
アーバンイノベーションコンサルティング部 井上 海、小菅 直樹
高齢化の進展やインバウンド観光客の増加を背景に、地域の移動を巡る問題が改めて注目されています。移動需要が高まる一方で、定時・定路線の公共交通は人手不足や採算性の問題から維持が難しくなり、需給のギャップは各地で広がりつつあります。こうした中、ライドシェアや自動運転タクシーなどのオンデマンド交通が新たな選択肢として期待されていますが、日本における位置づけはなお模索段階にあります。
本レポートでは、日本版ライドシェアの現状と課題を整理したうえで、世界の潮流を踏まえながら、自動運転時代に向けた道筋を考えます。
オンデマンド交通を巡る構造変化と日本版ライドシェアの現在地

近年、オンデマンド交通を取り巻く環境は大きく変化しています。高齢化の進展に伴い免許返納者が増加していることに加え、インバウンド観光客も過去最高水準に達し、都市部のみならず地方部へと行動範囲を広げつつあります。一方で既存交通に目を向けると、人口減少や人手不足を背景に、定時・定路線バスの減便や廃線が各地で相次いでいます。
これらの結果、「移動したい人がいる一方で、移動の足が不足する」という需給のギャップが生じており、住民の日常的な移動や来訪者の観光移動において、柔軟な移動手段へのニーズが着実に高まっています。
この問題は、都市部よりも地方部で深刻化しやすい傾向があります。都市部では需要と供給の双方が大きく、一定の調整余地がありますが、地方部ではもともとの需給規模が小さいため、少しの需要の増加でも移動手段の不足が表面化しやすくなります。今後、インバウンド観光客がさらに増加し、訪問先が多様化していけば、地方部における移動の需給ギャップは一層深刻になる可能性があります。
こうした中、2025年の大阪・関西万博に合わせて実施された日本版ライドシェアの24時間運行では、ライドシェアは都心部だけでなく幅広い地域で利用され、タクシー供給不足の緩和に寄与していました。
その一方で課題も明らかになっています。国土交通省が発表している日本版ライドシェアの実施状況を見ると、地方部では運行回数が増えないという状況が続いています。大阪での結果も踏まえると、ライドシェアが機能する場面が確かに存在する一方で、現行の仕組みのままでは、地方の移動課題を全面的に解決するのは難しいとも言えます。
世界におけるオンデマンド交通の段階的な進化
海外では、オンデマンド交通を巡る事業環境がこの10年ほどで大きく変化しました。かつてはタクシーが担っていた移動の多くを、ライドシェアが代替するようになっています。さらに、移動の選択肢を広げることで新たな需要も生み出しました。配車アプリによる利便性の向上や、個人が柔軟な働き方で参加できるドライバー制度によって供給量が増え、利用者が「移動したいときに移動できる」環境が整った結果、移動量そのものが増加しています。このようにオンデマンド交通が日常的に使われるインフラとして定着したことで、従来は表に出にくかった移動需要が顕在化したのです。
この流れの先に位置づけられるのが、自動運転タクシーです。米国や中国の一部都市では、すでに一般利用者向けの商用サービスが始まっており、実運行データを通じて安全性や実用性が検証されつつあります。自動運転は、技術的な実証段階を越え、今では限定的ながらも社会実装のフェーズに入っています。
将来的には、こうした自動運転技術が商用車にとどまらず、自家用車にも広がる可能性があります。所有者が使っていない時間帯の車両が、自動運転のオンデマンド交通として稼働するようになれば、移動手段の供給量はさらに増え、運賃の低下や利便性の向上が同時に進むことも想定されます。
この流れの先に位置づけられるのが、自動運転タクシーです。米国や中国の一部都市では、すでに一般利用者向けの商用サービスが始まっており、実運行データを通じて安全性や実用性が検証されつつあります。自動運転は、技術的な実証段階を越え、今では限定的ながらも社会実装のフェーズに入っています。
将来的には、こうした自動運転技術が商用車にとどまらず、自家用車にも広がる可能性があります。所有者が使っていない時間帯の車両が、自動運転のオンデマンド交通として稼働するようになれば、移動手段の供給量はさらに増え、運賃の低下や利便性の向上が同時に進むことも想定されます。
自動運転時代を見据えた日本におけるライドシェアの位置づけ
こうした世界の動向を踏まえると、日本におけるライドシェアの位置づけが改めて問われます。都市部では一定の広がりが見られる一方、地方部では普及が伸び悩み、移動をめぐる諸課題が十分に解消されていません。成り行きに任せたままでは、ライドシェアも自動運転も、地方部には十分に定着しない可能性があります。
地方部では、すでに定時・定路線バスの維持が難しくなり、自治体がコミュニティバスやオンデマンドバスを運行することで移動手段を確保しているケースが増えています。ただし、これらの施策においても車両や人手の確保にコストがかかり、財政面・運営面の持続性や利便性の担保で問題が生じやすいのが実情です。先述したように日本版ライドシェアも導入は進みつつありますが、タクシーと同水準の運賃設定では日常的な需要は小さく、結果的にドライバーの参加も減少し、利便性も高まらないという悪循環が生じていると考えられます。
一方で、地方部の自家用車中心のまちづくりでは、ライドシェアのようにドアtoドアのオンデマンド交通がニーズに合った移動手段となります。成り行きでは難しくとも、行政が補助を行いながら地域のライドシェア市場を活性化できれば、ライドシェアは地域の移動課題解決の手段となりえます。例えば、既存のオンデマンドバスやコミュニティバスに充てられている交通関連予算の使い方を見直し、ライドシェアの運賃補助等に振り向けることで、利用者の負担を抑えて需要を創出することができます。利用者が増え、運行実績が積み上がれば、ドライバーの参加も進み、利便性が高まるという好循環が生まれます。
将来的には自動運転のオンデマンド交通の普及が期待されます。現時点ではコストが高く、地方部で直ちに普及するとは考えにくいものの、全国各地で広く導入して、自動運転システムや予約・配車プラットフォーム、遠隔監視等のコストを各地域で按分できれば、導入のハードルは大きく下がると考えられます。ライドシェアが地域に根付き、オンデマンド交通の利用が社会に定着していけば、それは将来の自動運転導入に向けた土台にもなります。ライドシェアは、自動運転時代を待つための暫定策ではなく、その時代へと接続するための現実的なステップと位置づけることができます。
日本の移動課題は、単一の制度や技術で一気に解決できるものではありません。だからこそ、ライドシェアを含むオンデマンド交通をどのように組み合わせ、段階的に発展させていくのかという視点が重要になります。自動運転社会を見据えたとき、その第一歩として、ライドシェアの役割を改めて捉え直すことが求められています。
地方部では、すでに定時・定路線バスの維持が難しくなり、自治体がコミュニティバスやオンデマンドバスを運行することで移動手段を確保しているケースが増えています。ただし、これらの施策においても車両や人手の確保にコストがかかり、財政面・運営面の持続性や利便性の担保で問題が生じやすいのが実情です。先述したように日本版ライドシェアも導入は進みつつありますが、タクシーと同水準の運賃設定では日常的な需要は小さく、結果的にドライバーの参加も減少し、利便性も高まらないという悪循環が生じていると考えられます。
一方で、地方部の自家用車中心のまちづくりでは、ライドシェアのようにドアtoドアのオンデマンド交通がニーズに合った移動手段となります。成り行きでは難しくとも、行政が補助を行いながら地域のライドシェア市場を活性化できれば、ライドシェアは地域の移動課題解決の手段となりえます。例えば、既存のオンデマンドバスやコミュニティバスに充てられている交通関連予算の使い方を見直し、ライドシェアの運賃補助等に振り向けることで、利用者の負担を抑えて需要を創出することができます。利用者が増え、運行実績が積み上がれば、ドライバーの参加も進み、利便性が高まるという好循環が生まれます。
将来的には自動運転のオンデマンド交通の普及が期待されます。現時点ではコストが高く、地方部で直ちに普及するとは考えにくいものの、全国各地で広く導入して、自動運転システムや予約・配車プラットフォーム、遠隔監視等のコストを各地域で按分できれば、導入のハードルは大きく下がると考えられます。ライドシェアが地域に根付き、オンデマンド交通の利用が社会に定着していけば、それは将来の自動運転導入に向けた土台にもなります。ライドシェアは、自動運転時代を待つための暫定策ではなく、その時代へと接続するための現実的なステップと位置づけることができます。
日本の移動課題は、単一の制度や技術で一気に解決できるものではありません。だからこそ、ライドシェアを含むオンデマンド交通をどのように組み合わせ、段階的に発展させていくのかという視点が重要になります。自動運転社会を見据えたとき、その第一歩として、ライドシェアの役割を改めて捉え直すことが求められています。
プロフィール
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井上 海のポートレート 井上 海
アーバンイノベーションコンサルティング部
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小菅 直樹のポートレート 小菅 直樹
アーバンイノベーションコンサルティング部
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