運輸・物流・デジタルモビリティ
長期シナリオプランニングと戦略実行支援
運輸・物流業界では、激変する事業環境を踏まえ、長期シナリオプランニングとそれに応じた戦略立案が求められています。
変革期にある運輸・物流事業環境をいち早く見通すことが必要
日本の運輸・物流事業環境は、都市物流を中心に大きな変革期の渦中にあります。小売・サービス業のECチャネル強化により、個人の消費物流需要が高まる一方で、景気低迷や少子高齢化の影響で運輸・物流業界への就業人口は減少の一途を辿っています。これにより、需要を支える物流インフラの供給は厳しい制約に見まわれ、物流業界では宅配キャパシティの限界が顕在化してきている状況です。
運輸業界においてもデジタル化技術革新を背景に、
“MaaS*化”が進展し、都市と地方それぞれでデジタル活用による生き残り戦略が求められています。
将来変化を見通し、事業環境に応じた顧客の長期シナリオおよび戦略を描くことが必要になっています。
* Mobility-as-a-Service
不透明な将来を前に「変化の推進力」をキーファクターとしたシナリオ策定が有効
時代の連続性が途絶しがちな現在では、過去データの積み上げから将来を見通すことが困難となっており、運輸・物流関連の多くの事業者が、適切な戦略立案を課題と感じています。そのため、社会環境の将来変化に目を向け、そこから起こりえる将来の姿をシナリオプランニングにより複数策定し、それぞれの将来像に対してとるべき戦略立案を行うことが重要となっています。
複数シナリオを構築することで、起こりえる将来像を、一度俯瞰した上で、適切に戦略に結びつけることが可能となります。また、ひとつのシナリオに依拠した結果として懸念される見通しの外れ、それによる対応の遅れというリスクを軽減させることが可能となります。
■ 運輸・物流業界を取り巻く環境変化と課題
NRIは、複数の将来像を描き、顧客とのディスカッションを通して、各将来像に応じた戦略導出をご支援いたします。
顧客の深い理解に基づいた、適切な要素 抽出と戦略導出を支援
NRIは、シンクタンクとして社会環境の動向を詳細に洞察し、将来をナビゲートすることに強みがあり、運輸・物流業界の豊富な経験を持つ専門コンサルタントも多く有しています。その知見を集積し、①変化の推進力抽出、②評価軸の設定、③クリティカル要素選定、③シナリオ構築の4ステップでシナリオプランングを実行いたします。
複数シナリオを俯瞰して行う戦略立案・検討においても、社会調査に対する知見を持つコンサルタントとチームを組み、市場規模・需給の定量化や顧客の競争優位性を導出します。それらを踏まえ、議論を顧客と重ね、顧客ごとに最適な戦略実現につなげてきた多くの実績を有しています。
シナリオプランニングによって描く将来像は予想ではないという認識を顧客と共有しつつ、複数のシナリオを見据え、戦略オプション検討までご支援いたします。
ケース : 2030年の日米中の都市内物流シナリオと戦略を策定する
NRIは、部品メーカーA社とともに、2030年の日米中の都市内物流に関するシナリオプランニングを行い、それに基づいたシナリオごとの戦略上の示唆を導出するプロジェクトを支援いたしました。
A社は、将来の都市物流を取り巻く事業環境変化に合わせたポジショニングを模索していましたが、デジタル技術革新をはじめとして急速に変化する環境の中で、過去トレン
ドに依存した長期的な予測と、戦略立案・検討の手法に限界を感じていました。
NRIは、将来の変化の推進力たりうる要素からシナリオプランニングを行い、将来戦略について徹底的に議論いたしました。その結果、A社の事業スコープの方向性のズレが明らかとなり、業界内でのポジショニング、ターゲット顧客の修正といった戦略立案に結びつきました。
* Internet of Things( モノのインターネット)
* Artificial Intelligence( 人工知能)
■ シナリオプランニングによる戦略策定のフレームワーク
運輸・物流企業の事業構造改革
市場変化が激しく、サービスのコモディティ化が進む一方で、人口減でサービス提供体制の再構築が必要です。
変化と競争に対応したサービスネットワークとソリューション提供体制の確立が急務
運輸・物流企業は、自社の競争優位に鑑み、ヒトやモノを運ぶネットワークの拡充と、輸送密度の高度化に挑戦してきました。昨今では、国・地域の産業や都市や人口の構造変化がますます加速しています。また、グローバルな競争の激化により、単純なヒトやモノの輸送はコモディティ化の一途をたどっています。
一方、運輸・物流企業のサービスネットワークは、人口減少および所得が停滞する現在では、人流・物流のニーズに対して、サービス供給量・水準が過多となってきています。
既存のサービスネットワーク、サービス提供体制の再構築が急務の経営課題となっています。
事業環境に則した機能・組織の再編と、戦略的なリソースの再配分が不可欠
運輸・物流企業の現状をみると、事業部ごとに顧客にアクセスしているためトータルな提案営業ができていない、事業部ごとに事業資産、リソースを保有しているため地域単位では効率が低い、さらに事業部の独立性が強く、全社最適な事業ポートフォリオ・リソースマネジメントが難しいといった課題を抱えています。
運輸・物流企業が差別化を図り、持続的な成長を実現するには、大量輸送時代に適合したマス・サービスではなく、成長が見込める特定の顧客(セグメント)の課題を解く顧客起点のソリューション提供への転換が必要になります。
サービスの再定義、これに応じた組織再編および経営資源の再配置の検討に着手する時期にきています。
■ 成熟/縮退市場における運輸・物流企業の課題
NRIは、お客様の競争優位と改革への思いを大切にし、プロダクトアウトからマーケットインへのチェンジマネジメントに一貫して深くコミットいたします。
チェンジマネジメントの王道を、お客様とひとつのチームがご支援
サービスネットワークの再構築とソリューション提供体制を目的合理的に構築するには、以下の5つのステップで事業構造改革を行います。①改革目的設定、②問題の明確化、③危機の共有と成長/縮退領域の設定、④機能・組織再編、⑤リソース再編と業務定着化、という王道ともいえる経営改革を一気呵成に進めます。
NRIは、①グローバルな運輸・物流の競争環境や将来の方向性についての深い業界理解と洞察、②業界理解に基づく問題仮説の適切な設定と効果的な検証能力、③トップマネジメントのコミットメントを引き出すリーダーシップ、④聖域なき切込みとミドルマネジメントを巻き込んだ必要機能・組織の再設計力、⑤業務定着化までハンズオンで伴走するコミットメントをもとに、経験豊富なコンサルタントが支援いたします。
「経営改革」を絵に描いた餅に終わらせず、お客様とひとつのチームとなって、変革を組織文化にまで昇華させるチェンジマネジメントに多くの実績を有しています。
ケース: サービス起点の事業部体制を改革し、顧客起点のソリューション体制に変革
NRIは、物流企業A社の事業構造改革を支援しました。当社は競争環境の変化に合わせ、新たな顧客価値の提供体制を模索していました。一方、サービス別の事業部体制の弊害により、リソース・資産の重複投下が起こり、グローバルな成長を目指す顧客の課題を把握した上でソリューションを提供する体制が不十分でした。
NRIは、競争環境と自社の問題の徹底した可視化を行い、お客様のトップマネジメントやミドルマネジメントとともに、問題の本質、向かうべき方向に関わる議論を徹底的に行いました。仮説構築、検証を通じて、改革に必要な機能・組織を定義し、顧客起点のソリューション体制を再構築しました。
この改革により、顧客起点(マーケットイン)を大切にする企業風土・社員行動が広く浸透しました。
■ NRIの事業構造改革によるチェンジマネジメント事例
オープンイノベーション手法を活用した変革実現
運輸・物流業界は事業環境が激変する中、オープンイノベーションによる変革が求められています。
運輸・物流企業も、ダイナミックに変化する競争環境への対応が必要
運輸・物流業界は、これまでは安全の確保等を目的とした規制産業であり、かつ車両や倉庫の整備など初期投資が大きく資本集約産業でした。そのため、サービス内容や競争環境に大きな変化が起きにくい業界でした。
ところが、近年では労働力不足や消費者の意識やライフスタイルの変化、自動運転等の技術革新、デジタル化による情報活用の高度化を受け、シェアリングビジネスをはじめ、ヒトやモノの運び方が大きく変わり始めています。そして、運び方の変化に応じて、異業種の参入など、競争環境も激変しています。こうした変化に素早く対応することが、既存の運輸・物流企業にとっては大きな経営課題となっています。
変革実現には既存事業との調整、整合、重複に留意することが鍵
スピード感をもって競争環境の変化に対応するために、運輸・物流企業でもオープンイノベーションの手法を用いた変革を進めることが注目を集めています。
オープンイノベーションというとスタートアップ企業のソーシング、連携を想定しがちです。しかし、運輸・物流企業の場合、既存事業が社会インフラとして位置づけられている場合が多く、事業やサービスの変革を検討する際には既存事業との調整、整合、重複に留意することが重要になっています。
運輸・物流業界の特性に応じたオープンイノベーション手法を柔軟かつ、緻密に適用することが鍵となります。
■ 運輸、物流業界に迫られる変革
NRIは、運輸・物流企業の経営・事業への理解をもとに、社会インフラの側面を持つ企業の変革実現をご支援します。
既存事業への理解をもとに、スピード感を持った変革実現を支援
オープンイノベーションを通じて変革を実現するためには、2つのステップが必要です。第一に、自社内にはない外部の技術動向およびアイディアを察知し、技術面やサービス面から取り込みの可能性を検証しつつ、事業化に繋げることです。
NRIは、先端技術への知見、技術指向ベンチャー企業とのネットワーク、データ分析力、ビジネスモデル創出ノウハウを有するコンサルタントがプロジェクトチームを組成し、企業の変革実現を支援してきました。
第二に、運輸、物流企業の特性を踏まえ、既存事業との差別化を図ることです。
NRIは運輸・物流企業へのコンサルティングを数多く実施してきました。業界を深く理解した専門家を軸に、社内文化も踏まえた議論を行い、変革の実現を支援いたします。
ケース: 物流企業のオープンイノベーションによる事業変革実現
NRIは、物流企業A社に対し、デジタル技術を活用したオープンイノベーションの思想のもとに、新たな事業創出を支援いたしました。
A社は、既存事業の収益性は低くないものの、デジタル技術の進展による新たな競合の出現、それによる既存事業の価値低下を危惧しており、新興勢力への対抗という側面でもイノベーション主導型での事業創出を必要としていました。NRIは、技術指向のベンチャー企業DBをもとに、A社のリソースを勘案し、複数の事業アイデアを抽出、効果の定量化を行ないました。
特に、既存事業への影響度合いについては、顧客との徹底的な議論を行ない、社内合意を図りました。その結果、数十のアイデア・リストから具体的な複数のテーマに絞り込み、サービスイン(事業開始)につながっています。
■ NRIの変革実現に向けたオープンイノベーション手法のアプローチ
インフラ業界の特性を踏まえたSCM改革構想策定・実行支援
変化の激しい時代に経営・事業が対応するためには、サプライチェーン全体で連携する仕組みづくりが欠かせません。
“オペレーションは現場任せ”では生き残れない時代に
近年、インフラ関連企業を取り巻く環境は、事業のグローバル化の加速、AI・ビッグデータ、IoTを始めとしたIT関連技術の急速な発達、規制緩和といった政策変更を背景とした新規参入、新興国企業の台頭およびリソース制約の深刻化などダイナミックに変化し、かつ対応すべき課題が増大・複雑化しています。
不確実性、多様性、複雑性に対し、事業運営が対応できないと、効率性の低下、競争力上重要な意思決定の遅れが生じ、経営指標の著しい悪化に繋がりかねません。従来のように顧客やパートナーとの安定的な関係のもと、日本企業の強みであった“現場”だけに任せておけば良いという時代は終わりを迎えつつあります。
サプライチェーン変革は全社視点で改革すべきタイミング
経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の効率を最大化し、売上、利益、キャッシュフロー向上の同時達成のためには、経営者の強い改革意志のもと全社視点で改革を進める必要があります。
日本企業の多くでは、SCM*改革の対象を物流や調達といった極めて狭い領域に限定してしまい、現場改善レベルの取り組みに止まっていました。カイゼン活動の効果は既に大きく逓減しています。
関係者間のコンフリクトを乗り越えて、サプライチェーン全体を最適化し、さらにITも活用しながら、これをダイナミックに進化させていくこと、SCM改革が最優先の経営課題として認識されるべき時です。
* Supply Chain Management
■ インフラ企業を取り巻く環境変化と経営・事業に求められること
NRIは、組織・人事制度、他社との取引条件等の変更も含めて、SCMの全体構造改革に深くコミットし、伴走支援します。
経営課題としてのSCM改革を、ぶれない視座を設定することで強力に推進
SCM改革を着実な成果に結びつけるためには、全体最適の視点と現場での実効性の両側面からの整合性を持った検討・推進が求められます。例えば、特定業務に限定したFit/Gap分析から入るアプローチでは、様々な非効率な点は見出せても、優先順位がつかず、業務変更に対する現場からの抵抗も乗り越えられず、尻すぼみになっていくといったことが散見されます。
NRIは、経営・事業戦略とSCMを整合性を持って設計し、業務・IT導入、組織・評価変更などの現場への落としこみ、運用時のデータ分析やPDCAまで、一貫してご支援した実績を数多く有しています。また、業界を熟知した経営コンサルタント、SCM改革を専門とする業務・ITコンサルタントおよびシステム部門のエンジニアでチームを編成し、改革を支援いたします。さらにソリューションプロバイダーとのネットワークも豊富で、クイックなPoC*にも対応可能です。
* Proof of Concept
ケース: 事業運営のベースとなるサプライチェーンの仕組みを構築
NRIは、産業機械メーカA社に対し、SCM改革の構想策定から、業務・ルール設計まで一貫して支援しました。このプロジェクトでは、営業担当者が入力する案件情報を、生産、在庫計画等へ活用する仕組みを構築しました。ただし、全体最適のための仕組みを作りこんでも、関係する組織・社員の納得感が無ければ形骸化します。これを避けるため、SCM改革の目的・目標効果についてコンセンサスを形成し、各組織の権限・責任をバランスさせました。また、SCM業務を通じて蓄積されるデータを他の業務でも活用できるようにすることで、各組織・社員にとって入力等負荷に見合ったリターンがある環境を作りました。
こうした改革では、在庫責任の可視化など、組織にとり不都合な真実が健在化します。そのためワークショップを活用した組織横断アプローチによってコンセンサス形成を図りました。さらにマネジメントによるステアリングコミッティを導入することで“ 総論賛成・各論反対”で頓挫することなく改革を推進しました。
■ NRIによるSCM改革アプローチ
デジタルモビリティの構想・実証(PoC*)支援
デジタル化により、モビリティ(ヒトとモノの移動)に急激な変化が生まれる中、異業種の参入により競争も激化します。
“デジタルモビリティ”は不可避の潮流。早急な対策を
デジタル化によって、モビリティ(ヒトとモノの移動)が大きく変化しつつあります。
運輸分野では、自家保有からシェアリングへの移行や、モードに縛られない効率的な移動の追求が進みます。物流分野では、急増する宅配やサービスのコモディティ化に対応し、デジタル技術を活用した効率の追求とポジショニングの再考が進んでいきます。
従来のように、車両製造や単独モードのサービスにこだわったり、人力や固定資産に頼ったサービス提供を続けていると、事業環境変化に取り残されかねません。
デジタルモビリティ(デジタル技術を活用した、より便利で効率的なヒト・モノの移動)に向き合っていく必要があります。
* Proof of Concept(実証実験)
デジタルイノベーションによるモビリティ変革の陥穽
運輸・物流分野におけるデジタルモビリティ実現には、以下の観点に留意する必要があります。
- アイディアでの差別化が困難 : モビリティサービス自体にはユニークさを持ちにくいため、マッチングやシェアリングに安易に走りがちです。
- 煩雑な規制対応 : 規制産業であるため、自動運転、シェアライド等の枠組み適用には、規制当局と連携し、規制自体を有利に動かす必要があります。
- 事業化に時間を要する
- “死の谷”の突破が困難 : デジタル技術をビジネスに活用する際には、データが十分に蓄積・分析されるまでの期間がかかりすぎる、所謂“死の谷”をどう超えるかという問題がつきまといます。
■ 運輸・物流領域におけるデジタル化がもたらす変化
NRIは、顧客視点に立った価値追求による構想立案から産官学を巻き込んだPoC支援を通じて、迅速なデジタルモビリティ実現をご支援いたします。
産官学のネットワークと顧客価値への深い理解で、実証・事業化をご支援
モビリティ(ヒト・モノの移動)に注目すると、ビジネスモデルのみでの差別化は困難です。差別化の源泉はむしろ個別の顧客ニーズ、社会課題を核としてビジネスモデルを組み立て、パートナーを獲得し、迅速に規模拡大することにあります。
NRIは構想立案、ステークホルダーの巻き込み、パートナリング、検証、事業化に至るまで一貫したサポートに多くの実績を有しています。業界を熟知したコンサルタントおよびITの専門家が一体となって、デジタルモビリティ実現を支援しています。
また、ルールメイキングやパートナーの獲得においては、官公庁や研究機関との関係性、パートナー企業の戦略・競争優位性に関する深い理解が重要です。NRIは多様なステークホルダーを調整しながら、構想実現への実績を有しています。
ケース: 関係省庁と研究機関を巻き込んだ社会課題化で、PoCを実現
NRIは、自動車関連メーカーA社のアジアでの物流領域での新規事業創出を伴走しました。当社にとって物流領域は未知の領域であり、現地市場を熟知するパートナーの特定と早期の案件化を必要としていました。
ビジネスモデルの構築に当たっては、A社の比較優位である輸送における温度管理に焦点を当てました。輸送時の温度データ収集、分析技術を核に、市場の価格変動も織り込みつつサプライチェーン全体を視野に入れました。
また、対象国のイノベーション政策を推進する省庁および研究機関との対話を通じて、A社のソリューションを課題解決型イノベーションと位置づけることに成功しました。
そのためにNRIは、プロモーションと合意形成のためのワークショップを複数回開催しました。その結果、A社は現地におけるトラック輸送の最大手企業とのパートナリングに成功し、共同実証実験を開始することができました。
■ NRIによるデジタルモビリティの構想・実証支援事例
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