても言及している。2024年までの「エンフォースメントによる規制」の下では、有力暗号資産交換業者によるステーキング・サービスの提供行為自体が、投資契約であり、証券法の届出規制に服すると解釈されたこともあったからである(注11)。これらの点について、本指針は、慎重な言い回しではあるものの、基本的には投資契約には該当しないという見解を示している。
 
このほか本指針は、BTCをイーサリアム・ネットワーク上で利用するなど、他のブロックチェーンで暗号資産を利用するために暗号資産の管理者(カストディアン)が、原資産となる暗号資産と一対一の関係で発行するラップド・トークンの発行が、投資契約に該当する可能性や無償で暗号資産を交付するエア・ドロップの証券法上の位置づけについても検討を加えている。これらの議論の詳細は割愛するが、いずれについても、かつての「エンフォースメントによる規制」の時代とは一変して、極力証券法の規制を及ぼさない方向での解釈が試みられている。

おわりに

今回、SECとCFTCが共同で、様々な暗号資産のカテゴリー分けを行い、証券法の適用可能性に関するある程度明確なガイドラインを示したことの意義は大きい。おりから米国議会では、暗号資産規制をめぐるSECとCFTCの管轄範囲の明確化を図ることを主要な狙いとするクラリティ法案が審議中だが、本指針が法案成立に先駆けて策定されたことで、法改正の意義は小さくなったといった見方もなされている。
 
本指針は、もっぱら、暗号資産の購入者が、特定の第三者(発行者)の経営努力による収益獲得の期待を合理的に抱き得るかどうかを証券法適用の有無をめぐる線引きの基準とし、しかも当初はそうした期待が存在する暗号資産であっても、取引成立時点でそのような期待が存しない場合には証券の売買には当たらないという柔軟な考え方を明示している。これは、ETHについて、当初の組成が証券発行だったとしても、十分に分散化したネットワーク上の資産となった現在では証券ではないと述べ、SECの柔軟な規制姿勢を示すものとして暗号資産業界から歓迎された、2018年のヒンマン企業金融局長(当時)講演の考え方への回帰とも言えるものである(注12)。
 
こうした柔軟な考え方は、証券法規制が適用されることの効果という点からも合理的であるように思われる。ある暗号資産が、証券法の適用対象となることで、当該暗号資産の発行者は、自身の財務状況や遂行する暗号資産プロジェクトの内容など投資判断に重要な影響を及ぼす情報を正しく開示する義務を負うことになる。しかし、十分に分散化したネットワーク上の資産となり、特定の発行者の経営努力が当該暗号資産の保有によって獲得が期待される収益に重要な影響を及ぼさなくなった状況で、当初の発行者に様々な情報を開示させたとしても、投資者保護の観点からは意味がないであろう。
 
証券の定義をめぐる連邦最高裁判所の判例法理であるハウイ基準を維持することで、暗号資産プロジェクトを標榜する詐欺的な資金集めを違法な証券募集として取り締まる余地を認めつつ、現実に分散的なネットワーク上で一定の機能を果たしている暗号資産の取引やNFT販売、暗号資産交換業者が提供するステーキング・サービスといった行為への過度な介入を慎もうとする本指針の考え方は、自由なイノベーションの促進と投資者・顧客保護という二つの政策目的のバランスに配慮したものとして、高く評価できるのではないだろうか。
 

(注1)SEC, "Application of the Federal Securities Laws to Certain Types of Crypto Assets and Certain Transactions Involving Crypto Assets", Release Nos. 33-11412; 34-105020; File No. S7-2026-09

(注2)SEC, "Report of Investigation Pursuant to Section 21(a) of the Securities Exchange Act of 1934: The DAO", Release No. 81207, July 25, 2017

(注3)SEC v. W.J. Howey Company, 328 U.S. 293 (1946).

(注4)大崎貞和「アメリカSECのエンフォースメントによる暗号資産規制」証券経済研究129号33頁(2025)参照。

(注5)大崎貞和「日米で進む暗号資産規制見直し」(金融ITフォーカス2025年12月号)2頁参照。

(注6)SEC, "HARMONIZATION IN AREAS OF COMMON REGULATORY INTEREST", March 11, 2026

(注7)ハウイ基準について詳しくは、黒沼悦郎『アメリカ証券取引法』【第2版】弘文堂(2004)21~24頁参照。

(注8)DOGEとSHIBは、ともにミーム・コインだとされるが、SHIBがイーサリアム・ネットワーク上で発行されたERC-20トークンであるのに対し、DOGEは独自のブロックチェーン・プラットフォーム上のネイティブ・トークンだと見ることも可能である。なお、その他のデジタル・コモディティとされる暗号資産のうち、LINKはイーサリアム・ネットワーク上で機能するERC-677トークンだとする見解もある。

(注9)SEC, "Statement on Stablecoins", April 4, 2025

(注10)換言すれば、SECスタッフの見解で示された要件を満たさないステーブル・コインの発行は投資契約に該当し、証券募集に当たると解される余地がある。

(注11)大崎貞和「暗号資産の「ステーキング」への米国証券法の適用」内外資本市場動向メモNo.23-01(2023)参照

(注12)当コラム「 現在のイーサリアムは「有価証券」ではない~米国SECの仮想通貨規制~ 」(2018年6月28日)参照

プロフィール

  • 大崎 貞和のポートレート

    大崎 貞和

    未来創発センター

    

    1986年に野村総合研究所入社後、1987年以降、経済調査部資本市場研究室、資本市場研究部等で内外資本市場動向の調査研究に従事。 政府審議会委員等の公職を務めた経験を有し、現在は大学でも教育研究活動にも携わるほか、日本証券業協会の自主規制機関としての活動にも参画している。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。